バッグの底のプリント
私の母は末期の胃がんでした。
(初めて私のnoteを読んで下さっている方は、マガジン「母の記録」にて、これまでに母と私達家族に起こった出来事を記していますので、よかったらそちらの方も読んでみて下さい。)
2024.1.31
今日も朝から、母に会いに病院へ向かった。
私『お母さん、おはよ〜。』
いつものように声を掛け近寄ると、母の目が今日はガチャガチャしていて意識が飛んでいるような感じだった。
私『お母さん、〇〇(私の名前)よ、分かる?』
母の手をぎゅっと握って何度か話しかけると、目が合って母がハッとした顔をした。
しばらくすると、何か喉に詰まっている感じがすると言うので、看護師さんに来てもらった。吸引する管を口に入れようとするけど、母は苦しさのあまり管を噛んでしまうので思うように喉へ入らず、次は鼻から管を入れられた。
『…痛い』
かすれたか細い母の声に、激しく歪んだ母の顔。
見ていると胸が苦しくなった。
結局何も詰まっておらず、本人の意識の問題ですね、と言われた。
口の中が乾燥して気持ち悪いからかもしないですね、と言って看護師さんが人差し指にガーゼを巻き、母の口の中をキレイにしてくれた。
少し落ち着くと、今度は何か食べたいと母が言った。冷蔵庫にプリンがあったけど、プリンは濃度が高いので氷をとりあえず舐めてみて下さいと言って、細かく砕いた氷を看護師さんが持って来てくれた。
『どうせ食べきらんけん、こげんいらんとばってん。』
と、父がボソリと言った。
何だか今日は、父がイライラしている。
母が眠っている間、暇だったのか父がバックの中を整理し始めた。父がゴソゴソしていると、入院にあたってのプリントがバッグの底から出て来た。
そのプリントには入院期間二週間…と、母の入院予定が書かれていた。
(何で今こんなプリント見つけ出したんだよ)
何だか腹が立った。
でも、また涙が溢れた。
病院を出る前にプリントを見たせいか、いつもより母の事が気になってしょうがなかったけど、帰る時間になってしまった。
私『お母さん、仕事に行って来るね。また明日来るけん、待っててね。』
母の目が、また少しガチャガチャしていた。
また明日、母に会いに行きます。2024.1.31
#母 #胃がん #末期がん #緩和ケア
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?