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絡むのは当然30センチの豆もやし


「長っ」
 初めて見た時に思わずそう言ってしまったのは仕方がない。
 だって、本当に長い。
 普通のもやしが5センチほどなのに対して、こいつは約30センチもある。
 きれいに整列し、細長いパックに入ったそれを、迷うことなく購入した。
 だって、豆もやしが好きだから。

 山形の米沢で有名なそれは、小野川温泉というところの温泉水で育つらしい。
 約1週間もかけて成長させるから長いのだ、と調べて知った。
 私が購入したのは小野川産ではなく、高畠町で作られている高畠産。
 こちら以外の商品を見たことはないから、仙台市内では高畠のものしか手に入らないのだろう。

 豆もやしが好きなので、よく購入する。
 普通にスーパーで売っているのは一般的なもやしに豆がついている。だから短いものがばらばらになって袋詰めされている。
 きれいに束になってパッキングされている妙に長い豆もやしは、どうやって食べるのだろう?
 とりあえず、定番のナムルにしてみた。
 ひげ根が多いから適当に間引くように指先で千切って、面倒くさいので長いままで作った。
 ゆでてしなっとしたそれは、混ぜている最中に絡み合い、箸で数本つまんでも塊のようになってついてくる。
 ううむ。
 しかし、一人で食べる分には問題ない。
 絡まって大きくなった長い豆もやしのナムルは、私が全部ぺろりと食べた。
 次は切った方がいい。
 人間は日々学習するのだ。

 初めて食べた高畠の豆もやしはとてもおいしかった。
 しゃきしゃきとした歯ざわりもよく、普通のもやしよりも歯ごたえがある。
 ナムルは間違いない出来になったけれど、これは鍋物にもよさそうだ、と思い、水炊きやすき焼きにも入れてみた。
 軽く煮えた豆もやしは、それはそれはおいしくて、それから鍋物の時には必ず入れる食材の一つになった。

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 それにしても長い。
 約30センチもあるから、使うときは2等分にするか、3等分にするかとても迷う。
 長いのが特徴なのだから、長さは残してあげたいところだが、長すぎると絡み合って食べ辛い。
 といって短くしてしまえば、特徴を消してしまうような気がする。
 そんなわけで、毎回無駄に悩んでしまう。
 罪なやつだ。

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 鍋物もとてもおいしく食べられるけれど、豆もやしはナムルが至福。
 ということで、見つけるたびに購入してナムルを作る。
 豆もやしは適当に切って塩を入れた水とともに鍋に入れて火にかけ、沸騰したら1~2分、さっとゆでてザルに上げて水をかけて粗熱を取る。
 ボウルに豆板醤、醤油、おろしにんにく、ゴマ(すりごまでもいりごまでもどちらでもお好きな方を)、鶏がらスープの素、ちょびっと砂糖を混ぜ、もやしの水分をぎゅっと絞って加え、絡ませる。
 よく混ざったらごま油を加えて和える。
 普通の豆もやしでも作るけれど、高畠の豆もやしで作ったこれがとてもお気に入りだ。
 そのまま食べてもいいし、おかずやおつまみに、ビビンバにしてもおいしい。

 ウチの近所には徒歩圏内に10店舗以上のスーパーが乱立しているけれど、この高畠の豆もやしが手に入るのはたった2店舗しかない。
 これ目当てにいそいそ買いに行って、売り切れだった時のショックはかなり大きい。
 売り場で手に取ると、つい「長っ」とつぶやいてしまう。
 カロリーは少ないし、ビタミンはたっぷり、食物繊維もあって、さらには豆でタンパク質まで摂取できる優れものだ。

 時々は長いまま使って、初心を忘れないようにする。
 絡み合って大きな塊になってくっついてくるそれを、しゃくしゃくと食べる。
 身体にいいとかそういうことはこの際どうでもいい。
 おいしいから食べている。

 みなさんも、見つけたら買ってみてほしい。
 目にした瞬間。きっと「長っ」って口にすると思う。
 絶対に。

 了


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