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無職日記 #13

死にたい夕方は消えてくれない。

学生時代の長期休暇の時も、
こうやって仕事と仕事の間で少し時間ができた時も、
気づいたら人間として正常な時間帯に生活できなくなっている。
田舎の夜は静かだ。
事務的な手続きや電話連絡のような人間の大人ができていないといけない社会の技能の多くに苦手意識を持つわたしにとって、
夜は子どもに戻って好きなことやりたいことだけを集中してすることができる大事な時間だった。
(人は俗にこれを後回しと呼ぶ)
大人になりたくない、とは少し違って、自分の自由を得るためならなんでもするし働くこと自体が嫌いなわけでは全くなく。
いろんな不安や懸念事項を解決する手段がない夜に、
「今これ考えてても仕方がないし」と一旦放って
ゲームをしたり読書をしたり文章書いたり読んだり。
夜は永遠に感じられるからとても好きだ。
わたしの実家の横には線路が通っていて、
昼間はひっきりなしに電車が行き来する。
わたしと長電話をしたことのある友人たちは毎回、その騒音の大きさに驚く。
普通にテレビを見ていてもテレビの音がかき消されるくらいにはうるさい。
高校時代、政治経済の授業で「外部不経済」という用語を習ったとき、
我が家は完全にこれじゃんと腑に落ちたことがある。
そういった「外部不経済」がなくなるのが終電後という事情と、
個人的「内部不経済」である家族が全員寝静まるのを待っているのもあって、
結果として活動的になるのは深夜になってしまうのだった。

その昼夜逆転引きこもりニートにとって、夕方はとてもつらい。
朝は基本的に寝ているので、普通の人間が一番活動的になるであろう時間帯は知らずに済む。
しかし夕方はそうもいかない。
お使いを頼まれてスーパーに行けば夕食の買い出しで大混雑しているし、
用事があって外出すれば帰宅ラッシュで道路は渋滞している。
世界が1日の締めくくりに動き出した時間帯に、
わたしの1日はやっと始まる。
それが大変につらい。

気分の高低差が群馬県庁くらいあるわたしは、
ひとつのことを悶々と考えすぎてひとり
「あー、消えたいなあ」と口走る癖がある。

世の中にはちゃんとした人しかいない。
やりたいこと好きなことたくさんあるのにやりきれない。
時間も気持ちも。

このまま、わたしはこうやって幻想を愛し続けるんだろうか。


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