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Sailing Before The Windが抱える2つの問題点

メタルコアバンドSailing Before The Windが抱える、2つの問題に気づいてしまいました。

2021年8月20日に新譜『Immemorial』を出したばかりのSBTWですが、あえて問題点に切り込んでみます。

(ちなみにフォーカスするのは音楽性です)


①速くない

メタルなのに、曲が速くないのである。他のバンドなら「ツタツタツタツタ・・・」と疾走するところ、「ドンタン、ドンタン、」で進む。

かといって、ゴシックやドゥーム系のような「遅い魅力」があるわけではない。しかもそういうジャンルだったら、リスナーもある程度テンポ感の予想がつくから、特段問題はない(むしろドゥームと言われて速い方が困る)。

一方SBTWは「メタルコア」を宣言しているのに、速くない。……もはや何らかの詐欺罪にならないか心配である。

もちろん「メタル=テンポ〇〇以上であれ」みたいな法律はありません。が、事実、SBTWの曲の大半は、速くもなければ、遅くもない。

(2ビートが)たまには出てくるとはいえ、他のメタルコアバンドに比べると、圧倒的に割合は少ない。し、出てきても尺が短い。ブラストやトレモロリフも使わないから、とにかく「速い場面」が少ない。


ではなぜ「速くない」のか。

SBTWのベーシストであり作曲者であるビトク氏いわく、「メロディアスハードロック(メロハー)に2ビートがなかったから」だそうです。

メロハーといえば彼がメタルコアやメロデスと並んで影響を受けたジャンルですが、たしかにBon JoviやHarem Scaremに爆走2ビートはありません。Def LeppardとかSurvivorもそうですね。

SBTWはギターメロディ重視の曲作りで、そのメロディの影響元はメロハー。それゆえ、速いテンポになりにくい。

メロデスから影響を受けたのは主に「ハモりリフ」の部分であって、速度感ではないという。

(速そうな)メタル系のジャンルなのに、曲が速くない。



➁攻撃的じゃない

メタルなのに、攻撃力が低いのである。攻撃的じゃない。

例えばSBTWには、悪魔崇拝やオカルト的要素がありません。一定数の方が「ヘヴィメタル」と聞いて浮かべそうな(▼)、ドクロ/地獄/血/火炎といった要素は登場しません。

新譜のジャケが示すように、モチーフは一貫して海/風/船系。

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「Fire」という単語くらいは使いますが、「地獄の炎に焼かれてしまえ」みたいなおっかないフレーズはありません。おっかないのは苦手です。

同じく「ヘヴィメタル」と聞いてある程度想像されるであろう、トゲトゲ/迷彩/長髪などもありません。おどろおどろしさ皆無。同じ白でも白塗りではなく、ステージ衣装が白いだけ。

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音楽性における「ヘヴィさ」も他のバンドに劣ります。特にデスコアモッシュコア系の、バカデカキック/異常グロウル/悪すぎる落としなどには、絶対勝てません。

だから、メタルコアといっても「そっち寄り」のメタルコアを期待してSBTWを聴くと、ぶっちゃけ肩透かし感があるでしょう。


そもそも作曲のやり方からして、攻撃力が出にくい。「ヘヴィなパートに着地するためにメロディを使う」のではなくて、「メロディに着地するためにヘヴィなパートを使う」ので。

また、ドロップチューニングにおける1フレット音域を、(オクターブ上もふくめ)意図的に避けているため、禍々しい質感やダークなリフが生まれにくい。


しかし、じゃあ「ポップ/ロック好き」にオススメできるかというと、疑問符。フォーマットとしてはメタルコアですし、新譜『Immemorial』にクリーンパートは1秒も無い。

多少メタル系を聴ける人じゃないとオススメしにくいが、(スラッシュメタル的)リフの殺傷力や、"ビートダウン"的な攻撃性はありません。

あと、(音質もふくめた)荒々しさを期待されると、苦しいです。リスナーとしてはそういう音源も好きですが、表現者としてはエディットされたクリアな音作りが好きなので。



③結論

(他のメタルコアバンドと比べると)
速くない。攻撃力もない。

だから、そういうのを求めて聴く人には、SBTWは刺さりにくいと思います。

※ライブで、音圧/整合感/演奏のタイトさなどを評価していただくのは嬉しいです(ある種の攻撃力として)。ただ今回はライブは別で考えています。

もちろん聴く分には、速くて攻撃力のあるバンドも好きです(そりゃそう)。

ただSBTWは、ときに速いパートや攻撃的パートも使いますが(完全に無いとは言ってない)、あくまでも、メロディに帰結するため。

正直「ダイブしてほしい」とか「モッシュをしてほしい」とか、そういうのを考えて曲作ってない。

自分は完全に引きこもり型リスナー上がりの人間で、ブレイクダウンもメタルリフも、「音源における知的さ」が理由で好きになったから。複雑な刻みパターンやパン振りの構築美、緻密に入り組んだリフワークなど。

大きな影響源であるElitistや初期Erra、Augusut Burns Red、This or the Apocalypseにのめり込んだ理由。フレージングが知的知性的で、論理的に美しい。


8月20日にリリースした新譜『Immemorial』。

速くはない。
攻撃性もない。

けど、
あえて良く言うならば、
"それ"に頼っていません。
"それ"で誤魔化していません。

メロディ、
曲の構築美、
作品構成の必然性、
フレージングの緻密さ、
ブレイクダウンの論理性。

そういったところを、評価していただきたい。

ここまで読んでくれたセンスあふれる方々になら、きっと理解してもらえる、そう願います。


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