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進化したマリノス。核となる三好康児の役割とは?

 「堅守」から「攻撃的」なサッカーへと進化した横浜FM(以下:マリノス)。昨シーズンは、リーグ内で2位タイの「56得点」を記録。「偽SB」「5レーン」を取り入れた「モダンフットボール」を軸にチームカラーの改革を行なった。
 そして、今シーズン。開幕から昨年よりもスピーディーで攻撃的なサッカーを披露してみせたのだ。
 対戦相手は、昨シーズン終盤に快進撃を見せたガンバ大阪(以下:ガンバ)。マリノスがボールを握り、ガンバがブロックを敷いて守る展開が予想されたが、試合は思わぬ形で動く。開始30秒ほどでバックパスをファンウィジョに拾われ、シュートのこぼれ球を小野瀬に押し込まれ先制点を許す。だが、そのわずか2分後に仲川のゴールで同点。さらに、34分には川崎フロンターレから期限付き移籍してきた三好康児がクリアボールを拾い、豪快に蹴り込んで逆転。38分には、新加入のエジガルジュニオにもゴールが生まれ、前半から3得点を奪う。
 後半もガンバの4-4-2の守備ブロックを華麗に崩しながら、試合のイニシアチブを握り、ゴールへと迫るシーンが続くが得点を奪うことができずず。すると、試合終了間際には再びCBとGKの連携ミスから藤春にゴールを奪われ1点差とされた。だが、なんとか逃げ切り開幕戦から白星発進を遂げた。

 危ない場面も見受けられたが見事試合を制したマリノス。そのチームの攻撃の核としてプレーをしていたのは、今シーズンから10番を背負った天野純や快足ドリブラーの仲川輝人でもなく、同じ県に本拠地を置く、川崎フロンターレから加入した三好康児であった。

両チームのスターティングメンバー

 マリノスは今シーズンも4-3-3の布陣。CBは昨年途中に加わった畠中とチアゴ・マルチンス。SBは推進力が持ち味であり、甲府からレンタルバックしてきた高野と、徳島ヴォルティスから獲得した広瀬陸斗。前線は、マルコス・ジュニオール、エジガルジュニオ、仲川輝人のスリートップ。そして、注目の三好はインサイドハーフで出場した。

偽SBによる4-4-2とのミスマッチ

 この試合の注目ポイントはマリノスのビルドアップの配置だ。本来サイドに開くはずの両SBが、アンカーの両脇に入る「偽SB」の形で攻撃の組み立てを行なった。そしてインサイドハーフは前線に3トップと合わさり5枚となる。これで、ガンバのDF4枚に対し、数的優位が作れるのだ。
 さらに注目すべき点がある。図を見て、ガンバの選手の間にマリノスの選手がいることが理解できるだろうか。マリノスの選手は、間を取ることができるため、ガンバ側からしてみればマークがしづらくなるのだ。

三好に与えられた「リンクマン」の役割

 これを頭に入れながら、三好のプレーを見てみると彼の重要性が分かってくる。

 前半9分のプレーだ。マリノスのボール回しから始まるこのシーンで、三好が中盤の位置までスルスルと下がってくる。この際、ボランチの遠藤保仁がマークに着くのだが、三好は鮮やかなターンで前を向き仲川へとボールを繋げた。マリノスの前線は数的優位が保たれているため、仲川はいくつもの選択肢がある状態でボールを受けることができた。彼が選んだのはオレンジ色の方向へのドリブル。このとき、三好の代わりに前線へと入った右SBの広瀬は右斜めに走り、仲川にスペースを与えた。
 CBからパスを受け三好のターンから一気に攻撃のスイッチが入る。昨年のマリノスには見受けられなかった形だ。


 さらに圧巻だったのは、その2分後のシーンだ。

 広瀬がボールを奪い仲川→三好→広瀬へと繋がったシーン。ここでも三好がボールを受けに下がってきたところで、再びターンからドリブルでボール運んでいったのだ。ここのマークに着いてきたのも2分前と同じく遠藤保仁だったが全く同じように交わしていた。
 この場面で三好がボールを運んだことによって、ガンバとマリノスの選手は4vs4の数的同数となる。彼のドリブルでカウンターを仕掛けることができ、なおかつガンバの中盤4枚をかいくぐることができたのだ。

 CBからボールを受け、前線へと持ち運び供給する。三好に与えられた役割は後ろと前を繋ぐ「リンクマン」としての働きであったのだ。

ハーフスペースの攻略もお手の物

 ピッチを縦に5分割し、アウトレーンとセンターラインの間に出来る「ハーフスペース」と呼ばれるレーン。このレーンに相手選手が入ってきた際、決定的な場面が生まれやすいことから、「一番危険な場所」とされている。マリノスはこれを意図も簡単に攻略していた。

 喜田→高野→Mジュニオール→三好と繋がりクロスまで持って行ったシーンだ。まず、喜田から高野に入った際、三好をマークしていた田中の視線は、ボールホルダーである高野に向けられた。その瞬間三好は裏へと走り出していたのだ。そして、Mジュニオールがオジェソクを引きつけワンタッチパス。三浦とオジェソクの間が大きく広がり、ガラ空きとなったハーフスペースで三好がボールを受けることができた。

 このようにマリノスは前線の選手が入れ替わりながら、相手ブロックに生まれるギャップを突いて攻撃を仕掛ける。また、守備の際もハイプレスが効いていた。さらにハイプレスから生まれるハイラインで、「11本」ものオフサイドを取った。この形と質がシーズン通して出来れば、優勝の二文字も夢ではないだろう。

三好ロスの場合マリノスはどうなる?

 川崎サポの筆者からしてみれば、三好が鶴見川の向こう側のチームに行ったことが衝撃でならなかった。だが、彼は今このチームに必要不可欠な選手であることに間違い無い。与えられたタスクをこなすことで選手としての幅が広がっていく。まだ伸び盛りの21歳だ。これからの活躍が楽しみでならない。
 マリノスとしては、そんな彼を使い続けたいであろう。しかし、直ぐに三好が試合に出られない場面がくる。3節には、川崎フロンターレとの神奈川ダービーがある。三好は契約上出場することが出来ないのだ。三好は特別な選手であることに間違い無いし、彼の替わりが務まる選手かと言われれば正直言って微妙なところだ。

 彼が出場することの出来ない試合では、アンジェ・ポステコグルー監督の采配が見物となってくるであろう。

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【ヘッダーと写真】横浜F・マリノス公式Twitterから引用
【図面】Football Tactics

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