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近藤良平×勝山康晴×『可能性の獣たち』×後編【ハ・ガ・タ(2018年掲載)】

この「ハ・ガ・タ」は、以前BITEのホームページ内に掲載していたインタビューコンテンツでした。この度のBITEーP立ち上げにあたり、コーナーごと移籍してリニューアルさせて頂きます! インタビューを中心に、自由に、柔軟に、気になるコトを取材&調査していく企画です。

今回は2018年に掲載されたハ・ガ・タより、コンドルズの近藤良平さんと勝山康晴さんの対談・後編を再掲載。リード文・本文に含まれる各情報は2018年当時のものです。その点お含み置きの上お楽しみ下さい。



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BITE編集部が「いま気になるコトに歯形をつける!」をコンセプトにスタートさせた公式サイト限定コンテンツ。前回に続いて、コンドルズの近藤良平と勝山康晴による対談記事の後編を公開します。両氏によるお互いのこと、BITEの話、そしてもちろん『可能性の獣たち』についてーー。様々なエピソードが飛び出したコンドルズ語録をお届けします。


▼小劇場を応援していることが全面的に伝わってくる▼

──記事の後編は少し毛色を変えて。僕が作っている雑誌『BITE』ですが(※手渡す)、ぱっと見の印象はどうでしょう?

近藤 これ、小劇場を応援していることが全面的に伝わってくる。いいですね〜。

勝山 芸能人は出てこないという。非常に反逆精神を感じます。

近藤 それが気持ちいい。完全に「小劇場の本」という。

──ありがとうございます。せっかくの機会ですし小劇場の話題にも触れたいのですが、お二人が最近の小劇場をご覧になることは?

近藤 正直言うとあまり観ていないです。ほんと、知り合いの公演を観る程度。

──ちょっとしたことで構わないので、昔と今の小劇場に何か違いを感じます?

近藤 飲む量の違いじゃない? 昔の方が絶対多かった。

──なるほど。

近藤 半分冗談だけど(笑)。

──なるほど(笑)。

近藤 でもね、僕はそれをコミュニケーションの場と捉えるから、随分少なくなったと感じます。

──時代性もあるでしょうけど、それで機会を逸しているのも事実かと。

近藤 そうなんですよ。

勝山 昔は飲みの席で散々悪口とか言っている奴がいたわけで、それを聞くのも面白かったし、何より勢いがついた。悪口の当人同士が劇場で鉢合わせると「どうもお疲れ様です」なんて挨拶して、そういう感じもちょっと良いじゃないですか。

──小劇場全体が細分化して、それこそ「悪口を言い合えるほどお互い関与していない」みたいな感じかも。勝山さんはどうですか? 今日の小劇場。

勝山 僕も全然観ていないけど、でも公演チラシは見るじゃないですか。心を動かされる若手のチラシはほとんど見ない。僕はチラシをすげー大事に思っていて、紙質から形からデザインから何でも出来るのに、どうも面白くないですね。そういうところから若いエネルギーを感じない。ただ、デジタルネイティブたちがこれだけ新しいことを作り始めている時代だし、この先もっと画期的なことが起きるかもしれない。もう少し経ったら出てくるのかも。

──若いエネルギーは是非とも感じたいですよね。それに遭遇する機会は最近少ない? たまにはあります?

勝山 それこそ手前味噌ですが、初めてCHAiroiPLIN(※ちゃいろいぷりん/コンドルズメンバーのスズキ拓朗によるダンスカンパニー)を観た時はびっくりした。しっちゃかめっちゃかで、若い頃の良平さんとそっくり。良平さん本人に聞いても「若い頃の俺としか思えない」って。

──近藤さんもスズキさんの才能に親近感を覚えた?

近藤 そりゃすごいですよ。親近感どころか(コンドルズの)演出を任せたい(笑)。

勝山 あいつは思いついたアイディアにバイト代全額を注ぎ込める男で、やっぱエネルギー感じますよ。「10日間バイトしたら10万位貯まるので、それでやります」みたいな。

──コンドルズに近いメンタリティを元々持っていた。

近藤 ちょっとアホな感じがね。

勝山 こっちはむしろ採算を考えるけど(笑)。

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▼こういうことをやらないと、自分たちも満足出来ない▼

──ダンスフェス立ち上げも含め、コンドルズの自由な諸活動を外野から見ると、非常に清々しい気持ちになります。

近藤 俺たち的にはやりたいことをやっているだけですが(笑)。フェスの話で言うと、まずコンドルズのメンバーにもっと活躍して欲しい、更に若手ダンサーも気になる、そういう立場にいて、やれる環境と発想があれば、そりゃあやりますよ。こういうことをやらないと、自分たちも満足出来ない。

勝山 我々は現状に対する不満が大きいので。

近藤 そう。

勝山 結局のところ退屈している。「だったら面白くしてやろうぜ!」みたいな気持ちは、昔からずっと変わらない。

近藤 そういうところでずーっとザワザワしている。

勝山 ほんと「ディズニーランドへ行けばとりあえず満足」みたいな人生だったら楽なのに。

近藤 楽だよねぇ。

勝山 「USJにも行けたし、一年分は堪能した」とかさ。

近藤 年間パスだ。

勝山 何でそうならなかったんだろう?

──お二人ともいまだにギラギラしている?

勝山 以前ある地域で学校公演をやったら、大して盛り上がらなかったんですよ。で、いい歳したおっさんが汗だくのクタクタになり「……俺たち何やってんだろう?」みたいな気分にも、たまにはなる(笑)。でも、それをやんなきゃ面白くないんだもの。

近藤 あれは本当に変だった。40歳以上の男が学生服を着てさ、すげえだくだくに汗をかいて、10代の子たちがそれを観て「ふーん……」みたいな。もう、最悪を超えている。

勝山 ハハハハハ。

──でも「それをやってこそコンドルズだ!」と。

近藤 なんかね、そういう種を蒔いちゃったから、しょうがないねぇ、本当に。

勝山 そうそうそう(笑)。

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近藤良平 こんどうりょうへい○東京都出身、南米育ち。振付家、ダンサー、コンドルズ主宰。1996年にダンスカンパニー・コンドルズを旗揚げし、以降全作品の構成・映像・振付を手掛ける。


▼カツと一緒にいると広くものが言える▼

──お二人がお互いを「似た者同士」と感じることは?

勝山 どうなんだろうなぁ〜。むしろ真逆じゃないですか? 俺に良平さんみたいな要素は全くないし。

近藤 「全く似ていない」って、それは昔から言ってたね。

勝山 部屋の片付けをしないとか、僕の中ではほぼあり得ない。でも、ありもんの食材でチャチャッと飯を作るとか、そういうことは僕には出来ない。

近藤 僕はひとりだと意外と臆病者なんですよ。ソフトクリームのバニラとチョコで迷って、しまいには「買わなくていいや」と思うタイプ。それが二人以上になると急に強気になり「お前がチョコなら俺はバニラ」とか、意見が言えるようになる。そういう意味でカツと一緒にいると広くものが言えます。そして二人とも「人生をダメにしよう」とは考えてなくて、人生をより楽しくする為にギリギリまで行こうとか、そういう面は似ている。もしかすると「ポールとジョン」みたいなことなのかも。似ているとか似ていないとか正直よく分からないけれど、かと言って真逆でもない。

勝山 少なくとも二十代の多感な時期に出会った人で、間近で見た「明らかにオカシイ人」は良平さんと石渕(聡)さん。世間一般の価値基準が根本的に馴染まない人たち。過激ではないけれど、発想も言動も明らかに違う。「俺はこういう人に会いたくて上京したんだ!」と思ったもの(笑)。

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勝山康晴 かつやまやるはる○静岡県出身。ダンサー、コンドルズプロデューサー、バンドプロジェクト「FF0000」ボーカル、ROCKSTAR(有)代表取締役。1996年、近藤良平と共にコンドルズを旗揚げ。出演者兼プロデューサーとして活躍する。


▼若い子たちに「カノケに出たい」と言われたい▼

──最後にもう一度『可能性の獣たち』のお話を。このフェスに参加したいと考える若手カンパニーは多いと思うのですが、ぶっちゃけコレに出る為にはどうしたらいいのでしょう?

近藤 仮にそう思っている若手がいるのなら、「どうしたら出られるか?」に関して研究するところから始めるといいかも。

勝山 一回目で言うと、ほぼ良平さんと石渕さんの独断で選んでいます。そういうのって面白いじゃないですか。この話を最初にあうるすぽっとから聞いた際、「最近のコンペは平等性や公正さばかり重要視して、運営側もアーティストも堅苦しさを感じている。もっと独断と偏見に満ちたフェスは出来ないものでしょうか?」と振られたんです。僕も同じことを感じていて、そこからお互い話が盛り上がった。偏っているからこそ面白い。

──このフェスが掲げる「芸術性と大衆性の融合」というコンセプトもそうですが、既存の環境に風穴を開ける存在であって欲しいです。

近藤 ダンス関係者はそう思っている人が多いはず。今はコンクール至上主義が強いから。

勝山 賞を獲ったところで、意外と先がないんですよ。

近藤 それに気付いちゃった人が最近多いかも。

勝山 「賞を獲ったらすげー客が入ると聞いたけど……、そうでもないぞ?」と。一年経ったら元の場所へ戻ってきちゃう。ありがちな話です。

──賞の獲得の為に芸術性の追求のみがクローズアップされることも?

近藤 でも、それをやり続けるには度胸が必要。ある意味長い目で見ていることになるから、そういう人はそれでいい。ただ「コンクールだけだと上手くいかない。どうしよう?」と感じる人は、無理にコンクールを狙わない方がいいと思う。

──小劇場界隈というか、『BITE』にも通じる話だと思います。これは僕の勝手な想いなのですが、若手支援を志す存在として、『BITE』と『可能性の獣たち』は共闘関係にありたい。そういうことを記事の内容に含めて良いでしょうか?

勝山 もちろん!

近藤 いいですよ。

勝山 お互い頑張りましょう。うちも大学のダンス部の若い子たちに「カノケに出たい」とか言われたい。早く略されたい。

──『可能性の獣たち』、略して「カノケ」。そのフレーズ頂きました!

勝山 僕の目標のひとつです。略語の流行。

──コンテンポラリーダンスも、小劇場も、未来を憂う必要はないですものね。

近藤 全くない。その必要は本当にないです。

勝山 可能性の獣たちにどんどん暴れてもらえたら。


[文]園田喬し

[撮影]鏡田伸幸

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