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食材をおいしくする備長炭

かつて、どこの家庭でも火鉢に炭を入れて温まっていたものです。大きな陶器に藍模様が描かれた火鉢は、シンプルだけど、華やかな容器でした。今ではあまりお目にかからなくなりましたが、我が家では、金魚を入れたり、植物を入れたりと楽しんでいます。

当時火鉢は、コンロ代わりにしてお餅や干物、干し芋などを焼いたり、コトコトと長時間かけて煮物をしたりと大切な調理道具でもありました。

その火力を調節するのはお母さんのお仕事。火箸で炭を並べ替えたり、炭を補充して燃やし直したり、ヘラで灰を撫でて綺麗にしたり。

炭には黒炭と白炭と言う種類があり、一般的に使っていたのは、火がつきやすく扱いやすい黒炭。一方白炭は、備長炭のように火は付きにくいけれど臭いもなく、爆ぜることもなく長時間持ちするもの。その分、価格も高かったために家庭では使われなかったんでしょう。

紀州備長炭の炭焼きを見てきました。

紀州備長炭はウバメガシを原料にして作る、固くて良質な白炭です。そこで加熱する料理や焼き物に向いており、世界の中でも秀逸。紀州備長炭の製炭技術は、和歌山県の無形民俗文化財に指定されています。

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縦に木を並べて窯焚きし、火がつき始めたら窯の口を塞いで蒸し焼きにするのですが、その間の状態を最良に保つため、窯口に穴を開けたり排煙口の大きさを調節したりします。これらの作業は全て熟練の勘によって判断します。その後、徐々に空気を送って燃やします。真っ赤になったらそれを掻き出して灰と土を混ぜた素灰をかけて消化します。この時に白くなるので、白炭といわれるのです。

出来上がった紀州備長炭は、鋼鉄のように硬く、断面はまるでな光沢があり、炭どおしを叩いてみると鉄筋のように高い澄んだ金属音がします。

備長炭は遠赤外線の発生量が多いので、表面を均一に素早く焼き上げてうま味を閉じこめ、同時に歯ざわりも良くなります。灰が持つミネラル分が食材に旨味を与えて酸化も防止するなど様々な効果があります。その他、良く洗って水に入れて飲んだり、お風呂に入れると湯冷めしにくくなるとか。

見学の日、長いままの備長炭を1本ずついただいて帰り、その後とりあえずは家の隅に置いて、空気を浄化してもらうことにしました。

これから焼き物がおいしい時期です。備長炭も多く出回るはず。まずは炭火焼を食べに行きますか!


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