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美しい空に見えるから


ニュースを見てると、この世界から自ら消えるという悲しいニュースが流れてくる。

だから、今まさに自分をこの世から消すという悲しい選択をしてしまいそうな人にちょっと待って!と言いたい。書きたい。


俺は故郷の空が嫌いだった。

近くにはコンビニもなく、周りは山と空しか見えない。夜になると周りは真っ暗になり、どこからか何かの動物の声が聞こえる時もある。

町の人間と触れ合う機会がなければ、誰かと比べる事もなく山奥の不便さを思い知ることもなかったが、子供の頃は学校という集団生活をするしかなくて、知らなくていい故郷の不便さを知り、感じなくていい劣等感に包まれた。

周りには店はおろか自動販売機もない地域で、気軽に町の友達の遊び場にも遠くて行けず、休みの日には家から出ない青春を過ごした。

段々と父親との仲も悪くなり、自分の生まれた山も空も嫌いになり、空を見上げることもなくなった。

思春期特有の自意識過剰と劣等感に苦しみ、自分の生まれた意味にさえ疑問を持ち始めて、自分の存在を消そうと決めたのは17才の時だった。

俺は自分の写ってる全ての写真を燃やして、自分の生きてきた痕跡さえ消そうと、母親が大事にしまっていた俺の赤ん坊の写真も全て燃やしてしまった。

しかし、俺は消えるのを思いとどまった。未来に希望を持ったからではない。ただ、自分が消えるのが怖くなったからだ。カッコイイ理由なんかではなく、ただただ臆病で怖かっただけだ。

そうだ、俺の中にある生き物としての本心は、必死に生きようとしていた。生き延びた理由はただそれだけだった。

俺は大嫌いになった故郷の山も空も捨て、近くの町をも捨て、もっと大きな街に出て、ボロボロになって、また故郷に逃げ帰って来た。

大人になるまで大事に育ててくれた故郷に何も恩返しもせずに、後ろ足で砂をかけるように出ていった俺を、ボロボロになって全てを無くしてしまった俺を、故郷と両親は何も言わずに子供の時と同じように温かく迎えてくれた。

何もなくなった俺は誰とも競うこともなくなり、誰とも話すこともなくなり、ただ毎日を植物のように生きるだけの日々となった。

朝の光を感じて目を開けて、暗くなったら目を閉じた。

そんな毎日を過ごしてるうちに、せめて自分の生きた足跡ぐらいは残そうと文章を書き始めたのだ。

何かタイトル画像でもないかと、久しぶりに空にカメラを向けて空をじっくりと見上げたら、そこには真っ青な空があった。思春期には見ることさえ嫌がった、何も汚れてない山奥の青空だ。


あんなに大嫌いだった故郷の空が、今ではこんな美しく輝いて見える。

今見てる、故郷の美しく誇らしい空は、俺が住んでる田舎を人に知られるのを恥ずかしがった子供の頃から、俺が自分の存在を消したくてこの世から消えようとした頃から、ずっとずっと今までと同じ空なのだ。


この故郷の空は昔から何も変わってない。


この空を見てる俺の心が変わっただけだ。


だから、今、苦しみ悩んで消えようとしてる人の、今見えてる景色だけが本当の景色ではない。今、自分から消えようと思ってる人はちょっと待ってほしい。必ず、今の辛い景色は変わるから。同じ景色はずっと続かないから。

この先生きてたら、必ず幸せになれるなんて、綺麗事を言いたいわけじゃない。とにかく、自分の気持ちは必ず変わるし、その結果、今見てる悲しい景色も必ず変わる。

不謹慎かも知れないが、どうせ、みんな死んで灰になるだけだ。


だから、決して生き急ぐ必要はない。


辛い時、悩んでる時でもお腹は減るだろ?それは体が生きたいと言ってる証拠だ。

そこのモテなくて、この世から消えようとしてる君!

エロ動画の検索履歴やエロ動画のコレクションはこの世から消える前にちゃんと処分したかい?母ちゃんや親戚に見つかったら、なんとも言えない微妙な空気で遺品整理されるよ?

遺品整理の時に君の持ってる「痴漢者トーマス」のエロゲーの存在が、みんなにバレてしまうよ?

さぁ、この世から消えるなら今から家に帰って、見られたら恥ずかしい物は処分しよう。しかし、処分しようと自分のコレクションを整理しようと見てたら、処分出来なくなるのが男の弱いところなんだよ。

そう、君の頭がこの世から消えようと考えてても、君の下半身は生きようと、もがいてる!

俺は決してフザケて書いてない。悲しいニュースが続いてるから、なんとか思いとどまってほしいから書いてる。

今は悲しく辛くとも、必ず、今の気持ちが変わる時が来る。

だから、もうちょっとだけ待ってほしい。

俺も大嫌いだった故郷の空が今では綺麗で美しく感じる心に変わってる。

誰だって、いつだって、いつか必ず今と違う心になるはずだ。

今、君が見てる悲しい景色は、いつか必ず、今とは違う景色になる。


この先、きっと変わるから、今は待て!


消えたくて苦しんでる人に、俺は今はこの言葉を送りたい。

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