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山中千瀬
2020年11月14日 00:20
さいきんは夢のなかでもだいぶうまく走れるようになってきたとあの子が手紙のなかで言う。長い手紙はときどき送られてくる。あたしは返事を書かない。メールで手紙届いたよとだけ送る。 夢であの子はあたしを追う。夕まぐれ。前の冒険で手に入れた魔法の靴をはいているから飛ぶように走れる。でも追いつけない。簡単に見失ってしまう。あの子の目の前を、あたしをたくさん載せた電車が過ぎていく。黒い革のジャケットを着て