見出し画像

インタビュー:マジック業界の変革を目指す。マジシャン・みのりさんが作る新たなピラミッド

あなたはこれまでに、直接マジックを見たことがありますか。そのマジシャンの名前を、思い出すことはできますか。

「マジックをみた記憶はあっても、その人が誰だったのかは思い出せないって、ものすごく多いんですよね」

マジシャンを生業にするみのりさんは、そう話します。
マジシャンという職業の現状に満足せず、客観的に現在地を見つめる。そんなみのりさんの考える、革新的なマジシャンとしての在り方について聞きました。
 

ピラミッドは一つじゃない


 現在、マジシャンのチームを率いて約40人の若手を育成しているみのりさんが、マジックと出会ったのは10歳のとき。幼馴染にマジックを見せられたのがきっかけだといいます。タネがわからない悔しさから、対抗してマジックグッズを購入し、今度は自分が披露したところ「すごい」と言われる快楽にハマったとのこと。それから大学までは、自己流でマジックを学んでいきました。
 
大学2年生のとき、マジックサークルの先輩に誘われ、初めてお仕事としての舞台を経験。そこからマジシャン活動をスタートさせました。当時はマジックでの収入のみで生活していましたが「マジックの活動は、大学の間だけ」と思っていたといいます。

「その頃、マジック業界は一つの大きなピラミッドだと思っていたんですね。1番上に世界で活躍する方、次にテレビでご活躍される方がいて、その次に業界で有名な方がいる。その下に僕ら若手プロマジシャン」

「自分の一段上にいる、業界で有名な方たちは、一般的な知名度は低いけれど、テクニックが異次元に上手い人達だったんです。なので、僕が一生かけてもこの壁を超えられる気がしなかったんですよ。このピラミッドで闘う自分の姿が見えなかったんです」

在学中は2年半マジックに打ち込み、大学卒業と同時に大手人材広告会社に就職。会社員時代は、営業先でもトランプやコインのマジックを披露していたといいます。マジックをきっかけに、営業先で名前を覚えてもらえるなど、仕事も円滑にすすむことが多かったそう。

所属する課として、会社全体の中で全国1位をとることに貢献するなど、意欲的に仕事に取り組んでいたみのりさん。しかし、社会人2年目に大学の後輩が立ち上げた「株式会社New ALIFE ENTERTAINMENT」に誘われ、自分にとってより魅力的だと感じる仕事をしようと転職を決めました。今は事業部長として活動中のみのりさん。会社員時代を経て、現在どのように考えが変わったのかを伺いました。

「社会人になって、ピラミッドっていっぱいあるんだなと思ったんです。ピラミッドごとにフィールドは違うので、既存で活躍している人たちの得意分野とは違う、人が少ないところで闘ったらいいと思うようになりました。さらに、この会社にきてから、『ピラミッドは作れるな』と思うようになって、作るためにどうしたらいいのかを今は考えています」

こうしてマジック業界に戻ってきたみのりさん。一度は違う業界を経験したからこそ、マジック業界を多角的に見つめることができるのかもしれません。


「あのマジシャン」ではなく「自分」として


現在、みのりさんの根底にある考え方は「自分に価値をつける」こと。
みのりさんは、複合的に仕事をしていく中で、今後もマジシャンとしての活動を続けたいといいます。そのために、これからの時代、マジックというコンテンツだけに頼った生き方だと弱いと考えているそうです。

「将来的にもマジシャンとして生きていくには、自分で人を呼べることが大前提です。自主開催のショーにどれだけ集客できるかは、その重要な指標になると思います。そのため、マジックを見て僕のことを好きになってくれたり、僕のことを好きになった結果、マジックを見に来てくれたりするにはどうしたらよいかを、総合的に考えるようになりました」

自分自身に価値をつける活動の一つが、SNS。動画をシェアするSNS、TikTok(みのり|恋を語るマジシャン (@magician_みのり) TikTok | みのり|恋を語るマジシャンさんのTikTok最新動画をチェックしよう)のフォロワーは約7.5万人です。ショートムービーで‟人”と‟マジック”の両方を見せるのは難しいと考え、あえて自分の個性を伝えることにフォーカスした喋りの動画を投稿。多くの人に見てもらえるアカウントとなっています。
 
また、noteでは、彼自身の考え方を文章として発信。現在は、月額会員制のコミュニティ「メンバーシップ」で、購読者とのつながりをつくっています。
 
このように、マジック以外の場所で素顔を出していくことで、マジックの「腕」だけでなく「みのりさん自身」のファンになってもらえる土台を創り出しているのです。
 
 

会社として作り上げるピラミッド


自らの価値を高めたうえで、これからみのりさんらが築いていくピラミッドとは、一体どのようなものなのでしょうか。

「会社としては、劇場を作りたいと思っています。お笑いでいうと、マジック版吉本新喜劇のようなものです。毎日そこで誰かがマジックをやっていて、お客さんが観光地的に来てくれる‟空間”作り、僕もそこでメインで動いていたいです」

またマジックの価値は、いくつか存在するとみのりさんは言います。

「マジックは非日常を作れるものなので、マジックを見たら面白くなるだろうっていうのは、確信があります。他には、人を驚かすとか、サプライズを作ることができるというのもありますね」

マジックを多角的に見て、価値を掘り下げていくことで、マジックが活躍する市場を増やしていくことも視野に入れているようです。

『サプライズ』にはものすごく可能性があると思っています。みんな、年に何回か、大切な人にサプライズってしたいじゃないですか。マジック市場は狭いけれど、サプライズ市場はとても大きいので、マジックの知見を持ってして驚きを与えるという構図には、魅力があると思っているんです。そこに広げた結果、エンターテインメントとしてのマジックも伸ばしていけるのではないかと考えています」

マジックという、一見華々しい世界。そこで生き残るため、緻密な思考を重ねているみのりさん。泥臭く考え抜かれた先にあるみのりさんのマジックは、きっとこれから多くの人に‟その名“を残すのでしょう。

(インタビュー:2022年9月、伊藤千梅)


MAGIC & TALK SHOW「TRICK TIME」
2022年10月22日(土)16:00~
https://magicianみのり.com/event
 
note
みのり|note
 
 
 

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートは、活動費や応援するクリエイターやニッチカルチャーハンターへの支援に充てたいと思います!