大河『鎌倉殿の13人』とアニメ『平家物語』から、今また『火の鳥〈乱世編〉』がイイ
『鎌倉殿の13人』観てます。
毎週。一時は、あえて録りためてましたが。
……って人、多いんじゃないかなとか思います。
アニメ『平家物語』観てた方は。
ドラマとアニメのマリアージュ
1月9日からの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。
1月13日からのアニメ『平家物語』。
両方観てた方。両面から見る源平の争い、とっても良かったですよね。
アニメでの「おごれる平家」の一方その頃、ドラマでは虎視眈々と準備する「源氏」がいる。
行ったり来たりのマリアージュがなんともなんとも。
繰り返し描かれる「諸行無常」「盛者必衰」のループを源平の両サイドから見ることによる、誰に感情移入していいか分からない“突き放され感”と、物語への理解が深まっていく“巻き込まれ感”。
ツンデレってたぶんこんな温度差。違うか。
放送スピードとストーリー展開のズレ
ただ、両面から見るのはとても良かったのですが、物語内の時期が毎週いつも揃っているわけではありません。
大河ドラマは1年かけて放送されるのに対して、アニメは3か月。
すると、当然ながら進むスピードが違う。
実際どのくらいストーリーはズレていたのか? 図にしました。
図は、上に『平家物語』の第一~十一話を、下にはこれに対応する『鎌倉殿~』第1~19回のタイトルを並べました。『平家物語』第二話と第三話のあいだに、『鎌倉殿~』の第1・2回があるという具合。
交点と交点のあいだの長さは時間に比例せず、あくまで、それぞれがどの順番で物語られているかという目安です。
これを見ると、後ろにいくにつれ、だんだんと時期がズレることが分かると思います。
例えば『平家物語』は第六話に富士川の戦いが描かれますが、『鎌倉殿~』では第9回。3週間の開きがあります。
そこで私は、『平家物語』は『鎌倉殿~』のストーリーが追い付いてくるまで待って……という具合に録りためていたんです。
まあ結局、待ち切れずに観てしまいましたが。
理由は2つあって、『平家物語』があまりに面白かったことが、その1つ目。
2つ目の理由は、私が勝手に『鎌倉殿~』の壇ノ浦は今年の下半期にはなるだろうと想像していたため。
まさか『鎌倉殿~』の壇ノ浦が5月8日だとは思っていなかった……。
義経の退場が思いのほか早く、切ないやら寂しいやら……。
はい。ここで本題です。
義経の退場の切なさ、寂しさ。これはひとえに『鎌倉殿~』の義経像が良かったということの裏返し。
イヤな奴なんですけれどね。嘘をつくし、人は殺すし、人間的に欠落していて。
でもそれが、あの義経を思い出させるわけです。
『火の鳥〈乱世編〉』の。
『火の鳥〈乱世編〉』の義経像
源平の争いをベースに描かれる『火の鳥〈乱世編〉』。
『平家物語』『鎌倉殿~』とどの程度、物語がかぶるかと言えば、下図のとおり。まあ、源平の争いのハイライトは決まっていますし、重点的に描かれるシーンはかなり重なると言って良いでしょう。
さて、この『火の鳥〈乱世編〉』の義経もイヤな奴です。
特に古い友だちを部下に斬らせたシーン。「どうして友だちを殺したんです!」と聞かれ、次のセリフ。
このときの表情が本当にイヤな感じで……。
ただ平家を滅亡させることを目的として倫理観もなく、友を斬り。最終的にはそれらは自分に返ってくるという哀れさ。
この手塚治虫が描いたキャラが刷り込まれ、私にとっては“イヤな義経”に馴染みがあります。
良い人?悪い奴?
ですが、義経と言えば、たいてい天賦の才を持った貴公子のように認識されている気がします。
2005年の大河ドラマ『義経』で、主人公の義経を演じたのは滝沢秀明でしたし。
でも、『平家物語』『鎌倉殿~』の義経。
『鎌倉殿~』の義経が嫌な奴だったことは先のとおり。
三谷幸喜が『火の鳥〈乱世編〉』を読んでいないとは思いません。その上で挑戦的に、新しい、イヤな奴を作ったんだろうなと。
菅田将暉演じる、危ういピュアさを持つ野生児のような義経。平家を倒したいという思いもさることながら、頼朝への親愛を思いました。ちぐはぐな兄弟愛が胸に迫りました。
一方『平家物語』。
どちらかと言えば貴公子的な描かれ方をしているんですが、平氏一門の目線なので、やっぱり義経は敵方。どこか冷たさを感じる。ここで浮かべる不敵な笑みも、イヤな奴な感触を覚えます。
これら両方を観るほど、私は“イヤな義経”である『火の鳥〈乱世編〉』が思い浮かぶ。
本棚から取り出し、今また読むとやはり面白い。
『鎌倉殿の13人』、『平家物語』、そして『火の鳥〈乱世編〉』。
ごちゃまぜにしてみる。とてもイイ。
どの義経も、ちぐはぐで完璧では全くない。むしろイヤな奴。
でも、そんな“イヤな義経”って、すごく人間的で。
あぁ、盛者必衰。
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