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作家インタヴュー:懐かしいタッチと今とを交差させるイラストを描く、鈴木旬さん

妖怪、豆腐小僧を知っているか。トウフボーイを知っているか。
「最初に見たのは、水木しげるさんが『ゲゲゲの鬼太郎』で描いた豆腐小僧ですね」と、イラストレーターの鈴木旬さん。幼い頃から妖怪好き。ただ豆腐小僧には特に思い入れはなかったそうです。

それが、冷奴味ソフトクリーム(?!)のPRのためにオリジナルキャラクターを依頼されたことをきっかけに思い入れが生まれました。
「ソフトクリームはアメリカ的だから、豆腐小僧と50’Sアメリカンを合わせて『トウフボーイ』としました。僕の中ではしっくりきて。ちなみにそのソフトクリームはマニアックな珍味みたいで賛否両論(笑)。僕は嫌いじゃなかったけれど、皆が喜ぶものではなかったですね」

イラストレーター鈴木旬さんのオリジナルキャラクター“トウフボーイ”

さてしかし、そこで作ったトウフボーイを、鈴木さんは自身のアイコン的なキャラクターへ進化させました。服装や肌の色など、デザインを何段階も変え、SNSのアカウントにも使用しています。

なぜ、そこまで作りこんだのでしょうか?
「起源を調べたら、はっきりとはわからないのですが、どうも江戸時代に豆腐屋さんが作ったキャラクターだという説があります。当時の社会風刺マンガにも、頻繁に登場していたようです」
妖怪といえば、自然現象への理由付けから生まれたものが多い中、PRキャラクターとして生まれた豆腐小僧。PRキャラだから、特別な能力はありません。
「元祖キャラクター妖怪というのが面白いと思って」

過去の面白みと現代を組み合わせる

過去の面白みを、現代と組み合わせて作り上げる。
トウフボーイは、鈴木さんの持ち味をそのまま表しています。
現在、鈴木さんは、過去のマンガやアニメタッチを用いて、アーティストグッズのイラストなどを手掛けています。タッチとモチーフとのギャップが、おかしみを誘います。
もともと、インタビュアーの僕が鈴木さんを知ったのも、彼がロックバンド、BAND-MAIDのイラストを手掛けたことからでした。


ベッド・イン、ももいろクローバーZ、BAND-MAID……。鈴木さんが手掛けてきたアーティストグッズのイラストはどれも、ちょっと懐かしいタッチで描かれています。
「器用に描き分けているわけでなく、それなりに心を砕いていますね。依頼された文脈の中で考え、理由があった上でタッチを選んでいます。仕事の場合、タッチを指定されることも多いですが」

原点は「水木しげる」

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昔から、過去のアニメやマンガの絵柄が好きで描き写していた鈴木さん。
原点は、水木しげる。保育園生の頃に、地元の鳥取県出身の漫画家がいることを親から教えられて観た『ゲゲゲの鬼太郎』に衝撃を受けたそうです。親が買い与えてくれた、水木しげるの妖怪図鑑を読みこんでいました。
「水木さんが描く妖怪は、お人柄によるところかもしれませんが、怖さもありながら、基本はかわいらしさとか、とぼけた味わいがある」

大学卒業にあたって、妖怪にまつわる仕事をしたいと、県内の水木しげるロードにある会社に就職。新卒採用はされていませんでしたが、自ら問い合わせて就職しました。
そこで、鬼太郎グッズのイラストなどを描きましたた。文具、アパレル、食品パッケージなど、様々なグッズに携わったそうです。
その後、転職、上京を経て、現在はフリーランスのイラストレーターとして活動しています。

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「懐かしさも感じさせつつ、ちゃんと今の時代と合わせたい」

「パロディの絵は多いですけれど、自分のタッチとして譲れないポイントはあります。バランスや線の太さやカラーリングとか。単に懐古趣味だけで描いていきたくはありません。懐かしさも感じさせつつ、ちゃんと今の時代と合わせたいと思っています」

守破離という言葉があります。
鈴木さんは、学生時代と会社員時代と、型を〈守〉り描いてきました。
そして、今、型を〈破〉り始めています。見たことがある気がするけれど、絶対に見たことがないものを描く。
次に来るのは〈離〉のフェーズ。その先は未知の世界。
豆腐小僧は知っているか。トウフボーイは知っているか。

(インタビュー2019年夏)

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