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インタビュー:山形から表参道に“在廊”?オンラインを駆使した個展「竹永絵里の我愛台湾」の舞台裏を本人に聞く

緊急事態宣言、「イベントどうする?」。
身近なところでは友人との飲み会から、大きくはドーム規模のライブイベントまで。これは様々な方が直面した課題ではないでしょうか。
展示会ももちろん、その一つ。多くの美術館や博物館が休館になりました。
「何か出来るかたちはないだろうか?」
イラストレーターの竹永絵里さんも展示会の新しい開催方法を模索していた一人です。苦心のあらましと、その結果生まれた新しい試みなどを聞きました。

台湾にハマり本も出版!イラストレーター竹永絵里さん

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2011年からフリーランスのイラストレーターとして活躍する竹永さん。雑誌や書籍へのイラストなどを数多く手がけています。
大好きな台湾には毎年足を運ぶと言います。今年1月には、台湾旅行の本も出版しました。


「10年くらい前に家族旅行で初めて行って。初めはそんなに惹かれませんでした。でも、後ろ髪引かれて、なぜか毎年行って…。じわじわ好きになって、今では本当に大好きですね」

と話す竹永さん。以下に載せる台湾の写真も竹永さん撮影のものです。

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台湾の魅力はどんなところですか?

「食べ物がすごくおいしい。近くて行きやすい。危険なことも少ないと思います。そして、たぶん何より、人の温かさが一番の魅力」

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イラストへも、いくらか影響があるかもしれないと話します。

「色はちょっと影響を受けているかもしれないですね。台湾にはビビッドな色が多い。そんな色が重なって表れる、ちょっとワクワクした感じなどは自然と出ているかもしれません」


1年前から決まっていた個展開催

フリーランスになって以来、毎年個展を開催する竹永さん。

「毎回、今後の制作とかを踏まえてテーマを決めていきます」

個展をチャレンジの場ともとらえ、近年は「花」をテーマにしていました。

「お花は、描くのが苦手だったので、あえて。生のお花が一番綺麗だから、絵にするのはどうなのかなって。それに自然物は立体的で複雑で、自分が描くことには不安や苦手意識がありました。それを克服しようと、テーマにしていました」

逆に、好きなジャンルの旅行は、テーマからは避けていました。
2020年も、例年通り、1年前には時期も会場も決定。5/29〜6/3、OPA galleryにて。テーマに選んだのが「台湾」でした。
先に挙げた本の出版が決まっていたことからも、「そろそろ思っきり旅行っぽいテーマにしてもいいかな」と、テーマに選んだそうです。


新型コロナ禍、緊急事態宣言で先行き不明に…

しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大と、緊急事態宣言が発令。
3月にはDMの印刷に取り掛かって、下旬には完成。例年の1.5倍、2000部を印刷し、しかも特殊な円形にカットするなど、力を入れていた竹永さんですが、途端に開催すら危ぶまれる状況となりました。
数々のイベント中止・延期のニュースが聞かれ、周囲でも展示を中止する方が増えてきました。
竹永さん自身、会場に飾る提灯や小道具などの買い出しに台湾へ行く予定も断念。半ば諦め気味にもなっていました。


ギャラリーと一緒にオンラインで出来ることを模索

一方、会場のOPA galleryでも、展示はしていましたが、作家も呼ばず、来場者を入れず、その模様をInstagramやtwitterで配信するに留めていました。
竹永さんの個展も、このかたちでの開催がゴールデンウイーク頃に決定。そのうえで、他にもオンラインで出来ないかを模索しました。
状況は日々変わり、緊急事態宣言は一度の延長を経て、5/25に解除。
これを受けて、5/29から始まる個展は来場者を受け入れることに。
しかし、そうは言っても、配慮が必要な状況であることには変わらない。
作品は配送し、ギャラリーへ展示を依頼。都道府県をまたぐ移動への制限などもあり、竹永さん自身が行くことはかなわず。DMなども、オンラインでも見られることや、時節柄の留意も案内しました。


ギャラリーとの信頼関係による、オンラインでの試み

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そして、オンラインで行った試みの一つが「オンライン・在廊」です。
iPadにより、オンラインで竹永さんのご自宅のある山形県と、ギャラリーのある表参道をつなぐという方法。これまでも個展では全期間在廊していた竹永さん。今回も来場者とコミュニケーションがとれて良かったと話してくれました。
また、実現できたのは、ギャラリーとの信頼関係のおかげとも。

「通信がつながらなくなったときはギャラリーの方に直接すぐに電話して『今、切れました』とか。信頼関係があったことも、オンラインでできた大きな理由でしたね」


オンラインで行った5つの工夫

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オンライン・在廊を含め、工夫されたことが主に5つあります。

1)オンライン発信
  ギャラリー作家自身のアカウントから、作品や個展情報を発信。
2)オンライン在廊
  iPadを通じて、来場者とコミュニケーション。
3)オンライントークイベント
  台湾をテーマとするオンライントークイベントを開催。
4)オンラインクロージングパーティー
  SpatialChat(スペチャ)を利用して、クロージングパーティーを開催。
5)オンラインショップ
  STORESを利用して、オンラインショップを出店し、グッズ販売。

ちょっと分析的で恐縮ですが、例えば1)で作品を観てもらい、2)・3)・4)で来場者へ深く伝え、5)で収益へとつなげられる。結果、来場者数は例年の1/4に減ったものの、グッズ売上は変わらなかったそうです。

「リアルでは小物などが『かわいい』と感じてくださって買われるようですが、オンラインではあまり売れなくて。オンラインでは手ぬぐいとか用途がはっきりしているもののほうが売れるのかなと思ったりしました」

こうした傾向を、肌身で感じられたことも収穫の一つ。
オンライントークイベントも、またやってみたいと前向きに考えています。


イラストレーターとして

最後に、理想のイラストについても聞いてみました。

「『いやいやえん』『ぐりとぐら』などの、山脇百合子さんの絵が好きです。子どもが喜ぶことだけを思って描かれているようで打算的じゃないというか。私も、イラストで嫌な気持ちや不快な気持ちには絶対させたくありません」

例えばグロテスクなイラストなども見るのは嫌いではないけれど、描くのは自分の役割でないと一線を引きます。

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「私は美大出身ですが、情報デザイン学科でした。だからなのか、情報を伝えるためのイラストを頼まれることが多くて。写真ほどリアルに見せたくないけれど、情報として正確であり、かつ、かわいく親しみあることが求められる仕事は多いです」

竹永さんが描いてきた作品の中には、民族衣装や工芸品など、ともすれば緻密にも描けそうな物も多く見受けられます。そしてそれらを実に親しみやすく描きあげています。

情報をしっかり伝えること、そして、親しみやすいこと。

これは今回の個展「竹永絵里の我愛台湾」で行われた、数々のオンラインの工夫にも表れているのではないか。インタビュアーの私は、そんなことも思いました。
オンライン在廊などは、顔が見られて“親しみやすく”、そして“伝えられる”手段。
作品にも、そして展示方法にも、個性が表れるのは当然の話。竹永さんのイラストの親しみやすさと情報の伝わりやすさの秘訣が、個展にも凝縮されているような。
これらオンラインでの詳細や、さらに具体的な方法は、竹永さんご本人のnote(https://note.com/takenagaeri/n/n986a2b15af7e)をぜひご覧ください。
いろいろな状況はあっても、できること、表現方法は、さまざまにある。皆さんも、そんな思いを感じはしませんか?


(インタビュー:2020年6月)


竹永絵里さん
https://takenagaeri.com/

《直近の展示》
世界の民族衣装の原画展示
「gamou あかね.ya」越谷市蒲生茜町23-2 WAnest E102(蒲生駅西口より徒歩5分)
展示期間: 7/1(水)〜7/26(日)10:00〜18:00
※7/26(日)最終日は展示のみ15時まで
※期間中のお休みは8(水)、15(水)、22(水)
※12(日)は貸切利用のため飲食不可。
https://www.instagram.com/gamou.akaneya/?igshid=u5bsy5ilam8m


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