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【読書】小説という思考実験、森博嗣さんの世界。

森博嗣さんの名前を知ったのは、押井守監督のアニメ映画『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』を鑑賞したときだ。

永遠に子どものままのキルドレが、戦闘機のパイロットとして戦う物語であり、作品全体が淡々とした静けさに包まれている。深く感銘を受けて原作者は誰だろう?とチェックしたところ、森博嗣さんだった。

X(旧ツイッター)上で読了した本、鑑賞した映画、気になった音楽を記録メモとしてつぶやいているのだが、いま検索してみると2016年の4月5日にTSUTAYAで『スカイ・クロラ』のDVDを借りている。

ちなみにTSUTAYAの店舗によるDVDレンタルは2023年に撤退しているようだ。その作品を借りた店は、早々になくなってしまった。

あまりにも美しい映画だったため、原作が読みたくなって文庫を購入した。記録によると『ナ・バ・テア』から読み始めている。どれから読むべきだろうと考えて検索して、シリーズではこれが最初という情報を得て選んだ記憶がある。5月12日に入手して2日後の14日に読了。『フラッタ・リンツ・ライフ』を5月24日に入手して2日後の26日に読了。

6月4日には『スカイ・クロラ』『スカイ・イクリプス』の2冊を入手し、『スカイ・クロラ』は6月9日に読了、『スカイ・イクリプス』は7月4日に読了している。

どういうペースの読書なのだ。読むのが速すぎ。といっても森博嗣さんの本は、ほとんどが同じようなペースで読了している。面白すぎるからだ。自分に合っているせいもあるだろう。時間を忘れてぐいぐい読める。

スカイ・クロラシリーズの長編5冊と短編集1冊を読破した後は、しばらくブランクがあった。というのは、どうやら森博嗣さんはミステリー作家らしいということは分かったのだが、もともとミステリーには興味がなかったので、その他の作品には手が伸びなかったからだ。大学にお勤めで工学部の教授だったということも、かなり後で知った。

ミステリーに食わず嫌いはやめよう、少し読書の幅を拡げてみようと思って読んだのが『すべてがFになる』である。

もうひとつのきっかけとしては、高校生用の国語便覧が欲しくなって古本屋で買ったところ、森博嗣さんがやけに大きなスペースで取り上げられていたからだ。なぜだろう?と思って気になった。

『すべてがFになる』は代表作だが、個人的な感想としてはいまひとつだった。なんとなくぎこちない印象があった。ラストのどんでん返しには感動したし、天才科学者である真賀田四季の登場は印象に残った。けれども、スカイ・クロラシリーズの雰囲気が好みだった自分には、うーむというもやもやした読後感が否めなかった。

ところが、その後、『すべてがFになる』に続く西之園萌絵と犀川創平の登場するS&Mシリーズを読み始めたところ、これが止まらない。

ひとつひとつ解説していると10万文字ぐらいになりそうなので端折るが、シリーズを横断して同一の登場人物が出てくることが、ファンとして嬉しい。あの人物はどうなったのだろう?と気になって、全部を読み進めたくなる。年譜や地図のようなものを作ってみたい。もしかするとファンの誰かが作っているかもしれない。

シリーズのなかでも個人的に好きなのは、Wシリーズ+WWシリーズである。ほとんど不老不死を実現した近未来が舞台であり、ウォーカロンという人工生命体、スパコンやネットに存在してサブセットとして人工生命体の物理的な姿を借りる人工知能が登場する。

人工知能は女性型が多く、男性の姿の人工知能は演算処理の能力が低い。偏ったシミュレーションをして困った存在だ。さらに森博嗣さんの小説には、優秀かつ強い令嬢が登場する。特徴としては、ショートカットの髪型で高級スポーツカーを猛スピードで激走させる。作者の好みまたはエンタメ精神が発揮されているのだろう。あ、またこのタイプですか、お好きですよね、とにやけてしまう。

森博嗣さんには大量の作品があるが、思考実験として書かれているのだろう。構造やフレームワーク(枠組み)をまず作り、仮説を立てる。次に仮説を覆す展開を探る。すべての人物を人形のように操っていく。そうして物語世界を紡ぎ出しているように思える。

だから、森博嗣さんの小説には終わりがない。物理的に有限な世界ではなく、無限の世界の中に生かされている人物たちは、増殖して進化する。もはや作者の手を離れて、生成変化しているようにさえ見える。

ところで個人的な感想では、森博嗣さんが書く小説にはハマるのだけれど、エッセイは何となくいただけない。緻密で哲学的な思考を持つ主人公の小説を書かれているにも関わらず、あれれ、おやおや?と拍子抜けするような印象だ。もちろん発想が面白いので、手を抜かれているわけではないと思うのだけれど、疑問。

現在はWWシリーズを読み進めている途中だが、永遠に読み続けられそうな気がする。大量になりそうだが、X(ツイッター)の読了メモを以下に取り上げる。読んだ順ではなくシリーズごとに掲載したい。エッセイも読んでいるのだけれど、ここでは取り上げない。

抜き出してみたら膨大で驚いた。紙の本で手に入れていることに対して、嬉しい後悔がある。しかし、さらに驚くべきことには、読了した本以上に未読の本がたくさんあることだ。

2024.03.27 BW

※ この先は、Xの読了リンク多数なのでご注意ください。

S&Mシリーズ

Vシリーズ

百年シリーズ

四季シリーズ

Xシリーズ


Wシリーズ

WWシリーズ

短編集・その他


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