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BandLabからTTS-1が消えてしまった話。

たとえ話から始めたい。食玩というものがある。お菓子に玩具が付いているのか、玩具にお菓子が付いているのか分からないが、人気キャラクターのおもちゃが入ったお菓子のことだ。

仮にいま、ポコモン(?)のフィギュアが入ったお菓子があるとする。ところが、ある日突然「キャラクター玩具の版権が切れましたので、これからはお菓子だけで販売させていただきます」というメーカーからのアナウンスがあり、玩具なしになってしまったらどうだろうか?

このたとえは適切ではないかもしれない。言い換えてみたい。iPhoneには、Siriという音声対応型のアシスタントが付属する。ある日、iOSをアップデートしたところ、Siriが消えてしまったら?

というわけで本題なのだけれど、パソコンで音楽を作ること、いわゆるDTMを趣味としている。DTMで音楽制作をするためには、DAW(Digital Audio Workstation)というアプリを使う。録音機材とスタジオの役割を果たすツールである。

楽器をパソコンに接続してDAWから入力したり、マイクから音を録音したり、さまざまなインプットができる。フレーズ集のような音源を切り張りしてトラックを構成することも可能。VSTiなどのソフトウェアシンセサイザーを使えば、マウスでピアノロールと呼ばれる方眼紙のような画面にぽちぽち音を置いて、オルゴールのように音を組み立てられる。

DAWはCakewalk by BandLab(以下、BandLab)という無償のアプリを使っている。というよりも、実はかつてこのソフトは有償版のSONARというソフトウェアだったのだが、開発元の経営が思わしくなく外部に放出されてしまい、いつの間にかフリーウェアになっていた。したがって、SONARの時代を合わせると10年以上も前から使ってきた。

開発元の設立は1987年。2008年にRolandoが買収しCakewalkに社名を変更。さらに2013年にあのギターのGibsonに売却、Gibsonの経営破綻から開発や生産が終了になったところを、2018年にシンガポールのベンチャー企業が救いあげてフリーウェアとして奇跡の復活を遂げた。

3万円だったか5万円だったか忘れたが、SONARを購入して使っていた自分は「えっ!?」と驚いた。フリーウェアとして提供されているDAWも多いが、最強といえる。なぜなら、もともと販売されていたパッケージ製品だからだ。さまざまなDAWを試用してきたのだけれど、インターフェースが使いやすくて愛用していた。

このBandLabには、SONARの時代からTTS-1というプラグインのソフトウェアシンセサイザーが付属していた。

スライダーが並んだミキサーのような画面に戸惑うけれど、プリセットの音が豊富で、256+9ドラムセットある。これさえあればひととおりの楽曲ができる。音を細かく変えることができないことが難点といえば難点なのだが、TTS-1があればこそのBandLabだった。

ところが先日、久しぶりにBandLabを起動して、アクティベーション(アカウントの有効化)を求められたので行い、ついでにアップデータをダウンロードして更新、起動してみたところ、TTS-1が消えていた。あれっ!?

慌ててネットを検索してみると、あらゆるBandLabユーザーからの阿鼻叫喚で溢れていた。というのは言い過ぎだけれど、どうやら最新バージョンではTTS-1はバンドルされなくなったとのこと。今年の3月ぐらいから仕様変更があったようだ。面倒くさくてアップデートせずに使っていたので、ぜんぜん知らなかった。

TTS-1はRolandという会社の製品であり、サポート終了でバンドルされなくなったらしい。サポート終了か。やれやれ。2025年問題をはじめとして、サポート終了が巻き起こす問題は数えしれない。

dllというファイルをいじれば、まだ使えそうであり、ファイルを探したところみつかった。しかし、コマンドを打ち込んで有効化することに何となく躊躇している。

ちなみに現在DTM制作用のPCは、マウスコンピューターのDAIVというばかでかいクリエイターパソコンである。ほとんど10年使ってきた。さんざん駆使したにも関わらず、まったく壊れない。素晴らしい。乃木坂46を広告に起用しているからファンというわけではないのだが、チーズのロゴやブランド戦略も洗練されている。

富士通やダイナブック、あるいはHP、DELLなどのメーカーもいいけれど、マウスコンピューターを高く評価したい。凄い会社の優れた製品だと思う。評価したいのだけれどWindows11の条件には合わないため、長年の相棒だったこのマシンもサポート終了となり、そろそろおさらばだ。

AIの席巻に比べたら地味な変化かもしれない。しかし、時代は変わるのだな、と思った。

思い起こせば、ビンボークリエイター(自称)として矜持を正して、お金をかけずに、どれだけクオリティの高い作品ができるか、ということに挑戦してきた。

驚くことに世の中にはフリーのソフトウェアやエフェクターのプラグインの開発者がたくさんいる。どうしてこれをタダで配布しちゃうのかなと思うのだが、ありがたく頂戴し、開発者のみなさんをリスペクトしてきた。インターネットの海を泳ぎ回れば、信じられないような宝物をみつけることができた。それらを組み合わせて音楽を創ってきた。

音楽制作をするのなら、Windows環境はPro ToolsやNUENDO、Mac環境はLogic Proが王道であり、しっかりやろうとするのであればツールから揃えなさいということも分かる。拾ってきた2万円のギターと老舗メーカーの100万円のギターでは、そりゃ出る音が違うだろう。

しかし、ぼろぼろの無名のメーカーのアコギを路上で弾くひとの音楽にこころを打たれることもある。ブリコラージュではないが、手持ちのものを組み合わせて、どれだけ素晴らしいことができるか、ということを目指した。反逆精神というわけではない。要するにビンボーだからだ。

今後どうしようかな、と考えている。馴染んだパソコンはもちろん、ソフトウェア自体も使えなくなる。アドビ製品も厳しい。

ライフスタイルをまるごと変える必要があるのかもしれない。新しいパソコンを手に入れて、まっさらな状態でDTM環境を構築するのは、考えただけでも気が遠くなる。ミニギターを爪弾いているだけで充分という気がする。しかし、いま猛暑にまいっているだけで、秋から春の季節になれば、少し前向きになれるかもしれない。

BandLab自体は、有償のソフトウェアへの復帰を目指しているようだ。もともと有償版のSONARを使ってきたので、応援したい。

最後にちょっとだけ呟いておくと、いまどちらかといえば音楽制作よりロボットに関心が強まりつつある。音を組み立てるのも楽しいけれど、ロボットを組み立てたりプログラミングしたりするのが面白そうだ。といっても、そのためにも労力やお金や時間が必要になる。いろいろ悩ましい。

2024.08.17 Bw


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