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7days 7points

フラムvsシェフィールドUは1-0でフラムが勝利。エバートン戦から7日間で3戦、2勝1分で勝点7を獲得した。これで勝ち点を22まで伸ばし、暫定ながら17位との勝ち点差を3とした。残留も現実的な目標として見えてきた。フラムはこの1週間で進化した。さらにいいチームになり、面白い試合を見せてくれている。この1週間のフラムへの記録を残しておきたい。

4-4-2の採用

この1週間で、一番大きな変化は守備時に4-4-2をベースに変更してきたことだ。この3戦、メンバーは違えど、一貫して4-4-2で構えて守備をしていた。5-3-2ではディフェンスラインの前、相手の中盤サイドの選手を捕まえ切れず、フリーでクロスを上げられるなどピンチを招くことが多かった。パーカー監督もその点は改善すべきと考えていたのだろう。4-4-2へ変更し、中盤を4枚に増やして素早いスライドでピッチの横幅をカバーするようにした。5-3-2で戦っていた時に比べて、サイドからフリーでクロスを上げられるケースは減少している。

また、4-4-2になったことでピッチにキレイな3ラインが見られるようになった。2トップがアンカーポジションの選手へのパスコースを切りながらCBへプレスをかける。中盤の4枚はラインを形成して縦パスを防ぐ。ボールがサイドに展開されると、全体が素早くスライドしつつSHが相手SBの縦のコースを塞ぐようにコースを取りながらプレスをかけて前進を阻む。CHも連動して中へのパスをカットできるようにポジションを取る。2トップの後ろに中盤4枚の強力なフィルターが機能していることで、簡単にはボールを前進させない守備ができるようになっている。

さらに、4-4-2にしたことで、サイドの選手はサイドのケア、中央の選手は中央のスペースを埋める、と各選手のタスクも整理されたように思う。アンギッサやロフタスチークに見られた誰にマークにつき、どのスペースを埋めればいいか迷っているようなプレーは消えた。この1週間は、左右のSHは中盤のラインを形成して相手SBへのマークが基本的なタスクになっていたように思う。ロフタスチーク、ルックマン、カバレロがSHで起用されていたが、守備のフェーズでポジションを取れなかったり、相手SBをフリーにする場面はほとんどなかった。

退かぬ 媚びぬ 省みぬ

この1週間でフラムが一番変わったのは、「姿勢」だ。試合をコントロールしようという姿勢を見せている。4-4-2の採用も、守備フェーズの整理と強化という側面もあるが、より高い位置で相手のボールを止め、出来るだけ相手陣地に押し込んで試合を進めようという意図を感じる。そして、ボール保持にさらに意欲を見せている。

攻撃のフェーズでは、SB+2CBで3バックを形成して3-2-5へと変化し、後方での数的優位を確保してボールを保持しながら前進しようとする。相手が3バックに3トップをぶつけてきても簡単には蹴り出さず、SBを下げる、CHを下げるなど二の矢、三の矢を繰り出し数的優位を確保して後方でボールを保持することに挑戦している。アンデルセン、オラ・アイナ、アダラビオヨ、ハリソン・リードの4枚よる後方でのパス回しは安定しており、必要に応じてレミナ、テテらが後方でのポゼッションの確立に手を貸す。

ポゼッションを確立し、相手がハイプレスを諦めミドルプレスに移行すると、後方でパスを回しながらその時間を使って陣形を整える。そして、CBのドリブル、鋭い縦パス、ショートパスによるコンビネーションでボールの前進を図る。FW、SH、ビルドアップに参加しなかったSBの5人が相手ディフェンスライン手前までポジションを上げてパスを引き出す。特にロフタスチークはテクニックとフィジカルを武器にライン間でボールを受けても奪われない。チーム全体を押し上げる時間を作っている。ルックマンはボールを受けると積極的に1on1を仕掛ける。この1週間のプレーを見ると、アグレッシブさはさらに増してきている。

さらに裏へのロングボールも使い始めた。シェフィールド戦の得点シーンは後方でポゼッションを確立して、フリーになったアンデルセンの右足から放たれた低くて速いバックスピンのかかったボールに合わせて浅い相手ディフェンスラインの裏をルックマンが取ったところで勝負あった。

ボールを奪われても、多くの場合は陣形を整えることができているので、フラムの選手間の距離は近くなっている。ボール保持者に近い選手が素早くプレスをかけ、即時奪回を狙う。一番近い選手がボールにアタックして、周りの選手が囲い込む。ボールの奪回が無理でもプレスをかけ続けてカウンターを発動させない。相手から時間とスペースを奪うことに成功しているので、後方に残っているCBもパスコースを読み切ることができ、思い切ってパスカットを狙いに行くことができる。厳しいプレスで相手にロングボールを選択させることができれば、アンデルセン、アダラビオヨの長身CBがボールを回収する。

プレスを剥がされ、うまくボールを逃されても、その先の選手がボールの前進を阻むコースにポジションを取って前進を遅らせる。その間に4-4-2の陣形を組んでミドルプレスに移行する。ミドルプレスは前述の通り。相手がバックパスを選択したらチーム全体を押し上げ、前線はマンマーク気味にハイプレスをかける。相手から時間とスペースを奪って、無理なパスやロングボールを蹴らせて、中盤やCBがボールを刈り取る。

ボール保持に意欲を見せ、相手ボールになったらアグレッシブに奪いに行く。ハイプレスを剥がされて退かざるを得ない状況ではゾーン1まで下がってブロックを敷いて守備を行うが、自分たちからゾーン1まで下がるシーンは少なくなった。相手がエバートンだろうが、シェフィールドUだろうが、この姿勢は変わらなかった。ボールを保持する。奪われても、奪い返す。さらに感心したのは、その姿勢を試合が終わるまで貫き通し始めたことだ。エバートン戦は、最後は引いて構えたが、バーンリー戦、シェフィールドU戦は後半アディショナルタイムでも相手陣地に選手とボールを送っていた。最後までアグレッシブに試合を支配しようという姿勢が見られ、さらに好感が持てるチームになった。

守備ラインの裏を狙え

そして、フラムをさらに魅力的にしているのは、裏抜けの意識が強まったことだ。以前のフラムは、ボールは前進させられるのだが、相手ディフェンスライン前で攻撃が停滞していた。裏抜けを狙う選手がほとんどいなかったからだ。しかし、この1週間は、前線に出ていく選手に裏抜けを狙う意識が徹底されていた。パーカー監督が得点を獲るためにトレーニングで鍛えてきたはずだ。

ロフタスチークが中央から斜めに走って裏抜けしてサイド深い位置を取る。カバレロがカウンターからSBの裏に走り込む。ルックマンがアンデルセンのロングボールに反応してディフェンスラインの裏を取る。オラ・アイナがルックマンとの連携で左ハーフスペース最深部からクロスを上げる。などなど、この3試合、至る所でディフェンスラインの裏を狙って動き出す選手と裏を狙ったパスを見ることができた。この3試合は、得点の匂いがし続けている。特にエバートン戦は単に裏抜けを狙うだけでなく、ハーフスペースの最深部に狙いを定め、そこからのショートクロスを徹底して狙っていた。このルートはマンCが最も得意としている得点パターンだ。もっと意識して狙って行ってもいい。

そして、ロフタスチークやルックマンには、オフザボールの場面で、もっとゴール前に顔を出してシュートを狙いに行ってほしい。特にロフタスチークは鬼フィジカルがあるのだから、サイドからのクロスに飛び込むだけで相手はかなり嫌なはずだ。自ら点を取りに行って欲しい。

さらに言うなら、サイドで裏を取って抜け出すなど、サイドからクロスを上げるチャンスは多い。現状では、そこでクロスを上げずにボールを下げることが多いが、中に人数が揃っているケースでは思い切ってクロスを上げていいと思う。マッジャ、ロフタスチークのフィジカルは相手にとって脅威になるはずだ。試してみる価値はある。逆サイドの選手まで飛び込んでくればさらにシュートチャンスは広がる。ハリソン・リードやレミナ、状況によってはCBのうち一枚がかなり高い位置まであがっている。クリアボールをカバーする準備もできている。

パーカー監督の熱意

パーカー監督は選手たちと年齢が近く、2部リーグに降格しても監督を続投して選手とともにプレミア昇格を勝ち取った、選手たちの兄貴分のような存在だと思っていた。もちろん、そういう側面もあるだろうが、シーズン序盤は新戦力のフィットが遅れたり、他チームとの戦力の問題などから5-3-2で守備意識を高めて戦った。勝てなかったが、引き分けで勝ち点をできる限り拾ってきた。そして、年末年始くらいからボール保持に舵を切ってきた。昨シーズン、フラムが取り組んできたスタイルだ。ここに4-4-2への変更とミドル〜ハイプレスを整備して相手陣地に押し込んで戦う術をチームに落とし込んだ。得点力を上げるため、裏を狙う意識を徹底して植え付けてきたのだろう。攻撃のフェーズで相手ディフェンスラインの裏を取るシーンが目立ってきた。さらに、シェフィールドU戦では、バーンリー戦であわや失点というシーンを作られたサイド深い位置からクロスを上げられた時のディフェンスラインのポジショニングが修正されていた。(シェフィールドU戦では、ディアゴナーレのポジションを取り、自分よりボールに近い選手の背中を守ることができていた。)改善が必要な点には素早く手を打ってきている。
今シーズンのプレミアはミッドウィークにも試合が組まれ、厳しいスケジュールが続いている。この1週間は選手を入れ替えながら、どの試合もチームとしてボールを保持して戦う姿勢を見せてきた。選手起用の柔軟さと戦術をチームに落とし込む手腕は評価されて然るべきだと思う。
シェフィールドU戦の気合終了と同時に叫び、ピッチに出て選手を労う姿を見て、ますますパーカー監督が好きになった。フットボールに最大限の熱意を持って取り組んでいると思う。アルテタやピルロだけでなく、ここにも素晴らしい青年監督がいる。
今週はミッドウィークに試合はない。これで1週間休める。コンディションを回復させ、次はどんな試合を見せてくれるのか。1週間、楽しみに待ちたい。

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