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コッパイタリア準決勝 2ndレグ イタリアダービー(away) 〜アッレグリの本質

コッパイタリアの準決勝は0-1で敗戦。残念ながら決勝進出はなりませんでした。5-3-2で堅く守るインテルを崩すのは骨が折れますが、勝てない相手ではなかったので非常にもったいない敗戦となったように思います。互いに連戦を重ね、コンディションは不十分だと見えました。正直、いい試合とは言えない内容でしたが、アッレグリの考えと課題が垣間見えたように思います。試合内容は見返す気も起きないものでしたので、見ていて思ったことを書いておきます。

リレーショナルプレー?

この試合、インテルは何もしていません。5-3-2で普通に戦っただけです。しかし、ユベントスが突然ボヌッチを起用したり、オフサイドラインを見誤ったり、パスミスやコンビネーションがうまくいかなかったりして自らインテルに決定機やカウンターのチャンスをプレゼントしまくった結果、インテルに軍配が上がりました。なんならユベントスは八百長もしくはわざと負けようとしていると疑われてもいいレベルの試合だったと思います。

注目したいのは、ディマリア、デシーリオに加えてラビオまでも右サイドに集まってパス交換をしていたこと。本来ならラビオはゴール前に飛び込んでほしいところにも関わらず、です。そして、試合後アッレグリは試合について「ゴールに向かうシュートは撃てなかったが、全体的には良いゲームだった」とコメントしています。また、アッレグリは常々攻撃については選手のクオリティに委ねられているという趣旨の発言をしてきました。そして、「ディバラやロナウドらクオリティの高い選手にボールが渡れば彼らに任せる。他の選手にはサポートに入るように指導する。」というようなコメントも残しています。つまり、攻撃については選手個々の判断に任せているのだと思います。選手同士がその場で判断し、プレーする。互いの意思疎通を図り、コンビネーションや個人技で局面を打開し、ゴールへ辿り着く。攻撃の最後の局面についてはアッレグリはそんなプレーを思い描いているように思えます。もしかしたら、最近話題のリレーショナルプレーを早くから取り入れていた、注目していた監督であると言えるかもしれません。

ただ、問題なのはそのリレーショナルプレーがこの試合においてはほとんど発動することがなかったことです。いや、むしろワンツーのパスや落としのパスの意図が合わず、不用意なボールロストを連発してインテルにチャンスをプレゼントしてしまっていました。連戦の疲労もあって単純な技術的なミスが出てしまったということも考えられます。しかし、選手が互いに両手を広げて自分の意図とは違うということをアピールしていた場面もありました。いわゆる「同じ絵を描く」ことができていない可能性があります。

アッレグリの本質

そう考えてくると、アッレグリの指導方針に合点がいくところがあります。アッレグリはとにかく守備を重視します。「カンピオナートは守備で勝つもの」と公言して憚りません。今では当たり前になった可変守備もアッレグリが有名にしたと言っていいでしょう。ユベントスの監督に就任した1年目、ビダルをトップ下に置いて攻撃時は4-3-1-2、守備時はビダルを下げて4-4-2で守るシステムを構築しました。翌年はポグバを中心に4-4-2と5-4-1を可変させてペップバイエルンと渡り合いました。他にもウイングバックの上下動によって5-3-2と4-4-2を可変させる守備も、最近ではアッレグリユベントスがいち早く導入していました。様々な守備の方法論を打ち出し、チームに落とし込んで、堅い守備を誇るチームをピッチに送り出してきました。

なぜ、そこまでして守備の構築に力を入れるのか。

それは、アッレグリの哲学から考えるとクオリティのある選手が得点を取れるかどうかはわからないから。だからこそ守備で失点をできるだけ減らしておくことで少なくとも引き分けに持ち込んで勝ち点を積み上げていくためだと考えられます。そして、攻撃に関しては選手のクオリティを信じて任せる。アッレグリの指導にはこのような方針が見え隠れしているように思います。

アッレグリ・ユベントスの課題

アッレグリは守備の構築に関してはヨーロッパでも随一です。ビルドアップのメカニズムに関してもしっかりと調整しています。ボール保持率が低いため辛辣な評価を受けていますが、それはネガティブトランジションにおいてボールの即時奪回を最優先しないプレースタイルを選択し、縦に速いダイレクトな攻撃を仕掛けているからです。必然的に相手のボール保持は安定し、ユベントスがボールを保持する時間は短くなるため、結果として相手の保持率が高くなります。これはゲームプランの差異の問題であり、良し悪しの問題ではないでしょう。好き嫌いの問題であり、最近の流行に乗ってはいないため、嫌いなスタイルの監督であると評価されてしまうことが多いのだと思います。

ただ、昨季及び今季のアッレグリは以下の点において批判されて然るべきではないかと思います。それは、選手を入れ替えすぎることです。

選手個々のクオリティに期待するとは言え、現代サッカーにおいて1人で点を取ってくるスーパーな選手はほとんどいません。メッシとクリスティアーノ・ロナウドくらいでしょうか。ロナウドが在籍していた18-19シーズン、アッレグリのチームは恐ろしい速度で勝ち点を重ねていました。ロナウドの決定力とアッレグリユベントスの守備力の相乗効果で負けないだけでなく連勝街道まっしぐら。他のチームを寄せ付けず圧倒的な強さでスクデットを獲得してしまいました。しかし、ロナウドがチームにいることの方が稀です。何人かの選手が互いに協力し、コンビネーションの中からチャンスを見出すことの方が現実的でしょう。となると、できるだけ多くの時間共にプレーし、互いの特徴や意図を理解し、コンビネーションを深めていく必要があります。しかし、4月のスケジュールを見ても分かるように、週2試合が当たり前の時代に十分なトレーニングができるわけではありません。試合と試合の間の時間はコンディションの回復に充てることも多いでしょう。そうだとすると、選手同士の理解やコンビネーションを深めるのは試合を通じて行うことも大切だとおもいます。週2回行われる試合もトレーニングの一部として考え、試合を通じて連携を深めていく必要があるのではないでしょうか。しかし、アッレグリのように毎回スタメンを入れ替え、時にシステムも変更していたら、特定の選手間の連携を深めることは難しくなるでしょう。今季の例で言えば、ディマリアからするとブラホビッチ、ミリク、キーン、キエーザと多くのフォワードとコンビを組んでいます。例えば、ブラホビッチとディマリアが連携を深めるにはこの2人をある程度固定してプレーさせる必要があるのではないでしょうか。一昔前のリバプールはマネ、サラー、フィルミーノの3トップがユニットを組み、多くの試合で揃って先発していました。他にも、エンリケ・バルサのMSNや、レアル・マドリードのBBCなど、ユニットとして揃って先発起用されて連携を深めて偉大な結果を残してきた先人たちがいます。アッレグリ・ユベントスも5連覇時代はイグアインとディバラ、ロナウドとマンジュキッチは多くの試合でユニットを組んで起用され、得点を量産していました。控え選手のマネジメントが難しくなるという側面はあるかもしれませんが、やはり攻撃を選手のクオリティに任せてプレーさせるならできるだけ多くの時間を固定された選手たちに与えるべきではないでしょうか。

しかし、この点についてはアッレグリにも同情の余地はあります。昨季は、おそらくチームの中心に据える考えだったディバラが度重なる負傷で離脱を繰り返してしまいました。ディバラを中心に連携を深めさせるにも、その中心となるディバラが不在では不可能でした。ディバラの代わりにと高額の移籍金を払って獲得したブラホビッチも今季は何度か離脱しています。アッレグリが絶大な信頼を置くディマリアは34歳という年齢から週2試合のスケジュールの中、常に先発起用というわけにはいきません。主力のケガやコンディション不良に悩まされ、選手を入れ替えざるを得なかったという背景はあります。それでチャンスを得たミリクやキーンも序列を覆すほどの結果を残したわけでもありません…。

ユベントスの復活のカギは、アッレグリが固定して先発起用できる前線のユニットの構築なのかもしれません。これまで、ユベントスが強かった時期は軸となるCFが君臨していました。ブラホビッチにかかる期待は非常に大きいと思います。今季はおそらく、ブラホビッチに頼る他ないでしょう。ELを制覇するには、最近の試合で使われていたブラホビッチ、ディマリア、キエーザのユニットの連携を深めることが重要なファクターになるような気がします。そして、来季はブラホビッチを継続するのか、新たな人材に活路を見出すのか。移籍市場での動きも気になるところです。

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