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自己免疫疾患(指定難病)とともに生きる (13) - JANGAN MALU-MALU! Living with an Autoimmune Disease

【さよならドビュッシー】

 私が今、とても快適な入院生活をおくることができている要因の一つは、病院内図書室が非常に充実していて、好きなだけ読書ができることである。これまでの入院生活32日間で16冊、2日に1冊のペース、こんなに本を読んだのは何年ぶりだろう。

 面会に来た友人が勧めてくれたミステリー小説、中山七里『さよならドビュッシー』(宝島社文庫)を、病院内図書室で見つけ読み始めたところ、一気のその世界にはまった。
 初っ端から、16歳の主人公の身に次々とショッキングな出来事が襲い、火事で全身大やけどの大けがを負う。それでもピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。そのピアノの先生は、突発性難聴を抱えながら、気鋭の天才ピアニストとして活躍している。けがや病気を抱えながら前に進んでいく姿勢が、今、皮膚筋炎の治療真最中の自分に重なり、主人公やピアノの先生のことばが共鳴し、心にしみる。

「それでも今、あたしはここにいる。(中略)あたし自身が望む未来をあたし自身の力で獲得するために、ここにいる」(p.368)
「本当のあたしはずっと前から胸の奥底で裸身を晒して訴えている。でも、とても言葉にはできない。だからピアノの音に思いを託そうとしている」(p.371)
「大抵の災難は運命みたいなものだからね。その運命とやらに一矢報いるなんてちょっと痛快だろ」(p.259)

中山七里『さよならドビュッシー』(宝島社文庫)

 シリーズ続編が楽しみになった。

【特定医療費(指定難病)受給者証申請】

 病院内図書室で最初に借りた本は、指定難病当事者である著者の、浅川透『難病患者の教科書』(日本ブレインウェア)であった。この本を読んで、自分が突如おかれることとなった指定難病当事者の状況がよく分かり、公的な支援もたくさん用意されているが、支援を受けるためには自ら調べて申請する必要があり、それに気づかずもしくは手続きの煩雑さのために支援を受けられていない当事者も多くいることを知った。

 指定難病と診断され、病状の程度が一定程度以上あるいは医療費が高額に該当する場合は、国の難病法による医療費助成を受けることができるが、そのためにはまず、特定医療費(指定難病)受給者証の申請手続きを行い、認定を受ける必要がある。私の場合は、皮膚筋炎の病状の程度が一定程度以上に該当するため、入院中に早速申請手続きを始めた。

 特定医療費(指定難病)受給者証の申請手続き方法は、都道府県ごとに定められているが、東京都の場合は在住の市区町村の窓口へ申請する。今の時代、インターネットで調べれば、申請に必要な書類の様式をオンラインですべてそろえることができ、病院内のコンビニでプリントアウトもできるので、入院中でも非常に便利である。ただ、普段からインターネットの使用や役所の手続きに慣れていない当事者にとっては、役所の窓口に出向かずに入院中に自分ですべての書類を整えるのはかなりハードルが高そうだ、とも感じた。
 まず、申請に必要な書類として、東京都の場合は18種類の書類が並んでいるが、そのうち自分が該当するもの、本当に必要な書類がどれかを特定するのに、かなりの読解力が必要だ。私の場合は、必要な書類は18種類のうちの5種類だった。また、都のページに書かれている情報と、市のページに書かれている情報が、よく読めば同じことが書かれているのだが、並び順や表現が微妙に違っていて混乱する。
 私が実際に準備した書類は、以下の通りである。


医師に依頼して作成してもらうもの:

  • 臨床調査個人票(診断書)

自分で準備・作成するもの:

  • 特定医療費支給認定申請書(様式はインターネットからダウンロード)

  • 個人番号に係る調書(指定難病用)(様式はインターネットからダウンロード)

  • 公的年金等の収入等に係る申出書(様式はインターネットからダウンロード)

  • 健康保険証の写し

  • マイナンバーカード原本

  • 委任状(代理の方が申請する場合)(様式自由、自分で作成)

  • 窓口にて申請手続をする代理の方の身元確認書類


 私の場合、医師に依頼した診断書も数日で作成してもらえ、自分で準備・作成する書類も入院中にすべてそろえることができたので、早速パートナーに市役所窓口での代理申請をお願いした。
 申請が早ければ、実際の医療費助成の受給開始が早くなるので、該当する当事者の皆さんにはなるべく早く手続きを開始することをおすすめしたい。もちろん、治療開始の当初は治療に専念するために、それ以外のことは考えられない状況もあるだろう。このような申請手続きは、私にとっては得意分野であるという自覚があるので、慣れていない当事者をサポートできることがあれば、ぜひ力になりたいと思う。それも、指定難病当事者となったことを活かして、私に貢献できる自分らしい人生の一部にしていきたい。

(つづく)

(カバー画像:病院内図書室で借りて読んだ本の一部)

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