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【写真】おとなりさんが見ている風景。

 物語の舞台は、高知県香南市夜須町の小さな港町。
 父娘が切り盛りする食堂、花鳥風月にやってきた人、去る人、新たに加わる人たちが一人称でリレーしてゆきます。
 現在、第8話では、語りがふたたび、主人公で高校生のたまきちゃんに戻り、夏の花火大会に挑むところです。
 特別なことは何も起きない。そんな日々にこそある、光の部分を掬い取りたい。
 そんな気持ちでした。

 さて、ずいぶん好評いただきつつ、間もなく(期限あり案件だったこともあって)、残すところあと二話で、いよいよ本編が終わりになる、「おとなりさん season2 海が見える食堂から」。
 その舞台になっている、所謂、「聖地」を、書いてる本人が巡礼して参りました。巡礼というか、ぶらぶら、でれでれとしていましたけど。
 舞台知りたい。
 どんなところ?
 四国のどのあたり?
 そんな質問を寄せてくださった方々、梅雨の晴れ間を狙って行ってきましたよ。暑かったよ。ビール飲みたいのに、ハイボールまで進みたいのに、生憎のぼっちドライブでしたよ。

高知東部を走る、
タイガース列車。
高知は安芸市のタイガースのキャンプが、
年間観光収益の大部分だとか。

 主人公たまきちゃんが、「あの黄色い列車を見かけたら、その日はきっといい日になるって父ちゃんが」の、ラッキー号。
 ちなみに。
 電車ではなく、列車としたのは、これがディーゼル車だからなんです。電気鉄道じゃない。なので、電線がありません。
 僕は阪神タイガースのファンなので、昨秋は大喜びでキャンプ見学に行ってました。
 たまきちゃんは、これに乗って、お隣の南国市にある、高知農業高校に通っているという設定です。

高知出身の漫画家、
やなせたかしさんによる、人魚。
各駅ごとに、土地の特性をキャラにした、
やなせたかしさん作品が立っています。
お隣の香我美駅には、
有名なジェラート店も。


 土佐くろしお鉄道、ごめんなはり線(御免、奈半利)、夜須駅(やすえき)。
 高知県香南市夜須町。
 花鳥風月の最寄駅は、この夜須駅としています。人魚伝説があるらしく、物語のなかに投入しようと考えてましたが、あえなくパス。
 (個人の)趣味性強すぎるよな、という、冷静な判断(←?)。あかりさんのセクシー人魚コス見たかった。


初回、その冒頭で、
ソースのにおいにお腹を減らした、たまきさん。
ほんとに駅にある、たこ焼き屋さん。
向かいの道の駅にカレー屋さんもあって、
美味なのです。
高知県の観光地にはもれなく立っている、
坂本龍馬像もあります。


駅から見下ろす道の駅。
ヤシのアプローチの向こうは、
太平洋です。
レストランやお土産物屋なども。


県最大の海水浴場、
ヤシィ・パーク。
木陰のベンチで、
お昼におにぎりとかサンドイッチを食べてます。
ビールもね。
水着女性の見学も楽しみ(笑)。

 そうそう、この夜須は、ブランドメロンの産地。暑い地域だけあって、みかんなど、柑橘も盛ん。
 ワイナリーには、みかんワインなんてのもありました。
 夜須町をふくむ、香南市は、にらの生産量が日本一なんだって。なのに、作内では、豊さんが、いつも、にらを買い忘れています。

たまきと右京くんが知り合った、
津波避難タワー。

 高知の太平洋サイドは、あちらこちらに、こんな避難タワーがあります。ここは観光地だけあって塗装されていますが、ほとんどは、剥き出しのコンクリート、鉄骨の構造体。無機質なそれの不穏な気配は、災害と隣り合わせの地域だからこそ、と、毎日のように感じます。
 この中には入れませんが、雨宿りくらいなら。日陰でお昼を食べている人を見かけることもあります。年末にはお餅つきをやっていたりね。


垂直に立ち上がる道。
手結(てい)の可動橋。
左手に漁港があり、右には太平洋が広がります。
SF的な景観は、何度見ても興奮です。


加工なしで、この色。 
缶詰でビールを飲んでいる
おばあさんと猫さんの姿も。
エメラルドグリーンって、こんな色ですよね。
橋が立ち上がると、港内の船が太平洋に出航です。
心安らぐ、大好きな風景。
このあたりは猫さんたちもたくさんいます。
可動橋を裏から。

 この撮影は、暑い暑い日のこと。
 (暑くて、嫌になっちゃって)車から降りずに撮影。
 この漁港に、花鳥風月や、周辺の商店があるという設定です。なので、釣り客や漁師さんのお客様が多いはず。
 いまはたぶん、店舗らしい店舗はないと思います。
 書道教室とか、かつて、商店だったであろう、元店舗、お寺さんや、診療所があります。きっと、このあたりで、生活が完結していたのでしょうね。
 ちなみに。物語のなかにも書いていましたが、このあたりのお家は、表札に船の名前も記してあることが多いようです。「龍神丸 沢渡」みたいに。漁村ならではなのかも。


塩谷海岸近く、
八大龍王宮。
背景も相まって、どこか、
ジブリ的。

 漁港、漁村を離れた手結山の山頂付近には、鳥居があります。この先には香南学園という、専修学校が、お隣の安芸市へ進む国道側には、リゾートホテルも。
 ここには小さなお宮と、灯台。その先には階段があって、ひとけのない海岸に降りることができます。
 たまきちゃんや、父親の豊さん、たまきの親友になったあかりさんが、それぞれに願いをもって、ここを参拝する元日の話も考えています。
 それはまた、いずれ。


塩谷海岸、手結の夫婦岩。
いまは新しいしめ縄になっています。


 これは、2021年ごろの写真で、この日は台風。
 海に入っていたら、流れてきた流木で足を切り、酷く流血しました。指先の皮がべろっと。
 noteを始める少し前のことでした。


塩谷海岸は断崖絶壁。
真上から見下ろす太平洋の美しさ、雄々しさ。
地球は丸いのだと実感します。
ちなみに、このあたりは、
別荘の多い、景勝地です。

 なんだか、愛する地元の風景のように語っていますね。
 でも、僕は移住者なのです。二年前、この景観、この香南市とその海に恋をして、えいや、と、関西から移住してきたんです。
 いまは、はっきりと、愛する土地。生まれ育ってはいないから、地元とは言えないけれど、これから、物語をつくるときは、きっと、この風景や、この地域を舞台にするんだろうなって思う。
 でも、高知の風景って、朗らかすぎて、内省的な物語や、悲しい物語には向いていないかもしれません。
 高知県は東西に広いので、まだまだ、まるで知らない。これから、行ってみたいと思っています。室戸岬、足摺岬、柏島、宿毛市……やっぱり、海がいい。美しい海を旅していたい。
 これから、日本中のあちこちに心の故郷ができればいいのにな、と、思います。

 ちょうど、この「おとなりさん2」を書き終えたころのこと。
 この物語は、そのイメージとして、主人公、沢渡たまきを當真あみさん。父親で、花鳥風月の板前を松重豊さんだと書いた記憶があります。特定の俳優さんにしておくほうが、声やしゃべり方を想像しやすいので、セリフを書きやすいんです。
 今回、物語に花を添えてくれて、主要人物になった、仁茂あかりさんは、本田翼さんをイメージしています。
 近年の本田さんの、飾りのない、くしゃっとした、ポンコツな笑顔を見ると(←誉め言葉ですからこれ)、すごくあたたかい気持ちになります。

 それからそれから。
 友人から、「ビリースタッフとかいるの? チームビリーとか? 一人で書いてるなんて信じられん。超獣ギガ(仮)と、この、おとなりさんを同時に? そんなのある?」って。
 友達だとか、Twitterでも訊かれたのですが。
 ばっちり、一人で書いてます。作業そのものは、わりと孤独感ありますけど、そんなものだと思って。団体行動不可の人間なので、単独行動くらい得意にならないと。
 警察や自衛隊の組織図や、ヘリの個体名称を調べたり、そのノイズ音とか。そんなことしながら、おとなりさんだって書いてます。書いた途端に忘れるけど。
 思い出すと、登場人物のことを、古い友達のことのように感じたりします。

 そんなふうに、なるべく、面白いものをお届けしようと思ってます。いま、がんばっておけば、あとが楽になりそうなので。
 noteに載せるかどうかは未定ですが、夏の間はあんまり凝ったものを書けそうにないので、六万〜八万字ほどの中編をひとつ書こうかと思っています。
 それでは、本日はここまで。ビリーでした。またね。

P.S.
 しばらく、noteの「創作大賞」に合わせた投稿になります。
 今週は、7月3日月曜日に「超獣ギガ(仮)」の第24話、7月5日水曜日に「おとなりさん2」の第9話、七夕にあたる7月7日金曜日に「おとなりさん2」の最終回になる、第10話をお届けする予定です。
 楽しみにしていてください。

ほんじゃのー。

photograph and words by billy.

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