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【怪談】 物件の怪物 〜 親族って誰 〜

それは今年の春頃、まだ肌寒い日の事。コラボビール発売のタイミングと同じにして不動産から「新たに良さそうな物件が出た」との連絡がありました。

元々飲食店不可だったというその物件、借り手がなかなか見つからないという経緯もあり、不動産の説得を経て飲食店鋪もOKとなった掘り出し物件でした。

早速内見の予定を取り付け、現地へと赴きました。

その日はちょうど、コラボビールを提供いただく飲み屋さんとの打ち合わせがあり、そこのオーナー、仮にNさんとしておきましょうか。そのNさんにも同行いただき物件を見に行きました。

中を見たところ、広さ的にもちょうどよく、商店街沿いに位置しており立地も申し分ありませんでした。

ようやく良い物件に巡り逢えたと安堵した私は、後日正式に申し込みをし、その数日後には保証会社による審査も無事通過。

コラボビールも好調だったこともあり、トントン拍子にうまくいくかもなんて思っていた、そんなある日の昼過ぎの出来事でした。

トゥルルルルルル、トゥルルルルルル、トゥルルルルルル

乾いた電話の音が鳴りました。

「やだなぁ〜 怖いなぁ〜」

そう思いながらスマホの画面を見てみると、不動産からの着信でした。

「へんだなぁ〜 おかしいなぁ〜」

そう思いながら私は電話に出ました。

「もしもし もしもし」

その時、受話器から身の毛もよだつような言葉が聞こえたんです。

「非常に申し上げ難いのですが、実はあの物件ダメになっちゃいました」

「えっ」と私は一瞬凍りつく。

寒気を感じ、全身に鳥肌が立っているのがわかる。

私は恐る恐るこう聞き返しました。

「そ、それはなぜでしょう・・・?」

ゴクリッと唾を呑み込む。

「オーナーからの承諾は得ていたのですが、急にオーナーの親族の方から、やっぱり飲食はダメと。上に人が住んでいるからうるさくなる業種はやっぱり嫌だそうです。こちらとしても業種に関しては再三話し合って承諾いただいたということを訴えたんですが・・・」







ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ

私はそこで意識を失いました。

今思えばあの物件は本当にあったのかどうか。

物件を見つけたいと願った私の見た幻だったのかもしれません。

はたまた物件と物件との狭間、そのねじれに生じた親族という名の怪物。

物件の怪物。

これがホントの物の怪(もののけ)ってね。

※物件探しまだまだ精力的に活動中です!

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