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飼育日記「めだかのきもち」㊹命を全うする

久しぶりに卵を採取して2週間。

毎日、数匹ずつ針子が飛び出してくる。メダカの観察で、一番楽しい瞬間だ。誕生したばかりの彼らの目に、この世界はどう写るのか、想像してみる。

無防備なのにするりするりと逃げ足は速い

数匹が毎朝せっせと産み出す卵を、親メダカに食べられるままにしておくのは切ないけれど、飼育できない数になるのも無責任なので、自然に任せてきた。

2年目の今年の春、生まれた針子は全て元気な稚魚に育てようと意気込んでいたけれど、ひと月で半分ほどに、今はまたさらに少なくなっている。

「針子は死にます」

昨年検索した飼育サイトにあった言葉を改めて思い出す。稚魚まで大きくなり、さらに成魚に育つまで、様々な関門があるようだ。来春、次世代を繋ぐ成魚の数が寂しくならないように、折々に卵を採取することにした。いくつかいただいた、稚魚引き取りの申し出も追い風に。

ガラス容器に、目玉ばかりが目立つ透明なボディが久々に浮かぶ。まだ空っぽの、涼しげに透き通ったお腹を、横見で眺めるのも夏にぴったりだ。

生命力旺盛なボス♀を除いて、親しんだ初代親メダカ達が、この夏、想定よりずっと早く寿命を迎えてしまった。もっと長生きするにはどうすれば良かったのか、先輩諸氏のサイトを検索してみた。

🔎…繁殖は♀にも♂にもかなりの消耗となり、命を縮める。♂♀を分けて育てる、一匹で育てる、などすれば、寿命は確実に伸ばせる。…🔍

そんなあ。ただ長生きすればいいという訳ではない。金魚を一匹だけで飼うことを禁ずる国もあるというのに。

いつか観たドキュメンタリーで聞いた、水族館の獣医さんの言葉がある。尾鰭を病で失って、泳ぐ気力を失ったイルカ(名前はフジ)に、人工の尾鰭を作ってほしい、とタイヤメーカー・ブリヂストンに依頼をする。曰く…

「水に浮かんでいるだけで、泳げなかったら、このイルカの命を全う出来ない。」

イルカらしく生きさせてあげたい、との獣医達の熱意に応えて、試行錯誤の末、ついに他のイルカ達とシンクロして泳げる人工尾鰭を、さらに1トンの負荷のかかる大ジャンプにも耐える尾鰭も完成させた。嬉しそうにジャンプを繰り返すイルカが何ともいじらしかった。

沖縄・美ら海水族館で、2014年、フジは45年の生涯を終えている。

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急がずにゆっくりゆっくり子供時代を楽しもう

毎日抱卵していた6月までの親メダカ達は、♂も♀もすこぶる元気で仲良しだった。よく食べ、よく泳ぎ、次々と卵を抱えて現れるのを見るのが朝の楽しみだった。短くても彼らは精一杯生きた。

いかに長く生きるか、より、生き物の本性に沿って、より良く生きること、をサポートできたらいいかなと思う。

                    8.  10

    

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