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そもそも学校ビオトープとは

 3月22日(金)3学期の終業式を終え、やれやれというところです。今年度末は異動もなかったので、少し余裕があります。春休みはゆっくりしようと思っています。
 この機会に、ビオトープ、特に学校ビオトープについて考えていこうと思います。次の2冊の本を参考にしていきます。自分自身の記憶の整理という意味合いもあり、久しぶりに読み直してみます。

・杉山恵一・赤尾整志監修(1999)『自然復元6 学校ビオトープの展開ーその理念と方法論的考察ー』信山社サイテック
・山田辰美編著(1999)『子どもが変わる 学校がかわる 地域が変わる ビオトープ教育入門』農文協

 

参考にした学校ビオトープに関する書籍


 学校ビオトープが広まってきた1999年に刊行された本です。それぞれに、同僚の生物の先生(山田純稔さん)と一緒に当時関わった学校ビオトープについて執筆しました。引用する場合は、前者を『学校ビオトープの展開』、後者を『ビオトープ教育入門』とします。

まず、ビオトープとは?

 学校ビオトープについて、触れる前に、ビオトープについて少し述べておきます。

 ビオトープは、ドイツ語のBiotopeからきていて、生命を意味するBio、場所を意味するTopの合成語です。つまりビオトープは「野生生物の生息空間」のことになります。100年以上前にドイツの生物学者ヘッケルによって提唱された術語です。その後さまざまな意味がつけ加えられましたが、エコシステム(生態系)とほとんど同じ意味です。実際には、生態系より具体的なものを際して用いられることが多いです。habitat(生息地)が、より言葉としては近いと言っていたドイツの研究者がいたそうです。
          (『ビオトープ教育入門』p20 山田辰美執筆 参照)

 日本でビオトープという言葉を使う場合は、自然を復元した場所、自然を保全した場所というように、人が関わる場合が多いようです。たとえば、「トンボのビオトープ」と「トンボの生息地」とふたつの言葉を並べた場合、意味合いが違って聞こえます。「トンボのビオトープ」というと、池や沼をトンボが生息しやすく改良した、新たに造成したというようなイメージをもつように感じます。

 ただ、高校生物教員で「ビオトープ研究班」というグループを作っていますが、人の関与があまりない場合でも研究対象にしています。言葉の意味をあまり狭くしない方が活動しやすいからです。

では、学校ビオトープとは?

 では、「学校ビオトープ」とは? 学校にあるビオトープのこと? 確かにそうですが、わざわざ「学校ビオトープ」という言葉を使っているのは、そこに、それなりの意味があります。

 今までも、学校には緑地、樹木や草花を植えた場所がありました。つまり、学校緑化は多くの学校で行っていました。大きく異なる点があり,学校ビオトープを次のように言っています。

 「特に、環境先進国であるドイツの学校では、屋上緑化、壁面緑化を始め積極的に校庭内の至るところに生物の生息空間(ビオトープ、Biotop)を作っている学校がたくさん見られた。日本の学校と比べて決して広いとは言えない校庭にささやかな規模の緑地と水辺が造成されている。彼らはこれをSchulgartenと呼んで、見た目の美しさでなく、その自然の豊かさを自慢する。Schulgartenは直訳すれば『学校園』であるが、日本のそれとは明らかに異なる点が多いので、日本生態系協会の訳出した『学校ビオトープ』の語を用いることにする」

『学校ビオトープの展開』 p.65 

「身近な自然を少しでも子どもたちに経験させようと、学校内に自然のモデルをつくり出す試みが始まられ「学校ビオトープ」という名で呼ばれるようになった。」
 従来の学校緑化とは異なり、「単なる緑の量や整然とした美しさ、維持管理の容易さではなく、さまざまな生き物との触れ合いのある自然的空間であることとと自主的な活動・体験の場であることの二つを意図してデザインされたもの」

『ビオトープ教育入門』 p.7  p.10 杉山恵一

 今までの学校緑化、校庭の緑とはどのように違うか比較するとわかりやすくなります。
 学校ビオトープの意義についても触れる必要があります。特にドイツでの「学校ビオトープ」が始まった背景を確認すると、日本での学校ビオトープの問題点にも気づかれるとと思います。
 長くなったので、これらは次回に回しますので、ご期待を!






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