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うつ病患者なら知っておきたい精神科入院の基礎知識

うつ病で入院を勧められることはあり得ます。精神科の入院と聞くと何となく怖いと思っていませんか? 精神科医療、とりわけ入院には偏見をもつ人も多いです。

精神科の入院形態には3種類があり、また入院後の生活もさまざまです。今回はそんな精神科における入院について知っておきたい基本知識をまとめました。

入院形態は3種類

精神科の入院形態は『精神保健福祉法』の第5章で決められています。本人の同意に基づく任意入院のほかに、措置入院医療保護入院があります。

① 任意入院

本人の同意に基づく入院が原則である(第20条)。本人が退院したいと申し出たら原則として退院可能だが、精神保健指定医が認めた場合には本人の意思にかかわらず72時間は退院させないこともできる(第21条)。

② 措置入院

精神障害のために、入院しなければ自らや他人に害を及ぼしかねないと2人以上の精神保健指定医が認めた場合には、本人の同意なく入院させることができる(第29条)。

 ②’ 緊急措置入院

指定医1名が認めた場合に72時間以内(第29条の2)。

③ 医療保護入院

精神障害があり医療と保護のために入院が必要と精神保健指定医が認め、かつ家族等(配偶者、親などがいない場合は市町村長)の同意がある場合には、本人の同意がなくても入院させることができる(第33条)。

 ③’ 応急入院

家族などの同意が得られない場合には本人の同意がなくても72時間に限り入院させることができる(第33条の7)。

入院形態のまとめ

以上をまとめると、

精神障害のために本人や他人に危害が及ぶ恐れがある場合に限り、まずは本人の同意ありの①任意入院をうながし、本人の同意が得られなければ家族などの同意を得て③医療保護入院をうながし、それも無理な緊急性が高い場合は②措置入院

ということになります。

たとえ精神障害があっても基本的人権は当然ありますので、②や③の入院は法律に基づいて、医師(精神科医の中でも精神保健指定医という特別な資格が必要)が必要と認めた場合に限り、入院が必要か判断されます。
②措置入院と③’応急入院は、本人や家族の同意がなくても期間を限定して可能です。

入院生活は本当にさまざま

精神科の入院には大きく分けて開放病棟と閉鎖病棟があります。

❶ 開放病棟

病状が軽ければ開放病棟(病棟に鍵がかかっていない)に入院できると思います。
いずれにしても今はコロナ禍で面会が制限されている病院が多いのですが、開放病棟の場合は病院内のコンビニに行けたり少し散歩したりなどはできることがあります。

❷ 閉鎖病棟

閉鎖病棟とは、建物に鍵がかかっておりスタッフの許可がなければ出入りできない病棟のことです。病状が重い場合(自殺の恐れがあるなど)は閉鎖病棟に入院することが多いでしょう。
しかし閉鎖病棟でも部屋に鍵がかかっているわけではなく建物の中は移動できることがあります。例えばレクリエーションルームなどが設けられていて、ベッド以外の場所で日中を過ごすこともできます。

※ただし閉鎖病棟でも特に病状が重い場合には鍵付きの部屋(隔離室などと呼ばれる)に入院となる場合もあります。しかしこれは個人の自由をかなり制限することになるので、緊急性・必要性の高い状態に限って行われる対応です。

※うつ病での入院の場合、病棟の種類によらず自傷を防ぐために物品の持ち込み制限がある場合が多いです(これも患者の状態や病院の方針によってさまざまです)。

精神科入院を正しく理解しよう

よくある勘違いは精神科入院=閉じ込められる・ときには縛られる、というイメージです。

もちろん現在でも緊急性が高い場合は一時的に隔離室入院や身体拘束などの厳しい管理があることも否めませんが、近年はなるべく個人の自由・患者の尊厳を保とうという取り組みが広がっています。

入院を勧められた場合、一概に入院=怖い、ととらえるのではなく、入院後にどのような生活を送ることになるのかを詳しく聞いてみましょう。
入院生活は患者の状態と病院の方針によって本当にさまざまですので、他の人の経験談はあくまでも参考として、ご自身の主治医によくよく確認してみてください。

以下は私の個人的な意見ですが……
無理をして病状が重くなり自殺企図をしてしまうと医療保護入院になってしまう可能性があります。また病状が重いと隔離室など厳しい管理での入院生活が待っているかもしれません。
そうなる前に、まだ病状が軽いうちに入院して適切な治療を受けたほうが入院生活も快適に過ごせ、退院も早くできるような気がします。

入院=怖い、というイメージだけではなく、入院=適切な医療やサポートが受けられる、というメリットも考えつつ、ご自身の状況やご家族、主治医の意見も踏まえてよく相談して判断なさると良いように思います。

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