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あの川の向こうに

あの川の向こうに

「あれ?」

気がつくと僕は大きな川の中洲にいた。
川幅があまりに広いので、ここからは両岸が見えない。
まるで海のようなこの風景が川とわかるのは、海の──独特の塩っぱく生臭い──においがなく、一方向のゆったりとした流れの、そう深くない場所に、きらめく砂利が一様に広がっているからだ。

「うん、川だ」
中洲の端に駆け寄りその水を舐め、確信する。

なんて穏やかで清らかな場所なのだろう。
サラサラとい

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