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徳島不思議百物語 第13回「山の民の浪漫 やまんば」

 昭和30年頃までは日本各地にサンカという山々を流浪する非定着民がいた。このサンカと呼ばれる人々は、ある程度の移動ルートが決まっており、山の川べりに仮設小屋を作り、箕作りや川魚の販売を生業とした。

 この謎の民・サンカは、戦国期に忍びや乱破・すっ破と呼ばれたゲリラ戦を得意とした連中と関係あるとも、古代の賤民であり、坂道での車運搬業務に従事した“坂の者”と関連があるとか、江戸期の飢饉の際に、田畑を捨てて山中に逃げ込んだ“逃散農民”の末裔とか言われているが、ルーツは定かではない。サンカ研究は、作家の三角寛が博士号取得の際に提出した論文が有名だが、今となっては創作部分が多いと指摘されている。このサンカは、戦後に流行った“サンカ小説”が植え付けた先入観もあり、幻想的なイメージに包まれているが、記録の嚆矢は江戸期末期の広島藩の記録までしか遡れない。近年の調査によると、サンカは古代の賤民をルーツとするものではなく、江戸期末期の発生とする説が有力になっている。

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