びの

配信者やってる女子大学生。レトロなものが好き。 エッセイ中心に書き散らかします。

びの

配信者やってる女子大学生。レトロなものが好き。 エッセイ中心に書き散らかします。

最近の記事

彩りを添える

雑踏と低い天井のせいで、なんだか息苦しい新宿の地下道。 行き交う人々の波から出たくて、偶然目に入った伊勢丹の看板に吸い寄せられる。 最近気づいたけれど、私はけっこうデパ地下を彷徨うのが好きなんだと思う。 香ばしいバターの香りが漂う洋菓子ブースのほうを見遣ると、小さな手で母親の手をしっかりと握りながらショーケースに顔を近づける3歳くらいの女の子がいた。 私も小さい頃、父親と2人で街へ出かけるときは決まっていつも大丸の地下に行って。艶やかなコーティングが施されたチョコレートケー

    • 100円の偽物笑顔

      18歳の秋、私は人生で初めて担任を持った生徒を失った。 「来週からの島田ひなたさん(仮名)の授業の担当は、その先生に交代してほしいというお願いがありまして──」 夕食後、塾長から突然かかってきた電話。 電話の内容は、私が塾講師のバイトを始めてから1番最初に授業を担当した生徒である、小学4年生の島田さんについてだった。 島田さんは、私がバイトを休んだ日に代講を担当してくれた先生を大層気に入ったらしく、私の担当が外されることになったのだ。 「こういうのは相性で、先生が悪い訳

      • 地図が読めない人間の日常

        「あの、北野小学校への行き方わかります?」 iPhoneの画面を見せながら話しかけてきた40代くらいの女性は、やや関西訛りのイントネーションだった。一応iPhoneを覗きつつも「あー、すみません、ここらへん全然詳しくなくて……」とぺこぺこ頭を下げる。 今年の春、神戸へ旅行したときの出来事である。まさか旅行先でも道を訊かれるとは。 私は首から下げたフィルムカメラのストラップを掛け直し、三ノ宮駅方面を目指して歩く。 どうやらカメラは「観光客です!」アピールとしては不十分だった

      彩りを添える