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リターナブルびん、びんリユースの価値を再定義。『SO BLUE ACTION』ロゴに込めた想いとは?

先日私たち日本ガラスびん協会は、リターナブルびん、びんリユースの価値を再定義する活動『SO BLUE ACTION』のシンボルロゴマークを発表しました。
 
プレスリリース:https://glassbottle.org/glassbottlenews/4018
 
ガラスびんは洗って繰り返し利用することができます。この仕組みをリユースと呼び、ガラスびんの中でもリユースに適した強度設計がなされているものがリターナブルびんです。
『SO BLUE ACTION』は、リターナブルびん、びんリユースの仕組みの価値を再発見・再定義する活動の総称です。活動内容はさまざまで、リターナブルびんの理解と利用促進に関わる施策を、時には企業や大学と連携しながら、幅広く多角的に実施しています。
 
そしてこの度、この『SO BLUE ACTION』を皆さまにもっと知っていただくために、シンボルロゴを作製いたしました。今回は、このシンボルロゴを制作した株式会社オンフ代表でアートディレクターの神岡真拓さんと、日本ガラスびん協会の専務理事を務める山田重紀との対談を通して、私たちが『SO BLUE ACTION』のシンボルロゴに込めた想いと制作秘話をご紹介したいと思います。


SO BLUE ACTIONのロゴ製作を担当した神岡真拓さん

SDGsやサステナブルが注目されているのに
なぜ、ガラスびんに関心が集まらないのか?

―まず、今回『SO BLUE ACTION』シンボルロゴを制作するに至った経緯を伺いました。
 
(山田)
昨今、SDGsの達成やサステナブルな社会への貢献という言葉をよく耳にしますが、なかなかガラスびんの良さに気付いていただけていないという実態に、私たち日本ガラスびん協会は歯がゆく感じていました。それと同時に、ガラスびんやリターナブルびんについて、私たちのアピールがまだまだ足りていないことも自覚しています。
 
(神岡)
お恥ずかしい話、僕も『SO BLUE ACTION』シンボルロゴ制作の依頼をいただくまで、ガラスびんやリターナブルびんの良さについてそれほど知りませんでした。
今回の依頼を機に、改めて自分の身の回りを振り返ってみました。
リターナブルびんの中で自分に一番近い存在は、銭湯にあるびん牛乳です。銭湯が好きでよく行くのですが、何気なく飲むお風呂上がりのびん牛乳は、僕が生まれる前からずっと存在しているリターナブルびんなんですよね。それくらい生活に馴染んでいて、自然な風景になっている。素晴らしいことだと思いました。こうした無意識下で、リターナブルびんを選べる選択肢を増やすことが一番大切なのではないかと考えています。
 
(山田)
これまで利便性を求める社会構造が長く続いていたので、いきなりすべての容器をガラスびんに置き換えるようなことは難しいと思います。少しずつ身近な場所にガラスびん、特にリターナブルびんを浸透させて、その価値に気付いていただきたい。そのための取り組みとして、2022年から『SO BLUE ACTION』をはじめました。『SO BLUE ACTION』というネーミングには『地球の青さを守りましょう』という想いを込めており、この活動を通じて、SDGs達成への貢献、CO₂の削減につながればと思っています。


リターナブルびん、びんリユースの可能性を語る山田重紀専務理事

―『SO BLUE ACTION』では具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか?
 
(山田)
1つは、このnoteで以前ご紹介しました富士ボトリング様との取り組みで、Eコマースでリターナブルびん入りミネラルウォーターの販売の実証実験を行っています。各家庭で飲み終わったリターナブルびんを、東京23区の自治体回収システムを活用して回収する試みです。自治体回収システムと連携することで新たな資源・エネルギーを無駄にせず、昔は一般的な存在であったリターナブルびんをもう一度生活の一部に浸透させていこうという取り組みです。
 
富士ボトリング様のお話:https://note.com/binkyo_glass/n/n22436bc1aa21
 
もう1つは、2021年から東京家政大学様にて、学生にガラスびんの良さを知っていただくためのイベント・セミナーを実施しており、2022年からは、学内のコンビニエンスストアでリターナブルびん入りミネラルウォーターを販売・回収する実証実験も行っております。これはリターナブルびんの利用によって削減できるCO₂量を可視化する試みで、学生主体の自主ゼミとして取り組んでもらっています。
 
(神岡)
学生の反応はどのような感じですか?僕も20代ですが、Z世代といわれる年代はSDGsへの貢献とかサステナブルに非常に高い関心を持っています。でも、僕はシンボルロゴ制作の依頼をいただくまでガラスびんの良さを知らなかった。そんな自分に驚きました。なんで誰も教えてくれなかったのだろうって。
 
(山田)
まさに神岡さんのおっしゃる通り、今の学生の方たちはSDGsについて非常によく勉強されています。しかし、残念なことにガラスびんの良さについて知っている学生はほとんど見かけません。ガラスびんのリユースはリターナブルびんを回収して初めて機能するのだということを知らない学生も多く、先ほどの実証実験でも『リターナブルびんは回収ボックスに戻してください』とアナウンスしていますが、持ち帰ってしまう学生が見受けられます。
 
こうした状況もあり、消費者にリターナブルびん、びんリユースについて正しく理解してもらうためには、旗印となるシンボルが必要だと判断し、神岡さんに『SO BLUE ACTION』のシンボルロゴ制作をお願いすることになったのです。


ロゴは受け取る側にとってわかりやすい“目印”であり
発信する側の目指す社会像を示す“矢印”

―神岡さんが『SO BLUE ACTION』のシンボルロゴを制作するにあたって、最初にどのようなことを考えたのでしょうか?
 
(神岡)
私たちの世代は、生まれたときから『エコ』という言葉が身近にあって、意味より先に感覚的に理解するぐらいの存在。環境への意識とかごみを減らした方が良いといったことは、常に物事を考える際のベースにあります。
 
お話をいただいて最初に考えたのは、『SO BLUE ACTION』という掛け声が、誰から、誰に向かって、どういう目的で発せられているのかといった、WhyとHowの要素の整理を行いました。つまり、ガラスびん業界がどこを目指しているのか、どのような世界を実現したいのかを整理する必要があると考えました。


ロゴ製作をする上でのラフデザインとメモ

僕は、シンボルロゴというものには2つの役割があると思っています。
つまり、ロゴを受け取る側(消費者)が、この活動に気付きやすくなる “目印”としての役割と、発信する側(協会)が、この活動を通して目指していく社会像を示す“矢印”としての役割です。今回の『SO BLUE ACTION』シンボルロゴでいえば、サステナブルを意識する“目印”であり、どのような社会を目指すのかという“矢印”でもあるわけです。
 
制作するにあたって、『SDGs』や『サステナブル』がいわばバズワードとして広がっている現代に、それらを生活の中で実践できている人はどのくらいいるのか想像しました。言葉としては知っていても、生活の中で具体的なアクションを起こしている人は少ないのではないでしょうか。今回、日本ガラスびん協会が『SO BLUE ACTION』シンボルロゴという“目印”を掲げることで、リターナブルびん、びんリユースが『生活に馴染み』、消費者が環境について『自分ごとで考える』、より実践的な社会になる。これが今回のシンボルロゴに持たせた役割です。
 
(山田)
これまでリターナブルびんは飲食店等での業務用、つまり企業間での取扱いが大部分でしたが、リターナブルびんの需要を増やすためには個人に浸透させることがポイントであると思っています。そのためには、『生活に馴染む』ことが大切です。東京家政大学様の例のように、日々の生活でリターナブルびん入り商品を購入し、使用後は回収場所に戻す、そのような経験をたくさんしてもらえる機会づくりが重要だと考えています。


1滴のあお、1本のあお、1枚のあお、一生のあお。

(神岡)
シンボルロゴをデザインするにあたっては、先ほど申し上げました『生活に馴染むこと』と『自分ごととして考えること』をデザインする上での姿勢として定義づけし、この定義からコンセプトを導き出しました。
 
1滴のあお、1本のあお、1枚のあお、一生のあお。
 
あお、にはさまざまな『あお』がある。水、ガラスびん、木々の葉。それらの『あお』を、リターナブルびんとびんリユースの仕組みでひとつひとつ守り、一生の青空に繋いで行きたい。―この想いを、しずくにも、ガラスびんにも、葉の形にも見えるメビウスの輪で表現しました。
 
消費者目線に立った時に、一人ひとりが具体的にアクションできる対象、つまり身近な水や木々をイメージできるようにすることで、この活動を身近なものにしてもらおうと考えたのです。
 
また、環境への取り組みは何年、何十年、次の世代、その次の世代へとつなげていくことが最も大切です。メビウスの輪のモチーフを用い、この『SO BLUE ACTION』は一過性のプロジェクトではないということも主張しています。

シンボルロゴを通して
みんなの意識をデザインする

(山田)
協会の中でも、このコンセプトはすんなり合意が取れました。シンボルロゴのデザインに関しても、ガラスびんをわかりやすく入れるかどうかの議論はありましたが、それぞれの生活に馴染んで自分ごとで考えてもらうためには、ガラスびんの主張は大きすぎない方が良いのではないかと、今回の案に意見はまとまっていきました。
 
(神岡)
そうですね。コンセプトは想いを言語化するプロセスです。シンボルロゴデザインは、このコンセプトを誰が見てもわかるように非言語化するプロセスになります。今回は、コンセプトの合意が取れていたので、さまざまな意見が出てもコンセプトに立ち戻ることで迷走せずに、みんなが同じ方向を向いてデザイン制作していくことができました。具体的に言えば、『生活に馴染む』とか『自分ごととして考える』といった抽象的なものをどのようにデザインとして表現するかにフォーカスして、議論を重ねることができたと思います。また、デザインをブラッシュアップしていく中で、協会の皆さんと『こうした方が良いのではないか』という本質に迫っていく意見を多数出していただけたので、とても良い制作プロセスを経ることができたと思っています。
 
―シンボルロゴのコンセプトやデザイン制作をする上で、苦労や悩んだことはありましたか?

(神岡)
リターナブルびんの需要を増やすというミッションは明確ですが、そのために協会が行う各施策は多角的であり、かつ今後も増えていくという状況でしたので、今後の『SO BLUE ACTION』の展開を想像しながら構想を練るのが難しかったです。


(神岡)
『SO BLUE ACTION』のシンボルロゴ制作は、通常のサービスや商品のロゴとは違って、みんなの意識をデザインする仕事だったと捉えています。このシンボルロゴを通して、環境に対するみんなの意識が醸成されていくスタートラインになれば良いと思っています。
 
これからも、多くの企業に賛同・協力してもらえる活動になっていくといいなと願っています。
 
(山田)
そうですね。
例えば、リターナブルびん入りミネラルウォーターのEコマース事業はワインやクラフトビールなどでも展開できる可能性を秘めていると考えていますし、東京家政大学様との取り組みも、他の大学にも横展開していけるように活動していきたいと思っています。さらに、こうした取り組みに参加したいという企業や学校、団体などが増えてくれば、私たちの小さなアクションが、社会的な大きな波になっていけるのではないかと期待しています。
 
 
まだ始まったばかりの『SO BLUE ACTION』ですが、今回のシンボルロゴの誕生により、より多くの人たちに認識していただき、リターナブルびん、びんリユースの魅力再発見につなげていければと思います。


神岡真拓(アートディレクター)
株式会社オンフ 代表
デザインパートナー“ここち”主宰


山田重紀
日本ガラスびん協会専務理事
日本ガラスびん協会 (glassbottle.org)


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