100文字で綴られた物語 (No.51-60)
微熱文学です。
前回執筆した「100文字で綴られた物語(No.1-50)」では、
大変ありがたいことに「note創作大賞」の一次選考通過作品に選んでいただくことができました。
今回は、前回の続きの
「100文字で綴られた物語(No.51-60)」
を書きました。
ぜひ、お時間のある時に読んでみてください。
(1つ読むのに1分もかかりません)
それでは、お楽しみください。
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No.51「抜け殻」
彼女とのひと夏の思い出。織姫と彦星のように会えるのは一年に一度。蝉時雨の中、僕たちはその音に負けないように大声で笑い合った。夏の香りが鼻腔を刺激する。抜け殻になった布団には、温もりだけが残されていた。
No.52「始発」
彼の好きな音楽を知りたくて、私はこっそり彼のイヤホンに耳を近づける。彼がこちらを振り向いて唇と唇が触れ合った。駅のホームに列車がやってくる。顔を真っ赤にする彼と俯く私。青春18きっぷを片手に握りしめ。
No.53「二人乗り」
彼の漕ぐ自転車の後ろに乗って、爽やかな風が肌を撫でる。私たちが進んできた道はデコボコな道が多くて、最初は少しふらついたこともあったね。でも、彼の背中はとても安心できて、私を遠くまで連れて行ってくれた。
No.54「メリーゴーランド」
華麗な音楽と共に煌びやかに輝く回転木馬。それを見る度に走馬灯のように蘇る記憶。初めは新鮮に感じる風景も、同じ景色が続くと飽きてくるものだ。私たち二人の関係はずっと同じ位置のまま進展することはなかった。
No.55「とろんぼーん」
はじめて彼女を見たのは、一年前のコンクールでのことだった。吹奏楽部である僕はそのコンクールに参加した。他校の彼女を一目見て僕は骨抜きにされてしまった。トロンボーンを演奏するその姿に僕はうっとりとした。
No.56「摩擦」
大人になるにつれて周りの人間との価値観が合わなくなっていった。相手に合わせると私の心がすり減るし、意見をぶつけてもお互いが傷つくだけ。このまま摩擦が多くなっていけば、私はいつか燃えてしまうのだろうか。
No.57「漬物」
味噌漬け彼氏。糠漬け彼氏。塩漬け彼氏。浅漬け彼氏。醤油漬け彼氏。いろいろ試してきたけれど、どれも微妙だった。今度の新しい彼は、何漬けにしようかしら。そう呟く私を見て、彼は漬物石のように動かなくなった。
No.58「足跡」
インスタのストーリーにつく元カレの足跡。彼がいた形跡だけがそこに残され、その姿を捉えることはできない。私の部屋には、遊園地で彼に買ってもらった大きなクマのぬいぐるみが捨てられずに未だに置いてあるのだ。
No.59「大事と好き」
どうやら世の中には大事だからと言って、必ずしも好きであるとは限らないらしい。大事なものほど好きであると思っていた私は間違っているのでしょうか。好きでもないのに大事にされることほど辛いものはありません。
No.60「恋の検診」
私は何かと理由をつけて彼と会う方法を考える。彼は何かと理由をつけて私と会わない方法を考える。彼と会う時は、いつも彼から誘ってきた時だけだった。それも半年に一回だけ。歯医者の検診と同じ頻度で会う私たち。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、またお目にかかる日まで。
微熱文学
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