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100文字で綴られた物語

はじめまして、微熱文学と申します。

私は物書きではなく、大学で研究をしている普通の大学生です。

でも、たまに文章を書きたくなる時があります。

それは誰かのためでもあるし、そうではない時もあります。

言葉を綴るという行為を通して、これを読んでくれた誰かに何かを感じとってもらえるような、そんな文章になっていると幸いです。

今回は100文字という制限をかけて恋をテーマに50個の物語を書きました。

作業のちょっとした合間に読んでみてください。

あなたのお気に入りの物語が見つかると幸いです。



001.「交わらない交差点」

なんでもなかった日常。彼と一緒の帰り道。ローソンのある交差点で「また明日」って。そんな日がいつかは過ぎ去ってしまうと思うと不安でたまらなかった。交わることのないこの関係だけが、永遠のように感じられた。



002.「湿気」

L I N Eの返信が遅くなった。寝落ち電話をしなくなった。笑顔が減って、涙が増えた。もう一緒に花火を見に行くことはないのかもしれない。湿気た花火みたいに、私たちの恋が燃え上がることはもう二度とないのかな。



003.「特効薬」

本当に辛い時、私を救ってくれたのは優しい言葉をかけてくれる人ではなかった。くだらないことで私を精一杯笑わせてくれる人だった。明日には悩み事なんてさっぱり忘れてしまうそんなあの人の笑顔だけは覚えていた。



004.「穴」

彼にどんなに愛情を注がれても、私の心に一度空いた穴がある限りは満たされないの。今必要なのは彼の愛情なんかじゃなくて、私の穴を塞いでくれる別の男なのかもしれない。彼には申し訳ないけどこれはおあいこよね。



005.「衝突」

最近、彼との意見が衝突することが多くなった。昔のようなときめきがなくなった。そして昨晩、彼が交通事故でこの世を去った。車と出会い頭での事故とのことだった。出会わなければ衝突することなんてなかったのに。



006.「点滅」

青は進め、赤は止まれ。白黒の縞模様の橋を渡る、渡る、渡る。白は天国、黒は地獄。慎重に安全地帯を歩いてゆく。向こうにいる彼の元へ。あぁ、点滅し始めたわ。もう少しでそっちに私も行くからね。待っていて、ね。



007.「甘い恋」

ハーゲンダッツのような恋をした。最初は素直に話せず硬直しっぱなし。私にとって彼は高嶺の花なのかもしれない。でも、徐々に彼との距離が縮まり打ち解けることができた。かれがわたしのこころをあたためてくれた。



008.「変わったもの」

恋愛が私を変えてくれました。あの人と出会って、服装が変わりました。髪型が変わりました。音楽の趣味が変わりました。友達から恋人に変わりました。目に映る景色が変わりました。そして今日、苗字が変わりました。



009.「既読」

「久しぶり、元気にしてる?」昔好きだった先輩からの突然のL I N E。私のことを振ったくせに、どうして今さら。気の抜けた炭酸のように、そこに昔のようなときめきはなかった。既読。その漢字二文字が私の答えだ。



010.「約束」

彼とは幼稚園からの幼馴染みだった。よく喧嘩をし、いつも泣くのは私だった。喧嘩をしないようにと、先生にゆびきりをさせられたのを今でも覚えている。今日は、彼と薬指で約束をした。昔とは違う涙が頬をつたった。



011.「アイスクリームとメロンパン」

アイスクリーム。彼は叫んだ。メロンパン。私も叫んだ。それが、彼との最後の会話だった。最後にしては、とても爽やかな会話だったと思う。今でも彼のことを思い出す瞬間がある。溶けたアイスクリームを片手にして。



012.「嘘」

君のついた嘘。私は気づいていたけど、知らないふりをした。世の中には、知った方がいいことと、知らない方がいいことがある。ただ知るのが怖かっただけなのかもしれない。実は、私も君に隠していることがあるのよ。



013.「実り」

「野菜や果物は簡単に実るのに、どうして恋は簡単には実らないのかな。農家の人にこんなことを言ったら怒られるかもしれないね」彼は私の隣でそう言った。私の専門は心理学よ。私にそんなことを聞くなんて畑違いね。



014.「空気」

夫と結婚して十年。お互いに空気みたいな存在になってしまった。ある時、ふと夫のプロポーズの言葉を思い出した。「もしお互いに歳をとり空気の様な関係になったとしても、僕にはそれがないと生きてゆけないのです。」



015.「体温」

三年付き合った彼と昨日別れた。理由は単純であった。「友達の時の方が楽しかった」と彼はそう言った。あんなに楽しかった毎日が音もなく崩れ去っていった。人肌の温かみを知った私は、同時に孤独の冷たさも知った。



016.「酔いならばさめないで」

彼との出会いは相席居酒屋でした。見かけによらず喋りがあまり得意ではない彼に惹かれました。私は彼に酔ってしまったのです。緊張をほぐすために飲んだお酒のせいにさせてください。二日酔うだけじゃ、足りません。



017.「ベランダの蛍」

「ほら見てごらん、蛍がいるよ」彼が指を差す先にはマンションのベランダで煙草を蒸している人がいた。彼はそう言いながら私に煙草を咥えさせ、煙草を重ね合わせた。私たちの初めてのキス。二匹の蛍はシンクロした。



018.「ホームベース」

放課後、三階の教室の窓から見える景色が私は好きだ。私はグラウンドにいる彼のことをいつも遠くから眺めていた。高一の春、彼は教室で孤立していた私に笑顔で話かけてくれた。私は野球部の彼に裏表のない恋をした。



019.「歩幅」

彼は重い荷物があったら代わりに持ってくれるし、何も言わずにそっと車道側を歩いてくれる。優しすぎて心配になる時もあるけどそんな彼が私は大好きだ。いつまでも彼の隣にいたい。歩幅は違っても、歩幅は一緒なの。



020.「オセロ」

オセロの白と黒が一瞬で変わる様に、彼の恋心も変わってしまう時が来るのだろうか。職場の恋愛の大先輩は言った。「恋には表と裏が存在するの。ひっくり返されたら、またひっくり返す。それが嫌なら角を取りなさい」



021.「磁石」

世の中には頑張っても一緒になることができない時がある。まるで磁石の様だ。SとNが出会えばいいが同じだと反発してしまう。近づくまでは分からない。猛アタックの結果、私たちは結婚した。そして同じ極になった。



022.「無重力の愛」

宇宙での生活。彼のいない生活。そんな生活にも慣れてしまった。私の彼への愛はどこにいったのだろうか。きっと宇宙の遥か彼方へ消えたのだろう。私は気づいてしまったの。ここでは愛の重さは意味をなさないことに。



023.「鍵」

元彼のS N Sを検索。そこには私の知らない女と一緒に浜辺で幸せそうに笑う元彼のアイコン。そこは私との思い出の場所だったのに。元彼の思い出が知らない女で上書きされていく。鍵のついたアカウントと元彼の合鍵。



024.「リトマス植物」

これは母親からの知恵袋である。男を判断するには植物をあげなさい。その植物が一年後も枯れていなかったら結婚しなさい。もし枯らす様な男なら別れなさい。植物すら大切にできない男が女を大切にできるはずがない。



025.「優しさ」

男の優しさには二種類ある。下心と真心だ。前者は恋で、後者は愛。これを見分けるのは難しい。楽しい時にその人のことを思い出すなら前者、悲しい時にその人のことを思い出すなら後者。元カレが別れ際に私に言った。



026.「おとぎの国」

自分の行いをお酒のせいにする人は信用できない。お酒は人を変えてしまう訳ではない。本来の姿に戻す薬なのだ。真実の鏡、カエルの王子様。童話の世界で育った私は、今日もカボチャの馬車に乗って王子様を探すのだ。



027.「くらげ」

雨の日の匂いが好きだ。私の肺が湿った空気で満たされていく。でも、雨の日はなんだか悲しくもなる。あの日も雨だった。濡れた街にはカラフルなくらげが泳いでいた。互いに干渉することなく、静かに街に溶けてゆく。



028.「果汁3%」

恋人ではない彼と飲み会の帰りに公園に寄った。ブランコに座ってオレンジジュースを一緒に飲んだ。果汁3%という文字。3%なんてあってないようなものだ。でも彼の私に対する想いは3%でいいからあって欲しいな。



029.「遠距離」

会えない時間が愛を育てるのなら、この世の中の男女は誰も出会わない方がいいのだろうか。ひとり寂しく眠る夜なんかない。ひとりが寂しいのなら、きっと誰かも寂しいのだ。霞む月を見て、今日もあの人のことを思う。



030.「透明人間」

もし、私が透明人間になっちゃったら君はどうする?もう二度と私の顔を見て笑ったり泣いたりできなくなっちゃうね。私のことが見えなくても愛してくれる?辛いことがあっても私を笑顔にしてくれる?ねぇ、聞いてる?



031.「くつしたの片っぽ」

どうしてくつしたの片っぽって、気づいたらどこかに消えてしまうのかな。今日も色違いのくつしたを履く。私とのかくれんぼに飽きたのか、忘れた頃にソファやベッドの下からひょっこりと現れる。まるで元カレみたい。



032.「シーソー」

シーソーはひとりで楽しむことはできない。他人がいるからこそシーソーは楽しいのだ。人生はシーソー。時には、他人にもたれ掛かってもいいのではないか。常に釣り合いがとれているシーソーはつまらないに違いない。



033.「ピント」

私の彼氏はカメラマン。彼の撮ってくれる写真はいつもピントが完璧だ。今日は彼と付き合って三年目。どんなサプライズがあるのかな。彼が私の目の前に指輪を差し出す。目頭が熱くなり、私の視界はピンボケへ変わる。



034.「空席」

いつも一人で行っていた映画館。今日は隣に君がいる。もちろん映画の内容なんて頭に入ってこなかった。キャラメルポップコーンを食べるふりをして君の手にそっと触れてみる。空席を満たす。私の心も満たされていく。



035.「夢見る少女」

今日も夢であの人に出会った。どこかで会ったことがあるのかな。夢でしか会うことのできないあの人。ある日、偶然にも道端であの人に出会った。これは運命だ。私は舞い上がり小石に躓いてしまった。あれ、痛くない。



036.「変わらないもの」

髪を切ったり、ネイルを変えたり、新しい服を買ったり、香水をつけたりしても、彼は一度もその変化に気づいてくれたことはない。でも、彼は毎日変わらない笑顔で接してくれる。そういうところが憎めないやつなのだ。



037.「星座」

夜空に浮かぶ星は誰もが見ることができるけど、君の背中にある星は私しか知らない。私はその背中にある星座を探す。私を照らしてくれたその星は、今は遠くに行ってしまった。夜空の星を指でなぞりながら、君を想ふ。



038.「成分無調整」

彼女と付き合ってもう三年。今でも付き合いたてのように僕らは仲がいい。「ぎゅうってして」と彼女が言うから「もー」と僕は言いながら後ろから彼女を抱きしめる。失わないように。そんな僕らの愛は成分無調整です。



039.「逃避行」

真夜中のドライブ。心地よい風が僕らを包む。ムーンライトで浮かび上がる二人のシルエット。このままどこか遠くへ行ってしまうのも悪くない。ウェブサイトにも載っていないような処へ。テールライトが夜に刻まれる。



040.「溺れる愛」

溺れる愛というものが存在するのなら、一度でいいから溺れてみたいのです。そう思う私は変でしょうか。私を一途に愛してくれる人を手に入れたい。バスタブに浮かぶ愛を抱きしめながら、私は今日も一人で夜を喰らう。



041.「水面に映る君に恋をした」

満月の昇る夜。君と二人で海辺に座ってお酒を飲む。なんだか僕は照れ臭くて君の顔を直接見ることが出来なかった。だから僕は水面に映る君をずっと見ていた。月夜に照らされる君はとても美しかった。月が綺麗ですね。



042.「動物園 」

動物園の檻の中にいるトラを見て、隣にいた小さい子がしまじろうだと叫ぶ。それを微笑ましく見る私たち。「この魚、美味しそうだね」と彼が水槽の中の魚を見ながら言った。「食べるなら刺身がいいね」と私は言った。



043.「モスキート愛」

モスキート愛って知ってる?歳をとると一緒にいることが当たり前になって身近な人の愛を感じることが出来なくなるんだって。私たちはまだ若いから大丈夫ね。あぁ、僕たちの愛はいつまでもそばにあるよ。もー好きー。



044.「点Pな彼女」

みんなは彼女のことを嫌うけど僕は彼女のことが好きだ。彼女はいつも決まった時間で決まった道を歩いている。まだ僕は彼女と実際に会ったことは無いのだけれど、いつかきっと出会えると信じている。そんな僕は点Q。



045.「紙一重」

好きな人からのLINE。今すぐに既読をつけたい気持ちを抑えて布団を被る。嫌いな人からのLINE。苛立つ気持ちを抑えて既読をつけずにベットに投げる。どっちも同じだけど全然違う。気をつけろ。飛び出し注意。



046.「上手」

髪切った?香水変えた?痩せた?ネイル可愛いね。ピアス可愛いね。服似合っているね。メガネ似合っているね。女性の細かな変化に気づく男性はモテる。ということを男性は知っている。ということを女性は知っている。



047.「あやまり」

ごめんなさい、そう君は言った。別に悪いことをしていないのに、どうして君は謝るの?どうして君が悲しまなければいけないの?僕は君を抱きしめることができない。君のその涙は、どんな雫よりも美しく、醜くかった。



048.「恋のバトン」

全力で走る彼は、リレーのアンカー。みんなが彼を応援している。黄色い歓声が会場に飛び交う。額の汗が頬をつたい、首筋に消えてゆく。その姿に私は少しドキッとする。やった、一位。次は私がバトンを受け取る番だ。



049.「さめる熱と夢」

どんなに熱い恋もいつかは冷めることを知った。美しいものこそ脆く儚いことを知った。気づかない方が幸せだったのかもしれない。それなのにいつかは失うかもしれないそれをどうしてこんなにも求めてしまうのだろう。



050.「百文字の世界」

一日に使用できる文字数は百文字。政府が決めた方針により私たちの会話は制限された。その結果、言葉による暴力が減った。それと同時に言葉によって救われる人も減った。あなたは百文字の世界で誰に何を伝えますか?




最後までお読みいただきありがとうございます。

お気に入りの物語は見つかりましたか。

コメント等で教えてくださると嬉しいです。

評判がよければまた書いてみたいなと思います。

それでは、またいつかお会いしましょう。

微熱文学

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