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「OVER THE SUN」の神回〜LGBTの少年からのお便り〜

コロナ禍で時間ができたわたしはあるものにハマった。それはポッドキャストだった。かなり気持ちが落ち込んでいた時期だったので、余計なことは考えてしまうことが多かった。そんなときはポッドキャストを聴いていれば気持ちが楽になったし、思考が暴走するのを止めてくれた。


あるポッドキャスト番組との出会い

色々な番組を聴いていく中でわたしはある番組に出会った。それは「OVER THE SUN」という番組だ。この番組は今や人気ポッドキャスト番組になっているので知ってる人も多いと思うし、今更紹介する必要もないかもしれない。

軽く番組を説明しておくと、作家やコラムニストとして活躍されているジェーン・スーさんとアナウンサーの堀井美香さんが、主に40代や50代の女性の悩みなどを中心にトークする番組となっている。一応中年女性向けではあるけどセクシャリティや年齢関係なく楽しめると思う。


15歳の少年からのお便り

そしてわたしが最も記憶に残っているというか、正直にいうと泣いてしまったエピソードがあってどうしても今回はこのことについて書きたくなってしまった。

それはEP68での話。
ゲイである15歳の少年がお便りを送っていた。そこには母親との関係についての悩みが書かれていた。


彼の母親はゲイに対して理解が少なく、いわゆる昭和的な考え(昭和生まれの方すみません)がまだまだ残っていた。そのため、彼が”ゲイである”とカミングアウトしたときも、母親はそのことを受入れられなかった。

「ゲイであるって決めつけなくてもいいんじゃない」
「孫が欲しかった」
「ゲイであることを慎め」


このような言葉が返ってきてしまい、彼はこれからどう生きていけばいいか分からなくなってしまって、生きる希望が持てないという悩み相談だった。


彼の苦しみに対してジェーンスーさんと堀井美香さんは

世の中は異性愛者が生きやすいようにできているため、自分の性的指向に疑問を持たずに生きてきた母親の立場。そして50代という、一般的にLGBTQへの理解が難しい世代であることにも触れつつ

”親は完璧でないということに気付くときがくる”
”母親は勉強することが必要だ”

と優しく彼に応えていた。
また”ゲイであることは何も悪くない”と伝えていた。


彼の苦しみをへの共感と想像

わたしは彼のこのお便りが読まれているあいだ、ずっと泣いていた。声をあげながら泣いてしまった。15歳の少年がどういう気持ちでこの文章を書いたのだろうと想像すると我慢することができなかった。

わたしもゲイであり、セクシャリマイノリティ当事者である。わたしはまだ親にはカミングアウトしていないし、両親からゲイに対して差別的な発言を聞いたことはないが、実際どこまで理解があるかは分からない。

わたしは社会人になったとき自分のセクシャリティについてかなり悩んだ。就職した会社では、結婚していない社員を”ゲイだ”と笑い者にしている場面にも遭遇した。そして自分もいつか笑い者になると思い、会社に馴染めず早期退職した。(もちろん自分のセクシャリティだけが問題ではないと今では気付いている。)

この彼はまだ15歳。そして一番身近な存在であるはずの母親に、自分のセクシャリティを理解してもらえない苦しみを味わっている。一番の味方であるはずの人に受け入れてもらえない悲しみは、わたしが会社の人に受け入れてもらえなかったそれとは訳が違う。

わたしは退職して逃げることができたが、彼はまだ親の支えが必要な年齢である。もしわたしが彼と同じ立場だったらどうしていただろう。ポッドキャスト番組にお便りを送る勇気はあったのだろうか。

そう考えると彼がいかに悩み、苦しみ、どうしようもなかったかが理解できてくる。もう”ここ”に助けを求めるしかなかったのだと思うと胸が張り裂けそうになる。


もし彼に伝えられることがあるならば

実はわたし達が生きている世界は”誰か”にとって生きやすいようにデザインされている。自分がその”誰か”になっている場合、ジグソーパズルのピースのように上手くハマるかもしれない。大概の場合、異性愛者の男性がそのピースになるだろうか。

そこから外れてしまったら、残った隙間に入ることができなくて溢れてしまう。するりと社会から落ちてしまう。この構造に、わたしは社会人になった22歳のときに気付いた。まさにジェーンスーさんが言っていたように”この世は異性愛者が中心にできている”ことに気付いた。

もし彼にわたしから何か伝えることができるとしたら、15歳という若さでこのことに気付くことができたのは、ある意味ラッキーだったと思う。早ければ早いほどよい。これからどう生きていくかを考える時間がたっぷりある。”あなた”という”ピース”は、たまたまその環境ではハマらなかった。でも環境を変えればハマるかもしれない。ワンピースのジグソーパズルではなく、風景のジグソーパズルならハマったかもしれない。

マイノリティーに生まれたからこそ、他のマイノリティーの苦しみが理解できる場面もあると思う。それは大きな武器になる。ゲイであることを誇りに思うのは難しいかもしれない。偉そうにこの文章を書いているわたしもまだできていない。ただ、ゲイであることを否定する必要はない。なぜならそれは個性なのだから。誰にも迷惑かけていないのだから。


この社会で生きる一員として

自分が実は優遇されている世界に生きているかもしれない、そこから溢れてしまった人がいるかもしれないと想像を膨らませることが重要だと思う。そういう人が一人でも多くなればこの少年にも自分にも、いや全ての人が生きやすい社会になっていく気がする。

わたしはこのお便りを送ってきた少年に対して自分なりの想いを書いてきた(自己満だけど)。でもそれは、この少年に対してではなく、自分に対してのメッセージなような気がしてきた。


本編が聴きたい方は
TBSラジオ「ジェーンスーと堀井美香の『OVER THE SUN』」
EP68の51分〜お聴きください。


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