放牧乳の酪農体験 in 北海道~①放牧酪農(2024年6月)
6月、北海道で放牧乳を行う4つの牧場、北大の研究室が行う、北の酪農社 のワークショップに参加してきました。
メインはバターづくりのワークショップだったのだけど、牧場体験自体がとっても興味深くて、その体験をシェア!
(バターづくりは次の投稿でシェア)
きっかけはウガンダ繋がり
きっかけは、10年近く前にウガンダで学生ボランティアに来ていた友人のお誘いから。
その友人は長年勤めた企業を辞めて、1年間の酪農研修をしている。
「牛ってとっても可愛いので来てください!」とのお誘いだった、、笑
放牧乳
酪農に触れたことない方は、「牛って広大な土地で放牧されて育っているんでしょ?」って思う人もいるかもだが、放牧して育てているケースはかなり稀だ。
一般的な酪農(慣行酪農)は、牛舎などの閉じられた空間で育てられる。一生のほとんどを牛舎の中で鎖に繋がれて過ごす牛も多い。
一方、今回訪問したのは全て放牧酪農をしている3つの農場だ。
まず、美深にある塩崎牧場 では一泊し、夕方と早朝の搾乳を見学した。
牛は非常に賢い動物で、広大な土地で放牧されていても、搾乳の時間には自ら牛舎に集まり、自発的に自分のポジションに収まる。
そうそう。生後1-2週間の牛が必死でミルクを飲む姿が、愛らしい。目がスゴイww
人間と比べると、生まれてすぐで、親元を離れても、自らミルクを飲める。
今回の滞在で、歌登の重松牧場と枝幸の石田牧場も見学した。それぞれ、雄大な景色が広がる。圧巻である。
北海道の感覚では近所にあるとのことだが、各牧場は100kmほど離れており、北海道の広大さを実感する。
慣行酪農ではない放牧農業について紹介したい。
グラスフェッド
広大な敷地に放たれた牛は、1日中、草原の草を食べながら生活する。「グラスフェッド(Grass-fed)」と呼ばれる。
慣行酪農では、高エネルギーの穀物や濃縮飼料などが与えられる。
牛は本来草を消化するために進化した動物だ。穀物を大量に与えると、牛の消化器系で問題が生じる。酸性度の高い状態(酸性腸炎)や消化不良などから健康への悪影響を及ぼす。そのため、抗生物質の使用が増える。
また、穀物飼料の生産には大量の水、化学肥料、農薬が必要であり、これらは環境への負荷をさせる。
放牧で育った牛の乳は、オメガ3脂肪酸やビタミンEが豊富に含まれる。乳製品の栄養価を高めると考えられている。
今回の訪問で驚いたのは、牛糞の臭いがほとんどしないことだ。これまで訪れた農場では牛糞があると臭くてたまらない。
しかし、今回はほぼ無臭だ。
これは人間でも同じことが言えるだろう。穀物が多かったり、動物性たんぱく質を多く摂取すると、臭いうんこになる。
経営にも優れている放牧酪農
実は一般的なイメージと異なり、放牧酪農は、経営的にも優れているという。
確かに、1日あたりの乳量は慣行酪農の40Lと比べると、25-30L程度に減少する。売上は落ちる。
しかし、輸入飼料の餌代や病気などのリスクを考慮すると、利益率は大幅に上昇するという。
特に、現在は輸入飼料の高騰により、慣行酪農の利益率が10%程度にとどまる中、放牧酪農では50%以上の利益率を達成することも可能だそうだ。
※しかし、日本では、「できるだけ乳量をあげるべき」という考えが一般的であり、グラスフェッドは好まれない。
広大な土地を活用した放牧
ただし、放牧酪農は誰にでも出来るわけではない。広大な土地が必要不可欠だ。
地域や気候により異なるが、今回訪れた地域では1頭あたり1ha程度の土地が必要という。
今回の地域では、1頭の牛を育てるのに、1日に生草ベースで80kg、乾燥草で20kg程度の餌が必要となる。
北海道は冬が長い。雪に覆われた期間も長く、年の半分以上は草が十分に育たない、草が育たないため、夏の間に育てた草を乾燥させて冬用の餌として保存する必要がある。
適材適所
良いことずくめの放牧酪農だが、どこでも適しているわけではない。
同じ頭数を育てるには、広大な土地を必要とする。本州の土地が狭く地価の高い地域では難しいだろう。
北海道でも、輸入飼料を購入せずに栽培できる地域もあり、その場合は穀物飼料を育てて与える方が一般的な地域もあるようだ。
今回、3つの放牧酪農農場を訪問した。どの農場も約50頭の牛を飼育しており、100haもの広大な土地を有している。
牧草地には、牛が好む草だけでなく、様々な種類の草が生えている。
放牧に適した草は、上部を食べられても根が残っていれば再生し、糖分が多いものが選ばれるようだ。
搾りたての牛乳
そうそう、今回、複数の農場で搾りたての生乳を無殺菌のまま飲ませてもらった。
草だけを食べている牛の乳は、あっさりとしていて美味い!よく牧場で飲むと濃厚な牛乳!と言われるが、草だけで育った牛のミルクはあっさりしている。個人的にはこちらの方が好みだ。
今回、同じ農場で育った牛の飲み比べをした。同じ農場で同じ育て方をしても、個体によって乳の味が全く違う!!
無殺菌
搾りたての牛乳を無殺菌で飲んだのは初めてかもしれない。
ウガンダやインド、ケニアなどで酪農を見学した際は、乳房炎やブルセラ病が常態化しており、搾りたての乳を殺菌せずに飲むリスクが高い。
日本ではその心配がないので、安心して飲むことができる。。
次回はバターづくりのワークショップ
次回は、放牧酪農で得られた生乳を使ったバターづくりについて紹介する。
3農家の放牧乳の搾りたての生乳、少し置いた生乳などからバターを作る。
お楽しみに!
※読んでいただいて、良いなと思ったら「スキ」「フォロー」をつけていただけると嬉しいです! 今後の励みになります~!
記事を読んでいただきありがとうございます!サポートしていただけると、より良い記事の励みになります!