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短い読書感想文『見るまえに跳べ』

高校生の時、生物の先生が大江健三郎さんの講演を聞いた話を授業中にされたので、よほど印象深かったのか、駅前の書店で『万延元年のフットボール』。。。今、一瞬このタイトルから村上春樹さんの『1973年のピンボール』が思いうかびました。村上さんのタイトルはこの万延元年のフットボールが下敷きになっているのかも知れないって、思いました。少しは。タイトルが韻を踏んでいるので。

今、読んでいる小田島隆(コラムニスト)さんの本には、『1984年のビーンボール』っていうのがあって、面白いなと思います。一つのタイトルが新しいタイトルを生んでいく、タイトルの歴史。

それで、『万延元年のフットボール』を買って読んでから、大江健三郎さんの熱心な読者になり、初期の小説は兄の持っている全集で読みました。『見るまえに跳べ』だったか、登場人物の女性が「あなたの生活の仕方がが好きじゃないんだ」というようなところがあって、大人になるってこういう会話ができることなんだ、と妙に心に残ったことを思い出します。高校生のときは、〈生活の仕方〉の解釈はあまり必要がなかったので、そこが新鮮だったんだろうと思います。

でも、本当にそういう箇所が『見るまえに跳べ』の中にあっただろうか。

記憶は、この頃信用が置けない。不安を再生するばかりだから、もう、何十年も閉じられたままの本のページをめくることになると思います。そうやって、記憶を整列させて〈生活の仕方〉の文字を探すことにします。


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