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繋がるスピリット

昨日、父の80歳の誕生日をきっかけに、私の中にある父の思い出を言葉に綴ってみた。

父の思い出を、言葉、文章として書き下ろしていると、数珠つなぎのように、私の中にある記憶や思いが呼び起される。

80歳になった父は、かつては公務員だった。
夕方5時の終業とともに職場を出て帰路につき、そのあとの時間の多くを、書道や手芸、文筆などの創作活動に充てていた。

私の記憶では、父は必ず5時30分に帰宅をした。
時計の短い針が5と6の間、長い針が6を指す。
その時計の映像が私の脳裏に焼き付いているくらい、時間に正確に帰宅をした。
そしてアフター5に行う創作活動から、私はとてつもなく強いエネルギーを感じ取っていた。

そんな父を見ながら子ども時代を過ごし、高校を卒業した私は、親元を離れてデザインを学ぶことを選んだ。
学びの途中では絵画史に触れる機会もあり、ある画家のファンになる。
その画家は、ルネ・マグリット。

もちろん初めは、ルネ・マグリットの描く絵画が導入口となり、彼の世界に引き込まれた。
その後、彼の生きざまについての文献を読み進めていくうちに、ますます彼のファンになった。
思い返せば、このnoteでも、ルネ・マグリットにまつわる思いを、私は書き留めている。

文献を通してルネ・マグリットの人生を知る中で、彼の生きざまの中で強く惹かれた部分があった。

彼の人生は、芸術家にありがちな波乱に満ちたものではなく、
銀行勤めで、時間は厳守。
夜10時には就寝し、制作は普通のアパートメントの自宅キッチンの片隅で行うという日々。

そんなルーティンの中で多くのシュールな素晴らしい作品を生み出した。

私は彼のこの部分に、なぜか惹かれた。
自分もそうなりたいと、憧れた。
そんな憧れからなのか、服を作る仕事を自宅で行う私は、夜10時には就寝し、早起きをして仕事に取り組むスタイルをとった。

そしてついには、自分の次女に、「ルネ」という名前を付けた。

・・・

昨日、父の80歳を機にした文章を綴る中で、初めて気づいたことがある。

私がそうなりたいと憧れたルネ・マグリットの生きざま。

それは、私の父とそっくりだ。

私は、子どもの頃に無意識に刻まれた父の姿を、追いかけていたのだろうか。

そしてルネと名付けた次女は、子どもの頃、針仕事をする私の横でじっと私の仕事を見ていた。
高校卒業後は私のもとを離れ、デザインを学ぶ道を選んでいる。

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