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「白い道とフットパスライツ」 No.246より

 日本の最北端、宗谷丘陵にある「白い道」には、読者の中にも行ったことがある人が多いはずだ。ぼくは、昨年のノースアイランドラリーで初めてそこを走った。
 名産のホタテの貝殻が、砂利の代わりに敷き詰められている。宗谷丘陵の緑、青空、それに宗谷海峡の青。そのなかに真っ白な道が伸びている様子が独特で、確かに美しい。
 実は、ここをクルマやバイクで通れるということを知らなかったのだ。「稚内フットパス」という名称がつけられている。なので、徒歩でのみ通過できる道なのだ、と勝手に思っていた。
 ぼくがフットパスという言葉を知ったのは、ある新聞記事からだった。英国には、フットパスライツというものがある。誰かが土地を私有しても、そこがもともと、一般の人々が通行している場所であったり、散策に供されてきた場所だったとしたら、そこを徒歩で通行する権利は留保され、地主と言えどもそれを奪うことはできない。散策だけではなく、常識的な範囲での採集まで許されなければならない。フットパスライツ=徒歩による通行権は、伝統でもあるが、法律でもある。
 アメリカの、ある大物アーティストが、英国に別荘を含む広大な土地を取得し、居住するようになった。が、どうもいろんな人が自分の土地を通行している。これはどうしたことだ。人の土地に勝手に入って来るとは…。不法侵入だと思い込んで、それを警告するが一向にやめてくれない。
 ついに地主たる大物アーティストは裁判を起こすが、訴えは認められなかったという。そこは昔からみんなが通っていた場所で、新しくオーナーになったからといって、すべてを意のままにし、独占することもできない、と。
 フットパスライツとは、ある程度自然法的な思想に基づくルールということができる。

 司馬遼太郎の「街道をゆく - オホーツク街道編」に、第二次世界大戦の終結後、樺太(サハリン)から北海道に移住することを余儀なくされた、北方少数民族ウイルタの女性のことが書かれている。

Text : Hisashi Haruki

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