彼方へ - Go Beyond - 連載 Vol.23
著 / 山 田 徹
第五章 パリ・ダカール一九九八
其の一 ふたたびベルサイユ宮殿
一九九七年十二月三十一日、深夜。ベルサイユのホテル。
すでに日付は変わって、一九九八年一月一日になっているだろう。起きていればニューイヤーを祝う行きかうクルマのクラクションなどの喧騒で、それと気がついていたはずだ。
電話が鳴った。
「なんだ、何時だと思ってるんだ、まったく」
まさに明日スタートする二十年目のパリ・ダカールにやってきていた。ボクは初出場が一九八八年の十回大会だったから、ちょうど十年の節目でもあって、個人的にも意義深い大会だ。
それにあの時と同じベルサイユ、そして近年はクリスマススタートが恒例化していたのだが、この大会に限っては一月一日新年のスタート。と何もかもがあの時と同じメモリアルづくしで、なかばノスタルジーにかられて、かなりの無理をしてやってきたのだ。
そうとはいえ大きい夢を持って、やっても来ていた。それはこの三年間、われわれの主催するラリーレイドモンゴルで、堂々の3連勝を遂げた博田 巌を連れてきたのだ。
彼なら、さらに大きい舞台でも、充分な活躍が期待できたからだ。またそうじゃなければラリーレイドモンゴルの存在意義も危うい。
また日本人のライダーの夢も同様に失墜するのだ。
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