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BIGTANKマガジンは、年6回、偶数月に発行されるエンデューロとラリーの専門誌(印刷されたもの)です。このnoteでは、新号から主要な記事を再編集して順次掲載。バックナンバーの… もっと読む
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2020年5月の記事一覧

彼方へ - Go Beyond - 連載 Vol.20

著 / 山 田 徹 第四章 ラリーを主催するということ その十一 緊急手術 「緊急連絡だ」 ウランバートルを任せた鹿児島のドクターからだった。 「血圧がゼロだっ、緊急手術をしたいのだが、誰が判断するのか」 「なにを言っているのですか、判断するのはあなたでしょ」 「最高責任者の君が、そんな物言いでいいのか」 「手術が必要かどうかの判断は、自分には出来ない。あなたの判断で必要と思うなら、手術をする、とそう言ってください。そうすれば、その判断を支持します」 「ここに来い」 「行け

エンデューロモーターサイクルの哲学を解き明かそう

それは、モーターサイクルに求められる性能であると同時にエンデューロライダーに求められる資質をも表し、ひいてはエンデューロという競技の本質をも表す。そうしたことが一台の旧いエンデューロバイクから読み取ることができるのだ。 文 / 春木久史  以前、雑誌で「歴史に残るエンデューロバイク」または「理想のエンデューロバイク」というテーマによる特集記事を制作したことがあった。  選手、専門店、メーカー、メディア、国内外のエンスージアストに寄稿を依頼し、それぞれ「これこそは」というエ

ノースアイランドラリー「ガミラス星とイスカンダル星」

2020年7月23~26日に北海道で開催予定の第3回ノースアイランドラリー。そのプロモーション動画です。おそらく、今回のラリーで実際に走るルートも多く含まれています。 撮影、編集してくれたのは、今回、本人もエントリーしているという、プロラリー選手の三橋淳さんです。 ぼくは北海道出身です。両親も北海道で、祖父が石川県から入植してきた家です。父の生家は現在は北見市の一部となった旧留辺蘂町の山中。農業をしながら林業の仕事に出たりなんでもやって大家族を養った祖父、祖母であったと思

国境だけが人を分断するのではない。

3月。冬のサハリンを訪問したのはこの時が初めてだった。見えない国境線を超えるたびに考える。分断とは何か。 文 / 春木久史

ノースアイランドラリー

2015年。NIRの試走のため、ぼくとJECPROの中西悟は、サハリン北部を走り、最北端に近い小村、ニクラソフカに至った。5月下旬。青い海に流氷が浮かんでいて「あれはきっと今年最後の氷なんだ」と勝手に想像した。 ニクラソフカは、北方少数民族の村だった。 ラリー一行のビバークには、小学校の寄宿舎をお借りした。食堂もラリーのためにあけてくれて、地元の料理がふるまわれた。 小学生たちは、ちょうど夏休みで、家に帰っているのだった。 知らない土地を進む時の興奮と楽しさは例えよう

彼方へ - Go Beyond - 連載 Vol.19

著 / 山 田 徹 第三章 モンゴルへ 其の十 緊急ブリーフィング十日間の日程のこの大会は、まだ三日目が終ろうとしているに過ぎない。リタイア者は、一日目に7人、二日目に6人、そして三日目は6人だ。既に19人が、ゴビを見ずに戦列から離れていった。しかもリタイア理由のほとんどが、負傷なのである。 エタップ4、つまり明日のステージでは、デューンがルート上に出てくる。明日はひとつの勝負の分かれ目、といっても良かった。しかも、この日は「マスターオブゴビ」というタイトルが懸けられていた

連載 TIME TO RIDE  Vol.1 大鶴義丹

2ストという衝動  この時代に2ストエンデューロマシンの新車を買うと言うと、綺麗で大きなロードバイクに乗っているようなまともなライダーたちは不思議な顔をした。さらに燃料は混合だと言うと、みんな、只々沈黙した。 BTM No.209より  Words : 大鶴義丹  それまで乗っていた2015年のハスクバーナFE350に対しての不満はなかった。丸二年の間、数えきれないほどの絶景や難所ポイントを乗りまわした愛機である。低速での使い易さは当然、回せばどこまでも綺麗なパワーカーブ

若者が送った航空書簡が伝えること。夢に向かって進んだ日々

彼はパリダカのファクトリーライダーを目指して、単身、イタリアへ、エンデユーロの本場、ベルガモに移り住み、やずてレースに出場するようになる。そんなことをするやつが、本当にいるんだ。 君は、本気で夢に向かって進んでいるか? 文 / 春木久史 捨てられない思い出    イチョウの落葉が舗道にきれいなカーペットを作る季節。ぼくは引越しのために忙しい数日を過ごしていた。十年以上住んでいた古家は取り壊すことになり、1ブロックだけ北の街区に、しばらくの間移ることになったのだ。やや手狭

彼方へ - Go Beyond - 連載 Vol.18

著 / 山 田 徹 第三章 モンゴルへ 其の九 重大事故、起きるエタップ3、つまりラリー三日目だ。 優勝候補の一角を担うゼッケン8尾崎哲生は、ここまで慣れないナビゲーションに苦しめられ一日目で7位と出遅れていたが、それでも鮮やかなサテン地のブルーのジャケットをまとったXR600が、草原を疾駆する姿は、感動的ですらある。 「一流の早さだ」 それにライディングフォームも実に力強く、よくしなる鋼を思わせた。 「やっぱり尾崎さんでしょうか」 「なにが」 「いや、優勝ですよ」 「主催

女性とモータースポーツ -

下の写真は、「女性とモータースポーツ」という特集を組んだ、弊誌 No.210の表紙です。エンデューロやモトクロス、ラリーで活躍する女性たちのインタビュー記事を中心にした構成によって、モータースポーツにおける女性の地位を、女性の視点で浮き彫りにしたいという狙いでした。

一抱えの書類の山からは、かすかに汗のにおいがした

我々がデジタルデバイスを介して1日に接する情報の量と、まだそんなものに毒されていない無垢な子供が、通学路の花壇の匂いを吸いこんで感じる「匂い」と、どちらが情報量として多く、どちらが重要かを知ることはできない。(本文より) 小包、届く。写真/文 春木久史

ウズモーリエから西海岸に抜ける - サハリンのオフロード旅情報 No.6

イリンスキーの海岸 サハリン島は、北海道とほぼ同じ面積ですが、南北に約1000kmと立てに長い形をしています、司馬遼太郎は「オホーツク海道」の中で、この島のカタチを、「鮭を逆さに吊るしたような」と表現しています。確かにカラフトマスにも似ているかもしれません。

彼方へ - Go Beyond - 連載 Vol.17

著 / 山 田 徹 第三章 モンゴルへ 其の七 エタップ1スタートフラッグは、モンゴルと日本の国旗を使うことにしてあった。快晴の空が美しい。カウントダウンと共にフラッグが振り上げられ、ブーンと軽いエンジン音を立ててゼッケン1番をつけた小鶴哲也のDRが飛び出していった。 招待された4名のモンゴル人ライダーは、ゲートの前で4台並んで記念撮影をし、観衆のひときわ大きい声援に送られてスタートした。4台のマシンとウエアはわれわれが贈ったものだ。その後方から作家の戸井十月XR250の姿

COVID-19状況からのレース再開その賛否 「そんなこと化」には反対します

アメリカで最も人気のあるオフロードレーシングのシリーズ戦であるGNCC(グランドナショナルクロスカントリーチャンピオンシップ)は、5月16-17日にシリーズ戦を再開すると発表しました。アメリカでは感染者数が多いものの、増加は鈍ってきているとし、トランプ大統領以下、経済活動の再開を望む勢力の動きも強まっています。