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こんな時代に生き抜く水商売な僕ら、その2


Containerはたぶん店に来たことがある。しゃべった記憶もあるが覚えてない。という矛盾は政治家でなくとも我々の人生でしょっちゅうあり、とくに私は矛盾だらけの男。昨日のことも忘れるどころか明日のこともすでに忘れていると自信を持って言えるほどであります。

CONTAINER 'SCRAMBLERS' LP

なぜなら前回のnoteでこちらのContainerはすでに紹介済みであり、しかし一切そのContainerのことには触れず終わっていたという。それは結局皆さまにももしかしたら会ったこともあるかもしれないContainerにも申し訳ないことを重ね重ねしてしまっているという、しかしそんな人間な僕でもそんな人間な僕だからこそやり続けるしかありません。

今の僕はレコード屋がメインの仕事ですが、つまり「こんな時代に生き抜く水商売な僕ら、その2」です。その2というのは前回の「言ったじゃない、水商売は水物よ。」のタイトルを変更しその1にしたいと思ったからで、それはnoteのヒントに、読んでもらうためにはタイトルが大事です、と書いてあったからで、なのでこのタイトルはツイッター炎上狙いのデマとあまり変わらないわけですが、一応レコード屋にバーカウンターが併設されている店を約20年やってしまっている私がこれまでとんでもない低空飛行でなんとか生きてきた話を、新入荷のレコード紹介と共に今回は書きたいと思います。


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SERWED 'SERWED II' LP 

ソ連が崩壊した後のロシアの存在感は2010年代ついには音楽にまで。そして2020年代になっても依然ロシアン・パワーは続く。さらにそこにHuerco S.が絡むのは必然でミニマルがインダストリアルにもならず昨日思いついて忘れてさっき思い出した特に重要ではないアイデアを躊躇なくカマす。それはプーチンは黒帯、プーチンのペットは秋田犬のユメ、プーチンは川で泳ぐ時は流れに逆らいバタフライで泳ぐ、ばりの説得力。つまり理解不能な説得力が我々にも必要であります。しかし実際それは即生まれるものではなく5年10年という年月が必要で、だから何事も3年を越えるのが大事と思うのはそういう理由かもしれません。と今、思っただけです。

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世紀末の頃、それは20年くらい前。学生の頃にレーベルを始めて10年、会社にして3年目くらいの時です。僕は行き詰まっていました。なぜなら30才にも関わらず会社経営どころか税金の意味もわかっていなかった僕は、会社一年目でどかんと税金を持って行かれ、そして経営もめちゃくちゃなのでお金がもうありませんでした。25才の時に父親に土下座し27才までに返さなければ実家に戻り家業を継ぐと約束で500万円を借り(両親は僕が生まれてた時から私名義で貯金をしてくれていました)なのに当時のメジャーの人も驚くレコーディング費や制作費などでお金を費い(僕はそれでいいと思ってました)あっという間に500万円がなくなっていました。これはもう親とは連絡を絶って逃亡するしかないと相談した友人達のバンドのCDが1万枚売れ、28才になる1ヶ月前の春に500万円現金で返しました。1万6千500円しか残ってなかった通帳の数字が目をつむれば今でも出てきます。みんなにはいつか出来ていない恩返しをしなければいけません。


なのにお金はなくなりました。そのあとも海外レコーディングなどとめちゃくちゃして(僕はそれでいいと思ってました)若かったので毎晩飲み歩いて(それはヤバイと思ってました)いるだけの毎日だったのでそりゃそうです。そしてまた父親に土下座です。この時はマジで殺される覚悟で行ったのですが、有限会社という会社組織にしていたのが親心をくすぐったのか貸してくれるというではないですか。ただし条件がありました。

「つなぎの融資は無理」

息子が諸々の支払いに困ったからやってきているのをわかっているのに、彼は僕に具体的な事業計画の提出を求めました。とにかく来月の支払いをしなければヤバい僕は(とにかく借りれればその金を使えって返せばいいと思ってました)マジで考えました。高校生の時、喫茶店でバイトをしたいというと「水商売は水物だ。それをやる奴もアホ。そしてコーヒーなんか家で飲めるのに行く奴もアホ。だからおまえはアホ!」罵り喫茶店のバイトなど絶対に許さなかった父親が嬉しそうに「わたしは60になったので長年の夢だった、喫茶店をやります。」と先月言ったとんでもない理不尽を思い出しました。「僕も夢だった喫茶店もやります!」それが現在のBIG LOVE RECORDSに繋がります。


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YVES TUMOR 'HEAVEN TO A TORTURED MIND -LTD. SILVER VINYL-' LP

涙が出るくらい卑猥で美しい。Yves Tumorの新作の全ての楽曲はまるで軍歌のような反戦歌でだからなんだかドキドキして卑猥でだから前を向ける。

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で、レコード屋をやりつつ倉庫と事務所を小さくしてカフェをはじめ、するともちろん好きで始めたことでもないのでなんだかうまくいきません。なのでああでもないこうでもないとちょこちょこちょこちょこ内装を自分で変え始めました。内装屋さんに頼むお金もなかったので自分たちでやるしかなかったのです。しかしそれが僕を助けました。カフェに限らず小さな店だったら60%くらいの仕上がりで始めた方が良いです。やり始めたらこうした方が良かったと思うことがたくさん出てくるので、たとえ最初は自分の理想通りに出来たとしても、そのせいでチャンス逃したりピンチを乗り切ることも難しくなります。小さな店がやっていくには100%にしないことです。


父親はとにかく自信があるので、自分の店が出していたタイカレーを出すことが半分強制でした。結果、お客さまだった子がシェフとして働くようになりパスタなど本格的に出すようになり、確かにレコード屋とカフェが併設されている店はその昔読んだ少女マンガに出てきて夢のひとつではあったのですが(Echo & The Bunnymenを買うヒロインの女の子にレジにいた主人公が「このレコードいいんだよね」と言うと女の子が「わたしレコード買う前に良いか悪いか知るの嫌いなんです」という会話から始まるマンガです。誰か覚えてますか?にしても今の時代から考えるとありえないくらい最高なマンガ)でもなんか自分のやりたかったこととはバシっときません。そう思っていたりしたらまたもやだんだん売り上げが悪くなり、もはやみんなを雇う体力もなくなっていました。あの時、突然辞めてもらったみんな本当にごめんなさい。なのにその後もみんな仲良くしてくれてありがとう。


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ELLIS 'BORN AGAIN -LTD. WHITE VINYL-' LP

こちらは私は病気だったのか...書いた覚えもない解説をショップサイトにてどうぞお読みください...ご存知のように私のは解説でもレビューでもコメントでもない本気の妄想物語ばかりであります。しかしそれはそのアーティストやレコードを超えて彼らが持ってない特別なものを与える気で書いております。対等もしくはコッチが上ぐらいの気合いです。それでなければサブスクもamazonもあるこの時代、私などいなくても良いと思うからです。

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で、最終手段です。僕と当時の妻の平田春果とその当時新人バイトだったマルくん。しかもマルくんはフルで雇ってられなかったので週2。前々回のnoteでお話した志賀高原ビールさんは絶対に引き続き出したかったので、レコード屋内にバーカウンターがあるイメージで、もちろん自分たちだけで内装をし始めました。内装を大きく変えると保健所の届け出も改めて必要なので以前は業者さんに頼んでいましたが、今回は自分で図面を書き書き提出しました。人もいないので料理はなし。コーヒーは以前から水出しコーヒーを出していてかなり自信あったので、そのコーヒーと志賀高原ビール一本に絞りました。

そしてレーベルはとっくにCDは売れなくなってました。レーベル活動の方が長かった僕としては、あっちもこっちもダメで万事休した感じだったのですが、逆にもうどうせ売れないのだったら本当にいま好きなバンドをばかりを好きでもないCDではなくレコードで出しててやろうと新しいレーベルを始めました。これが最後だろうと思いと懺悔もあったのかせめて名前だけは子供もおじいちゃんも誰が聞いても善良なのをとBIG LOVE RECORDSと名付けました。最初は日本人もと思ったのですが、すぐに自分が好きな海外のバンドばかりリリースしていました。

でも全然売れません。みんな限定300枚かそこらなのに在庫は溜まる一方です。お金もないのに一切ペイも出来ないレコードばかり作るので、プライベートも店もギスギスします。しかし僕といえば好き以上に自分が他人だったらヤバイと言うであろうことをついに俺やってる!とテンションが高くなり、お金が一番大事な最終交差点にも関わらずガンガンいってました。今思うと怖すぎます。だけそ翌年2010年から、僕が好きだと思ったバンドの方からコンタクトがたくさんくるようになったのです。前年に僕らがリリースしたバンドたちSALEM, Ariel Pink's Haunted Graffiti, Cold Cave, Geneva Jacuzzi, Nite Jewel, The Big Pinkなどがインターネットによりあっという間にサクセスしたりカルト的支持を世界中から集めるバンドになっていたからです。そして在庫が突然完売しました。


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BIG LOVE RADIOはしっかりと昨日土曜日4日公開しました。コレを聴くと人生は100倍になります。

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それはただただラッキーだっただけですが、よく考えたらレコード屋としては「これが新しいのだ、聴け!」みたいにパイとか全く考えずずっとやってきていたので、レーベルとしてもそれをやっただけでした。もちろん本気で売れないのも半分くらいありましたが、出せるようになっただけで最高です。2010年にはまだ人気ではなかったThe xxや(実はデビューシングル出した時から話しがありました)、どうしてもBIG LOVEから1stシングルを出したいと言っているからとCold Caveから推され出しそのあと大人気となったNothingなどをリリースしました。ちなみにその時のレコード店は一応現状維持みたいなかんじです。なんとか生きてられるかレベルです。ですが日本にこういったレーベルそしてレコード屋もやってるらしいと海外でなんだか知られるようになってる感じになってってきて、さらにレーベルやバンドからたくさんの連絡がきて時々特別なレコードを入荷出来るようになりました。

そして2011年の3月11日、震災です。


と、ここまで書いて思ったのですが、ちょっと長すぎる!しかもこんな歴史を書くつもりなかったのに...というわけで次に続きます。ですので、ちょっと仕事についても。

つなぎで融資は本当にダメです。ついでにお金以外な事も本当にダメです(恋愛は仕方がない場合がありますが...)。僕はレーベル運営の方が長いのですが、前作で結果(売り上げという意味ではありません)を残せてないのに同じようなものを出したいと言ってきた場合は外人でも日本人でも友人でも断ります。といっても僕だって人間です。結局それでも出してしまうこともあるのですが、ひどい結果を生みます。傷は広がります。そしてだいぶ気まずくなります。つなぎ融資は思考停止を招きます。もしつなぎだとしてもなんでもいいのでこれまでとは違うこともやるべき。そうでなければ次のチャスはつかめません。なので僕はレコード屋以外のことをたくさんやります。

というその辺の話と震災後のBIG LOVE RECORDSの話は「こんな時代に生き抜く水商売な僕ら、その3」で書きます。でも次のnoteではありませんよ!いつかですいつかですいつかです、以下永遠ループ。

いつもありがとうございます!








サポート!とんでもない人だな!