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日本語教師日記141.日本語の受身についてもう少し。

受身・使役・使役受身は、一緒に詰め込むと混乱します。
それぞれに、日本語の中で使われるにつき、独特な意味のある面がありますので、簡単ではありません。
ただ、丁寧にやろうと思えばきりがないところもあります。

前回は、「受身の宿題」をたくさんリクエストしてくれた生徒に渡したものの一部をお目にかけましたが、今日は、受身を多用する理由(私見に過ぎませんが)や、受身にまつわる感情的な面を考えてみたいと思います。


生徒から、

「受身はこんなにむずかしいのに、
日本語学校では他の課と同じぐらいの時間しかかけず、
さらっと通過したような気がします。
作り方はわかるし、テストでも⭕️ですが、実際は使えていません」

と言われました。

私の答えは不十分ではありますが、こんなものでした。

「日本語は、学習項目がとても多いので、
受身(使役・使役受身)だけに時間をかけられないという側面もあります。
また、そこで受身を使わなくても、コミュニケーションはできるので、
文法や規則をとりあえず一通り理解してもらえたら、
「次行こう」になりがちかもしれません。
でも、ここは日本語学校のグループレッスンではありませんから、
よろしかったら、じっくり腰を据えてやってみますか?」

マニアックな私についてきてくれる生徒は、
やはりマニアックな方が集まりがちですので、
一度脱線すると、なかなか本筋に帰ってこないことを伝え、
了解の上、生徒と一緒にどぼんと飛び込む「受身の大海原へ💦」
ということは、よくあります。

日本語の「受身」は、訳せないものがたくさんありますが、
「被害の受身」は、学習者本人がまだ使いこなせなくても、
日本人の口から始終飛び出して来るものですから、
とりあえず、どんな気持ちのときに「受身」が出やすいかは、
慣れていって理解していただきたいなと思います。

この二つの文・・

A:殴られたら殴り返せ
B:誰かがあなたを殴ったら、殴り返せ

ですが、
Aは、私たち日本人なら普通に言う一方、
Bは、意味はわかるけれど、あまり言わない感じがします。

A:別れ話をしたら彼女に泣かれた。
B:別れ話をしたら彼女が泣いた。

起きた事実は一つのことですが、
Aは、話し手の罪の意識や、困惑、逃げ出したそうな気持ちまで伝わってきます。Bは事実のみ。ロボットですかあなたはという感じです。

受身は、文字通り、降ってくる事態を、避けようもなく「身に受ける」感じがしませんでしょうか。つまり、「逃げようがない・避けようがない」感じがあると思います。
ことを荒立てず、戦わないで長いものに巻かれてきた日本人の歴史が、
受身の多用の源であるように感じています。

「先生、受身を使えば、残念とか、逃げられないとか、困ったとか、そういうことを表現できるのですか?」

ーーはい、そうですね。

では、「しまった」を言わなくてもいいですか?

(「てしまった」はそれが完了した=後戻りがきかない=残念、という気持ちを包含できています)

ーーいえいえ、残念度が高く、もっと残念がりたければ、使ってください。

というわけで、早速練習に入ります。

 【出された言葉を使い、受身を使った文を作る練習】

地下鉄・ハイヒール・涙
地下鉄の中でハイヒールの女性に足を踏まれ、涙が出た。

空港・スーツケース・(誰か)間違う
空港でスーツケースを間違われて本当に困った。

例文のために、言葉を上げようと思うと、

悪口を言われる
文句を言われる
クレームをつけられる
騙される
蹴られる
殴られる
撃たれる・・

など、あまり自分の身に起きてほしくないことが、続々と浮かんでしまうのは、
私がやはり、受身な日本人だからなのでしょうか。

JLPT4級準備の教科書の1ページ。
日本語の授業って、こんなことやってるのか・・
と、お思いになるかもしれませんね。

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