日本語教師日記75.一度に教える必要はない(4)=法わか(14)「たら」と「ば」の重なるあたり
「たら」と「ば」は、「もしA ⇨ 結果B」として使えます😀
と教えますが、全く同じようには、使えない場合があります。😅
一般の生徒さんは、初級の終わり頃に「ば」に出会い、次に「たら」に出会い、
(すみません、逆かもしれません)
え? 同じ?
同じと聞けば、熱心な学習者ほど、
「絶対、二つを入れ替えて使えますか?」
「違いはありますか?」
「ば、しか使えない、たら、しか使えない場合を教えてください」
と聞きたくなって当然です。
そして、ベン図でいう「重なり」の多い語ほど、微妙で、教えにくいのが普通です。
私は例文をたくさん書き出すことで頭を整理することがよくあります。
自分でもふっとわからなくなってしまう時があるからです。
以下、教えるときに便利に使っている文です。
🔴がベストで、⭕️はその次のつもりです。
1. 単純に「もし」、Aの条件があれば・起きれば、Bが起きる・Bになる
1-1.
🔴そんなに食べたら太りますよ。
🔺そんなに食べれば太りますよ。
なぜ「たら」のほうが自然に感じられるのかですが、「たら」には、そのことが起こる可能性の低いこと、起こらないでほしい、起こるべきではないがという気持ちが入ります。(私見です)
1-2.
🔴 今すぐ行けば間に合います。
⭕️ いまぐ行ったら間に合います。
1-1. と同じ理由で、🔴と⭕️をつけました。
これを言っている人、言われた人にとって、「そこへいますぐ行くかどうか」は現実にすぐそこにあることです。なので、「行けば」の方がフィットすると見ました。
「行ったら」も、間違いではありません。
ここには、時代差と地域差がありそうです。
1-3.
🔴どうすればいい?
⭕️どうしたらいい?
「ば」「たら」「なら」には、地方差があると最近読みました。
関西ではあまり使い分けをしないとか。
私の語感だと、「どうすればいい?」のほうが口をついて出てきます。
もう一つ作ってみましょうか。
🔴どうすれば開くの?ーー🔴強く押せば開くよ
⭕️どうしたら開くの?ーー⭕️強く押したら開くよ
う〜む、もう一つ作ってみましたが、やっぱり「ば」が優勢?です。
喧嘩させてるわけではないのですが・・。
1−4.
🔴そんなこと言ったら、火に油を注ぐようなものだよ!
⭕️そんなこと言えば、火に油を注ぐようなものだよ。
「言えば」を言う人は、冷静か、遠くからみている人のように感じられます。
びっくりマークもとってしまいました。
1−5.有名な「びっくり・たら」。可能性がとても低いなど。
🔴宝くじに当たったら何をしたい?ーー当たったら? クルージングかなぁ。
❌宝くじに当たれば何をしたい?ーー当たれば? 家を買うかなぁ。
びっくり「たら」の、面目躍如? な気がする例文です。
でも、🔴と⭕️の間は非常に微妙で、生徒には、
「私は、この場合は「ば」と言うけれど、「たら」でも間違いではないです。
と言っています。
正直なところです。
「と」と「とき」の違いのように歯切れよくなれない苦しさがあります、正直。
いつ「たら」を使うべき?
びっくりの度合いが大きい。
それの起きる可能性が低い。
それの起きる可能性を避けたい(マイナスイメージ)。
これも言っています。
生徒と一緒に、できるだけドラマチックな文をつくることも、よくやります。
・あなたが今死んだら私も死ぬ!
・ワーク・ビザがもらえなかったら日本にはいられない。
余談ですが、たとえショッキングでも、当人にとって大事でも、
「ば」を使える場合もたくさんあります。
日本人なら無意識に使い分けていますが、
無意識なだけに、改めて違いを問われると答えられません。
そこに、「同じだよ」が出るベースがありますね。
ショッキングだったり、マイナスでも、「ば」が出やすい場合です。
ポワロ:(犯人に)つまりあなたにとって、
憎いおじさんが死ねば 好都合だというわけですな。
(犯人とポワロにとって、現実味の濃い仮説)
ホームステイのお父さんが留学生に:
ワークビザがもらえなければ、なんて、今考えなくてもいいよ。
その場合は、私の会社でなんとかするから心配しなくてもいい。
(お父さんが、留学生にワークビザが出なくても
何とかしてあげられる現実があり、本人ほど気持ちが切迫していない)
「なら」は、「ば」と「たら」の小競り合いとは、また一線画すものがあると思いますので、また別に書かせていただきますね。
ああ、微妙でした。
異論もおありかと思いますが、私がとりあえず、うまくいっていると感じ、
学習者がすっきりする説明方法でした。
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