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日本語教師日記128.さよなら教室ありがとう(3)生徒第一号のSさん

私のささやかな巣、初めて持つことのできた居場所で、生徒1号になってくれたのは、イギリス人で、セミリタイアした経済学者のSさんです。

名古屋に来た翌年、教師紹介サイトから声をかけてもらって出会いました。

最寄駅にお迎えに行った日は、グレイの曇り空のみぞれの朝でした。

懐かしいですね。お天気が悪かったですよね?

「そうでしたな、tamadoca先生」

あのときは、Sさんはまだ精悍さの残る、ギラギラのアラなんとか。
私はまだまだ若々しいマダムだったのに・・・

「あれから十年、いや十一年・・
 年月というのは、酷いものですな、tamadoca先生」

本当ですわね〜!


引っ越しの話を告げた時、こんな会話を交わしました。

Sさんは、バングラデシュに調査に出かける以外は、ほぼ全くキャンセルなく、
授業が終わると、せっかく被っていた帽子をひょいと持ち上げて、

「ありがとうございました。勉強になりました」

と言って、深々と一礼をし、帰って行かれます。

コロナがいよいよ怖くなってきたときからしばらく、オンラインでレッスンを受けてくれていましたが、その間、頑張ってこの教室も閉鎖せずに保っていました。
Sさんの復帰を待って。

めでたく去年12月から、教室での対面レッスンが再開できました。

勉強になります・・は、こちらのセリフです。


「今は、幼稚園の先生たちのグループレッスンは復活していますか、先生」

いえそれが残念なことに、皆さんオンラインには移行せず、
やめてしまいました。

「では、私だけですか、この教室を使っているのは」

そうですねー。

「全然採算が合いませんね」

まあ、世の中、経済だけじゃないですから。
この教室に、名古屋に来てくれた生徒や、友達が滞在してくれましたし、
娘たちが大学生の頃は、友達である留学生たちなんかも、ステイしましたしね。
これからだって、意義はあると思うのですが、
なかなか近所に生徒さんは見つかりませんし、
そろそろ閉鎖しようかなと。

「おお、ぜひそうなさってください」

そうなると、Sさんは我が家でレッスンとなりますが。

「ノープロブレムです。お見捨てなく、よろしくお願いつかまつります」

合点です。
娘たちがね、二人とも独立してしまいましたので、
一部屋は仕事部屋に、もうなっているのですが、
もう一部屋は倉庫になりつつありまして、
教室の方で、レッスンを行えることとなりました。

・・・・というわけで、Sさんに背中を押されるようにして、
教室の引っ越しを終えました。

引っ越し準備で整理していたら、出てくる出てくる、
全然要らないもの、なぜに取っておいたか意味不明なものがたくさん。

もちろん、ポール・マッカートニー大阪コンサートのパンフレットとか、
日本語教育能力検定試験の合格証(美麗額装)など、
絶対捨てられないものはありましたけれども。

本箱の中に、漫画全巻揃いがぎっしりには驚きました。

持ち込んだものは、テーブルと椅子4脚。
中型の本箱。
あとから買ってしまった、着物用の桐箱・・・
それに、なんと32冊にもなっていた家族のアルバムですね。
それだけなのに、
これを箱詰めにしたら、すごいことになっていました。
本て、自然に増えるし、重いし、侮れませんね。

漫画の一部は娘らがチェックして、
要るものは引き取ってくれるそうです。
その残りは、一度だけ全部読んで、売り飛ばします。

漫画は、全巻揃っているものばかり。

よつばと
ママはテンパリスト
テルマエロマエ
はちみつとクローバー
三月のライオン
聖おにいさん
昨日何食べた?

まだまだありますよ、もう荷造りしちゃったけど。

バラで言うと、萩尾望都・大島弓子・岡野文子・近藤ようこ・・・

私の血肉となった漫画たち(本当?)、もうすぐさようなら。
え〜ん、捨てたくない〜。
ま、しょうがないです。

なぜって、母絡みでちょこちょこ実家に行っていて、
私は心から「うんざり!」しているのです。

実家に溜まりに溜まった、こっちには興味の無い古本・・。
一回見返したら気の済んでしまいそうな、家族のアルバム。

それをみな、遠からず、みんな処分という、
気の重い作業が待っているのを思い出しました。
親も、旅立つ時は跡を濁さず、ですね。

明日は、我ながら物持ちの良いのにびっくりした、日本語教材についてです。

一部公開。ネットの時代、タブレットの時代前は、
こ〜んなのをちまちま描いて、レッスンに持って行ったんですね。
そのお話はまた明日。
手だけ出演を快諾してくださったSさんでした。



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