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エッセイ400.その言葉は ちょっと勘弁して(2)

新聞を頑張って読んでいますが、この10年ぐらい、
あっ、やめて
と思うことがあります。

以下は、実際に新聞で読んだものです。


【頬張ってはいけない例】

「被災者は熱いうどんを 頬張っていた」

うどんは、頬張りません。
「頬張る」は、口の中に、すぐには食べ終えられない量の食べ物を詰め込むことでしょう。
液状・ゲル状ではない食べ物が、内側から、頬を押して、外から見るとほっぺたが丸くなったりすることでしょう。
おにぎり・お饅頭・メロンパンは、OK牧場です。
あんぐりお口を開けて、パクッと大きく噛み取って、噛み始めます。
嬉しげな感じがします。

お母さんが、
「ほらほら、落ち着いて、そんなに頬張らないの」、
お父さんが、
「そうだぞ、カレーパンは逃げて行かないんだから」
と、笑いながらたしなめるかもしれません。

でも、熱いうどんを頬張ると、火傷します。
熱いうどんは頬張らないようにしましょう!
記者さんご自身も、気をつけてくださいね。

【声と肩のどっちを落とす?問題】

「こんなことになるとは・・」と、被害者の父親は声を落とした。

・・・声を落とすのは、自分の言うことを人に聞かれたくないため。
この場合は、「肩を落とした」のほうが良いでしょう。
コマケーナ。


【ふるまう  の過剰使用】

「会場では『ぴよりん』が振る舞われた」
鳴呼、名古屋に11年半も住みながら、
いつでも食べられると思って一回も食べなかったぴよりん。
今度こそと思って名駅まで買いに行くと、全回売り切れだったぴよりん。
貴重すぎるので、ぴよりんは普通、ふるまわないでしょう。

ぴよりんに限らず、新聞で出くわす「振る舞う」の、場と飲食物が、ちょっと違う感じのすることが最近多いです。

「行動」という意味を表す「ふるまい」(無謀な振る舞い、など)ではなく、
「飲食物を振る舞う」といえば、そのイベントの主催者が気前を見せて、無料で参加者にご馳走することです。
大量に作って、少しずつ配る感じです。
例えば、寿司桶ごとのお寿司とか、立派なお弁当は、振る舞わないと思います。

「振る舞い酒」という言葉がありますし、
また、「椀飯振る舞い」(おうばんぶるまい)と言う言葉があります。
わたくし不明にして、これを、「大判ぶるまい」(大量だから)
と、ずっと思っていました。

で、私だけの感覚かもしれないのですが、ふるまう、には、祝祭的な空気を感じます。神社やお寺で、よくあるような気もします。
豚汁でもお汁粉でもカレーでも、大量に作るけれども、
受け取る側は、それで一食が済むほど、がっつりは食べない感じです。

祭りの餅つきで、発泡スチロールの小さいお椀で、あんころもち。
大晦日から三が日の間、神社で紙コップで甘酒。

そんな感じがするものですから、最近立て続けに、どんな場であっても、
「何々がふるまわれた」とあるのにぶつかり、
(ふるまいすぎでは・・・)
と感じているのでした。

被災者とか、職を失って困っている本当にお腹の空いている人に飲食物を受け取ってもらう場合は、どうしてもハッピーな感じにしてしまう「振る舞う」は、合っていないと思うのですが、どうでしょうか。

【こぼれ・まみれ・飲める魚】
お寿司屋さん系でよく見ますが、「こぼれなになに」という品があります。
こぼれる・・のは、大抵はバケツにいっぱい水を汲みすぎてこぼれるとか、お銚子からお酒を注ぐ手元が狂ってテーブルにお酒がこぼれるとか、これはネガティブな意味。
けれど、笑みがこぼれる、これはいいもの。
「こぼれる」は、自動詞ですから、「意図せずして、そうなってしまう」ときに使いたい。「笑み」なんかは、思わず顔に自然に浮かんだときは「こぼれた」で良いと思いますし、笑みの元(=ハッピネス)が、たっぷりとあるようにも聞こえ、いい言い方ですよね。

お寿司屋さんで、例えば、「こぼれいくら」と命名したのは、

高い いくらを、こぼれるほどに、
気前よく大きいスプーンで軍艦に載せさせてもらいました!
お喜びください!

という、勢いを盛り込んだ、苦心の表現でしょうけれども、ちっちゃな幸せ(どんなにこぼれても、15粒ぐらい?)・・なのに、一つの単価はやっぱり高い。

お寿司屋さんに限らず、「何々まみれ」というメニューもあります。
「まみれ」については、こちらでイチャモンをつけていますので、お時間のある方はどうぞ。

でも、最近見つけた、より独特な命名は、
「飲めるなになに」(ここにお刺身の名前を入れる)
というものです。

どうしても、
「噛まずに、呑む、呑める」と言う意味?」
と思ってしまいます。

それとも、これさえあれば「お酒が飲める」ということ?
いやいや、居酒屋さんなので、「これと一緒にお酒が飲める」食べ物ばかりなはずである。
なぜわざわざ「飲める魚」を持ってくるのか。

もし、

びっくりするぐらい柔らかくて、噛まないで飲めるほどだ

ということを言っているのなら、ありかもしれませんが、大トロだって、やっぱり5回は噛みたいです。
噛まないで飲んだら、高いのに、もったいないです。

たまに街に出ては、いろいろな言葉に出会えて、嬉しいです。
 ・・・・・細かいですよね?



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