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エッセイその49.小さなタイムカプセル(2)

2020年8月末 
次女のイギリス交換留学が正式に中止となり、
休学していた大学から通知がありました。
この年のはじめごろには、
「9月にはコロナも収束しているだろう」
「いくら何でも、留学できないなんてないだろう」
と思っていたのですが、それはとても甘い予想だったのでした。
次女はこの年の9月の大学の後期から復学しました。
資金稼ぎで1年休学して働いていたので、
結果5年かけて大学を出ることになりました。


9月9日
 このころには映画館は、左右前後を空席にした市松模様の着席方法になっていましたので、2月以来久々に次女と「インセプション」を見に行きました。
連れて回る相手だった子供の運転で名古屋駅まで行く。
ちょっと感無量になりました。
映画はとても面白く、乾いた心に、沁みました。


9月12日
友人の劇団の公演。
これまた、市松模様着席で、置きチケットや現場での物の受け渡しはなし。
公演回数を倍にしても、効率も悪く、とても苦労されたそうです。
お芝居は完成度が高く、楽しかったです。


10月7日
長女が京都から帰ってきて、我が家は全員が9月と10月の生まれですので、
全員の誕生日を一度に祝いました。
子供たちが生まれた時から、一人ずつ別の日に祝っていました。
来年は、娘たち二人がどこに住んでいるかも予測できません。
そろそろそういう時期に来ていたのを、
あまり意識しないで暮らしてきたのに気がつきました。
結婚するまで一緒に暮らすと思っていたわけです。
空の巣症候群から、全然立ち直れていないこの頃でした。プチ鬱です。


10月14〜15日
車で松本市の「まつもと市民芸術劇場」へ、「夏の夜の夢」を観に行きました。
次女と夫が運転を交代しながらで、SAはトイレ休憩のみ。
劇場は市松模様の着座です。
紅葉の松本市内を散歩し、女鳥羽そばでおいしい天ぷらそばを食べたり、松本城を外から見たり。澄んだ空気の良い外を歩く ということも絶えていたので、とてもリフレッシュしました。


10月26日
市松模様着座の映画館に、「鬼滅の刃」を観に。ボロ泣きでした。
この頃、鬼滅は名古屋では土日は普通にあるだけの席を売っていました。
館内での飲食は禁止だそうです。
映画館や新幹線、飛行機などは、特殊な換気法が採用されていて、普通の空間より空気がよく入れ替わっている、ということをどこかで読みました。
でも私は怖がりなので、平日に行きました。
そう言えば、東京の満員電車も、感染がそこで広がらない(らしい)のを不思議に感じ続けていました。
そんなことも、コロナが終息すると、忘れてしまうのでしょうか。

この頃、仲良しのイギリス人生徒から連絡があり、コロナでお父さんが他界されたということでした。


10月21日
三重県の牧場に、夫と乗馬体験に行きました。
去年のクリスマスに次女が贈ってくれた「体験ギフト」なのですが、コロナのために控えていて、期限も半年延長してもらっていました。
この季節に外でできることを選び、馬に乗ってきましたが、優しいおじいさん馬で、とても楽しかったです。
激しく入会を勧められましたが、一般人民に手の届く会費ではなく、憧れのままで帰ってきました。


12月13日〜14日 
長女の勤めるエースホテル京都へ、家族が初めて泊まりに行きました。
長くいられるプランだったので、殆どの時間をホテル内で過ごしました。
翌日は休みを取った長女が合流し、下鴨神社を散策してから帰ってきました。
人影もまばらでした。


2020年年末〜2021年 お正月
年末はここ数年、娘たちの友達が出たり入ったり、留学生が泊まっていたりしまして、せわしないながら、賑やかでした。10人規模で年越し蕎麦を食べ、夜更かしして任天堂スイッチをしたり。
そういう時代は終わりました。今年は次女の友達が「嵐」のファイナルコンサートを見に来たぐらいで、静かな時間でした。

1月6日には、合衆国州議会議事堂が、トランプ氏の支持者の乱入を許し、死者5人の出る歴史に残る襲撃事件となりました。

2021年のお正月
ホテルのフロント勤務の長女は、人が休むときは働いています。
初めての一人のお正月ですが、仲間がたくさんいるようで寂しくないみたいです。
私の仕事始めは1月3日でした。

1月21日
大切な友人が旅立ちました。
コロナで面会を厳しく制限され、しかし本人はコロナ狂詩曲に翻弄されない1年を過ごした末のことでした。
ゆっくり休んで欲しいと思います。

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振り返ってみての感想です。

2020年12月から、オンラインの日本語の生徒が急に増えました。
日本に勉強に来る予定が延び延びである人とか、勉強する時間ができたので、
本腰を入れて日本語能力検定試験を受けようという人たちでした。
オンラインを使いこなす人が増えていく感触がします。
会えないので仕方なくという代替策ではなく、
コミュニケーションの一つの部門になっていくのでしょうか。

私は土日にも仕事をするようになり、また、
オンライン同僚である若い日本語教師の友人と、
学習アプリの勉強会や、息抜きにおしゃべりもする習慣ができ、
これはコロナの毎日の中の、良い方の出来事の一つです。

去年の早い頃、専門家たちが
「いつもの暮らしに戻れるまでに、約2年かかるかもしれないと言っている」
というのを読み、まさかそれは・・と思っていました。
まさかが本当になりつつあるようで、怖いです。
が、溜まってきたストレスと疲れで、投げやりになる方が怖いと思います。
無症状の人が8割であるところから、
自分は大丈夫という「正常化のバイアス」も見受けられます。
ワクチンを受けた人、抗体のうまくできた人が増え、
研究も進み、これ以上のことになりませんように。

予定表の中の走り書きを見て、忘れていることが多いのに驚きました。
普通の暮らしを取り戻すために、頑張る毎日はしばらく続くでしょう。
来年の今頃に振り返ったとき、後悔しないように、丁寧に過ごしていきたいと思います。


私事の羅列を、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。