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エッセイ229.おうちでロスト・イン・トランスレーション(14)評価って

昨日の続きです。

今日は、 evaluation  と 評価  のずれについてです。

英語人の夫の中には、会社用語の「評価=evaluation」には、
年に一度、上司と面談して、自分のこの年に成し遂げられたことを披瀝ひれきし、評価されるっていうあれ、会社の文脈だと、それしかないのですって。

なので、

「頑張った社員は評価されるが、そうでない社員は評価されない」

という一文を、米国の本社向けに翻訳した英文を見て、
頭を抱えていたのであった。

「妻よ、ここに、
《頑張った人はevaluateされるけど、そうでなかった人は、 evaluateされない》ってあるんだけど、
そんなこと、ありえますか?」

と訊いてきます。

んん?
別にあるんじゃないの?

と、夫は目を剥いて、

「頑張らなかったからと言って、
evaluateのステージに乗せてもらえないってことですか?
もう、まる無視?
そんな非道なことがあり得るのでしょうか!」

と、鼻息を荒くしています。

私はちょっと慌てました。

ーーいやいや、どんな人でも、evaluate、あの、年1の査定・・査定でいいのかな、ボーナス査定、それは受けるでしょうよ。
頑張ろうと頑張るまいと。
だってそうやって評価して、昇給や出世とか、決まるんでしょ?
受けさせねぇなんてことはおめえ、さすがにあるまいて!
(あ、「ごくせん」を読みすぎて言葉が変になっています)

「でも、そう書いてありますが。evaluateされない、って」

ーーどれどれ・・あっ、ほんとだ。これは非常にまずいですぞ。
そんな、頑張ったかどうかなんて、茫漠としたものを根拠に、
査定すらしない、って言ってますからこの翻訳は。

「じゃ、どう変えればいいの?」

ーーええ〜。う〜む。
単に「評価する」というと、日本語では、ポジティブな意味です。
《あなたが素晴らしいですというジャッジを、私はしています》
ということです。

だから例えば、「新しい部署でも彼は評価されている」と言ったとするよね。

これは、

《この人がいい社員であると、新しい部署に行ったあとでも、思われている》

ということです。
別にここでいきなり、ボーナス査定されているわけじゃないの。
ドュユ・アンダスタン?

あとそうだなぁ、

「いろいろ問題はあったが、彼のプロジェクトはそれなりに評価された」

と言えば、

「完璧ではなかったが、プロジェクトが一定水準に達したと認められた」

ということで、決して悪いことではないですね。

ーーEvaluateにはそんな意味はないですが。
じゃ、妻はこの日本語を英語で言うとどう訳すの?


「えっ、う〜〜〜む。
そうだね、え〜・・・・。
こうかな?

Those who tried their best would be recognized and accepted with high hope, those who did not would not be..かなぁ?

(直訳調で:己のベストを尽くした社員らは、会社に認識されまた高いポジティブな期待と共に受け入れられるであろうが、そうでない社員らはそうでない・・って、難しい〜・・超まずい訳になりました!)

夫曰く、

「これってまたあの、《一言で言えないんでいろいろ言っています》
という、君の翻訳の特徴が出ているよね!」

と、指摘されてしまいました。

夫よ、ほっといて?

私は職業病として、こんな会話が大好きだし、ま、いいんじゃないので流せないため、話が長くなることが多いです。
この時も、んまあ朝の忙しい時だと言うのに、シャワーを浴びるという夫についてお風呂場に行って話し続け、次にはトイレのドアの前に立って話し続けたのでした。

夫って、めんどくさいと思っていたけれど、めんどくさいのはお互い様でした。

人間辛抱だよ夫。
来世でも、またよかったら・・・あ、それはいいのか。
いつもお疲れ様です、という話でした。

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