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日本語教師日記67.迷わず解きたい誤解


山登りが好きだと言い出した生徒に、どんなところに行ったかと訊きましたら、
八方尾根・西穂高の独標・乗鞍・上高地・尾瀬・・と、
懐かしくて涙が滲みそうな名前がたくさん出てきました。

山好きの父に連れられて、小さな頃は秩父、丹沢・・
少し強くなって、日本アルプスの山々に毎夏何度も行っていたのでした。

私:日本の医学と山の用語は、ドイツ語が多いです。
明治維新以降、ドイツやオーストリアから先生を招いて学んだからだそうです。

生徒:なるほど〜。医学では?

私:あまり知りませんが、カルテは英語のカードですね。
患者さんを、クランケというそうです。ドイツ語ですって。



日本にスキーを初めて教えてくれた、レルヒさんは、ゆるキャラとなって帰ってきましたが、このキャラに限り、本人の方が素敵だと思います。


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山の話のできる嬉しさに、つい脱線しました。

私:日本人と山の話すると、ときどき通じなくないですか?

生徒:あっ、ときどき何を言っているかわかりません。

私:ドイツ語が入っているからかなと思います。
ザイルはね、seil、ロープ。
ピッケルは、pickel、つるはしのことですね。
シュラフって言いませんか?

生徒:言います言います。なんですか。

私:ドイツ語のShlafen、「寝る」から、寝袋のことです。
       あと、Oさんは、ロッククライミングもしますか?

生徒:しますします。

私:Haken 、ハーケンです。こう、直角に曲がっています。
こうやって岩の割れ目に打ち込むでしょ?

生徒:へえ〜、ハーケンねぇ!

私:よかったですねー、次から全部わかりますね。



ところで。

私:Oさん、日本に来て、お寺で、ナチスのマーク見て驚いたでしょ。

生徒:はい! ドイツと同盟国だったからだと思ってショックを受けました。



違います。
みなさんも、ここは一つ、誤解を解いてあげましょう。

一人の人が、

「日本はまだハーケンクロイツを飾っているんだよ!」
と言うのと、
「あれはハーケンクロイツじゃないんだよ!」
と言うのとでは、とても違います。

あれは、日本語では「まんじ」と呼ばれます。
ちゃんと漢字変換で出てきますよ。

ね?

これは、左卍であって、世界の古代の宗教で、神聖シンボルとして多用されてきたもので、ナチスドイツが採用したのは、右卍で、傾いていますね。

ちょこっとこちらを覗いてみてください。
画像が載ってしまったのが嫌なんですけど・・。


日本に来る人には、全員、「これとこれとは、違います!」というチラシを配りたいぐらいです。

いやはや・・。


ご参考までに山の道具です。
左上から時計回りに、シュラフ〜ザイル〜ハーケン(打ち込まれている方)
〜ピッケルです。

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おまけ:

山の言葉にはこんなにドイツ語があります。
答えを出してしまっているので、クイズの楽しみがなくてごめんなさい。

私は7つだけ知っていました。


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大学の山岳部は、ワンダーフォーゲルと言いました。


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まさに morgen モルゲン+ rot  ロート、redです。

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父は、コッヘルって言っていました。

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これは初耳でした。

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とうとう一度も見ることはできませんでした。


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これも初耳です。


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聞いたことなかったです。


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アイゼンとかビバーグとかは、一時期山岳小説が好きだったので、
いつのまにか覚えた言葉です。
山岳特に冬山小説って、読んでるだけで指が凍傷で取れそうになります。


ブロッケン現象はこちら:



トップ写真は、黒4ダムから見て描いた剱岳です。





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