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日本語教師日記78.日本のあいづち




外国の人と話していて気がつくことの一つに、
「あまり反応がないので、聞いてるのかなと心配になる」
ということがあるかもしれません。
私もかつてそうでしたし、今でもときどきそうなります。

その理由はたぶん、彼らが、日本人同士のように、
頻繁に相槌あいづちを打たないからではないでしょうか。

ちなみに「相槌」というのは、二人の鍛冶屋かじやさんが、一人がトンテンと槌で打てば、もう一人がカンカン、と間に、すかさず打つというところから、会話の合間に、「聞いていますよ」というサインのため、頻繁に発語することだそうです。

外国の方とお話ししていて、

「なにも言わないなぁ、聞いているのかなあ。怒ってる?」

と思ったりしても、よく見ると、その人はこっちの話を聞いていないわけではなく、逆にじっとよく聞いてくれていたりします。
それがまた、相槌が習慣になっている私たちに、
少し居心地の悪さを感じさせることがあるかもしれません。

外国の人は、私たちほどには、相槌を打ってはくれないため
ふと、聞こえていないのかなとか、
つまらないのかなと、ひるんでしまうことが、私も以前はありました。


英語を話す人でも相槌は打っている。よく、

Ahーha..(アハーン)

Uh-hum...(ンーフーン)

と言っていますよ。

と思った方もいらっしゃるでしょう。
でも相対的に言って、やはり日本人は相槌が多いと感じるのです。


彼らは概して、日本人のように 相手の言葉に合わせて、

うん、うん、うん。
ほう、ほう、ほう。
へえ〜・ふう〜ん・・・

と言う感じでたくさん相槌を打ってくれるということがありません。

そちらから私たちを見ると、
過剰なまでに相槌を打っているように感じられるそうで、
その意味や理由を質問されることがあります。



相槌の多さは、相手への気遣いでもあり、
また、私たちが言い出したことを最後まで言い切らない傾向がある、
ということにも関係があるかもしれません。

この、「日本人が一文を最後まで終わらせないことがある」
ですが、面白いです。

私:相槌についてですが、日本人は相手に対して、
「ちゃんと聞いていますよ」ということを、
見せずにはいられない気持ちがあると思います。
私も、声は出さないけれど、あなたが何か言っているときは、
うんうんうんうん、とうなづいていると思います。

生徒:あ、本当ですね。

私:また、一つの文を終わらせないのも、日本人のよくやることですね。
日本人は、最初から最後まで言い切ってしまうことに抵抗があるようです。
そうするのが、押し付けがましいように感じるのかもしれません。
だから半分ぐらいで一旦止めて、聞き手の反応を待つのです。

例えば、

A:明日のことだけど・・
B:あ、あれね? あれはごめんちょっと・・
A:あ、無理だった?   そっか、いいよいいよ。
B:申し訳ない!
A:いいって。
B:また言って?
A:うん、そのときはまたお願いするかも。

これが日本式コミュニケーションのように思いませんか?
壊れやすいボールをやり取りしてる感じでしょうか。

遠回りに感じられるかと思いますが、例えば、

A:昨日お願いしていた明日のお手伝いだけど、やってくれますか?
B:すみませんが、できません。
A:わかりました。

のように話す人は少ないし、このような話し方をすると
冷たいとか、あまりにも合理的に聞こえるかもしれません。

生徒:言われてみればその通りですね。
私はつい、長く喋ってしまいます。どうすればいいでしょう。

私:コツのようなものですが、一文を短くして、
相手が相槌を打つ時間を作るのが近道だと思います。

生徒:日本語の相槌にはどんなものがありますか?

私:「は行」をよく使っているように思います。

生徒:「は行」ですか?  どういうことですか?

私:まず、聞いていますよ言う気持ちで、「はいはい」。
「はあはあ」。電話でも対面でもよく言います。

「ひ」は、「ひ〜!」というふうに、
びっくりしたときに自然に出るもので、
相手の話したことに「ひどい!」「こわい!」「まさか!」
みたいな気持ちがこもると思います。
自分から使わないまでも、たまに聞くでしょうね。

納得したり、なるほどと言いたいなら、「ふう〜ん」「ふんふん」。
でも、「ふう〜ん」と暗いトーンで言う場合は、
「必ずしも納得していませんが」「疑わしい」
というニュアンスを表現することができます。

「へぇ・・」もよく聞くと思いますが、あまり賛成できないとか、
疑っている気持ちを込めることもできますので、取り扱い注意でしょう。

「ほう〜」や「ほうほう」は、「なるほど、そうなんですね」という感じです。

相槌は、打ちすぎるとうるさいときもありますので、
まずは、日本人と話していて、どんなふうに相手が言ってくるか、
聞きながら観察してみてください。


そんなふうにお話ししています。

ちなみに、外国人である夫は、日本に来たばかりのころ、
あまりにも周りの日本の人が、うんうん、うんうん、というので、
なんか自分がいけないことを言ってしまっているのかな、
と心配になったそうです。

それと、特に電話では顔が見えませんので、黙って一生懸命聞いていると、
「聞いてる?」
と言われることがよくあったそうです。

今、彼が電話で話しているのを聞いていると、
私と同じぐらい、は行で相槌を打ちまくっています。

なんでも、慣れだということですね。



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