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日本語教師日記その154.母語に引っ張られる学習者(3)「ゲームを遊ぶ」とは これ如何に・・

初級のうちに誰でも言い、直されるとすぐ直ることのひとつに、

ゲームを遊ぶ

というのがあります。

日本語の「遊ぶ」を、playですと教えると当然、

Play  soccer   サッカーを遊ぶ

と、生徒は言います。さらに、

play the  piano  ピアノを遊ぶ

と、言ってしまっても無理はありません。

この場合は一気に教えます。

「日本語の『遊びます』は、純粋に、子供が遊ぶというときの playと思ってください。

みんな外で遊びなさい。
遊ぶ時間もない。
さっきまでここで遊んでいたのに。

考えてみたら、目的格がないですね。
一つの行為、遊ぶ、として成立している言葉です。
「なになにを遊ぶ」は、ないです。

使い方を見てみましょうか。

誰々と 遊ぶ
・・いとこたちと 遊んだ。

なになに・で・遊ぶ。
これは場所と、方法です。
場所:リビングで遊ぶ
方法:一人でプレステで遊ぶ

その他に、子供の遊びとは別で、こういう言い方もあります。

遊んで暮らす。
私とのことは遊びだったのね?
彼はかなりの遊び人だよ。

というわけで、「遊ぶ」は、
英語のように、play the game と言いたくても言えません。

ではサッカーとくれば?
いくつか見ていきましょう。

サッカーを「する」
チェスを「する」
試合を「する」

そう、playなになには、なになに・を・する、と言うのです。

ついでに言いますと、日本語になった外国語には、
「する」を使うのだと覚えておきましょう。

プレゼンテーションをする
ミーティングをする
コピーをする
パーティをする
マッサージをする
ガーデニングをする

英語人であるあなたがたは、たまにはこの辺で、
一休みできてよかったですね。

と。
言った舌の根も乾かぬうちに、本当にごめんねなのですが、
楽器を奏でるほうの playは、「する」ではないのです。

ストリング、弦のある楽器は、「弾く」です。
バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス、ハープ、
アイリッシュハープ、三線、三味線、胡弓、あとは何かな?
そう、本体に隠れてるけど、ピアノ、ハープシコード、
クラヴサンもチェンバロも、「弾く」。
そして、弦はないのに、一緒くたにされて、オルガン。
オルガンは、吹奏楽器のはずなんですけどね。
この辺は全部、「弾く」です。

吹奏楽で使う楽器は、
英語人であるみなさんも、 「吹く=blow」
・・と言いますよね。
吹奏楽器はみなさん、blowing instrumentsと言うでしょう?
日本語でも、「吹く」です。
トランペットもチューバもコルネットもホルンも「吹く」です。
「拭く」と混同しませんように。

パーカッション、吹奏楽部の生徒は日本では「パーカス」と呼びますが、
先生、長い間、吹奏楽部の母として、すんごく苦労したんですけど、
それは別にいいんですけれど、
パーカスはね、「打つ」です。
「打楽器」ですからね。
叩く、も言うかな。

でも英語人のみなさんは、楽器だとまず、 
Play the…. なんとか
ですよね。
楽していますね。
日本語の方が、律儀に言い分けていますよね。

もう大混乱ですか?
ごめんね!
一応言っただけなので、深刻に受け止めないでくださいね」

・・・と言って、この play  問題はここで終わりにしています。

なんか面白がっている私、ひどいですよね。


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