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エッセイその113.ものを売る(下)きもの編


きものをたまに着るようになってから、着てもらえないかしらといただくことがあります。私の友人の世代のお祖母様であることがほとんどです。
私はすごく小さいので着られるかと思うのですが、私より小さい人はいるもので、おはしょりが取れませんし、袖も身幅も全て足りません。とはいえ、いただいたものを処分ということはできませんで、着ないままに十年二十年しまってありました。

それを思い切って、着られる人の手にお渡ししようというわけで、去年初めて着物を売ることをやってみました。

二回やってみまして、難しいものだなぁと思いました。

私の住む名古屋は、元質屋さんで有名な「コメ兵」というリサイクルショップがありますが、持ち込みであること・値段がつかないとお持ち帰りであること・ウール・木綿は引き取らないこと(虫害の可能性があるため)ということで、ちょっと敷居が高かったです。また、ウール・木綿・ポリエステルなどの化繊を買い取らないのは割と普通のようです。

遠くまで来てもらうのは申し訳ないと何故か思い、地元の買取屋さんへまず連絡しました。玄関に座り、着物の見方は、めくって次、めくって次、めくって次・・という感じでした。最初のこととて、裏にさえシミのないようなもの、しつけのかかったもの、紬と正絹だけでしたが、すみません、一つもお値段はつきませんということでした。ちゃんと見ました?
そして、「貴金属とか、宝石とか、ありませんかね」とおっしゃいます。ありませんと言いますと、「プラチナは? 金は? なんでもいいんですけど」とさらに言います。「ないですし、あっても売らないと思います」と言っている私の肩越しに、なんとなく居間への入り口ドアをちらちらと見ています。実家に二回、泥棒に入られた経験のある私は、なんとなく落ち着かなくなりました。知らない人は家にあげない方がいいなぁ〜と思いました。
「どんなに古くてもいいんです、見るだけ見せてもらえませんか」
と何度目かに言われた時、祖母の形見で、翡翠と水晶の帯留めがあるのを思い出し、ゴソゴソ取り出してお見せしましたが、「あ、いいですいいです」と言って帰っていかれました。

もう一社は、広告を大々的に打っている有名な会社です。
こちらは、正絹の着物が五着・・きものの助数詞はなんだろう、五枚か、五枚売れまして、それでも、一点100円というようなことでした。
こちらのときは、冷蔵庫にずっと仕舞ってあった、小さいルビーと小さいダイヤの指輪が、二点で8000円で売れました。これはつきあっていた人たちからもらったもので、捨てるに捨てられずにいましたので、手放しました。ちゃんとお祓いしてあるので大丈夫です!(お祓いのできる友達にやってもらいました)


着物って、売れないものみたいですね。
しかし、リサイクル着物ショップに行くと、着用可? と思うもの、端切れとして、手芸などに使ってくださいというものも多く見かけます。これは、「値はつかないけど、引き取りましょうか」というのがよくありますが、そんなふうにして表舞台に出ることができた着物でしょうか。

逆に、着物は驚くような良い話もあります。
私の友達で、和裁士をされている人や、着物を見る目のある人は、ものすごく良い値で、素敵な着物を見つけて買ってもいます。
和裁士の方と、鳴海絞り祭りに行った時、目的の浴衣地は買わず、外のハンガーにぶら下がっていた、状態のいい袷を買うことができました。
友人がその場で私の体型を目測し、着物の状態を全体的にざざっと見て、

tamadocaさん、買って下さい!

と背中を押してくれたものです。
黒地に霰(あられ)模様で、自分も娘も何回も着ました。
500円でした。

その後、
「着物サイズのダンボールを送ってくれて、送料は着払い」
という買取会社を見つけ、申し訳なくも死蔵していた着物、特にコートや羽織、ショールなどをお嫁に出しました。

これからは手元に残ったものを大事に着ていきたいなと思いました。

それにしても、買うのは衝動でいけますが、その結果溜まったものを売るのは、
素人ではなかなか難しいことがよく分かりました。



トップ写真は、とても気にいっているものです。友達のおばあ様のものでした。

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