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日本語教師日記152.母語に引っ張られる学習者(1)「みる」

私が日本語を教える場合、媒介語が英語ですので、以下は、
【英語話者とのレッスンで気づくこと、気をつけたいこと】
というお話です。

ちなみに、英語話者には、当然ですが、
母語(第一言語)が英語である人と、あとから身につけた人とがいます。

フィリピン、香港、台湾、中東、インド、ヨーロッパの皆さんは、
英語が普通に話せる人がほとんどですが、そのレベルは様々です。

ネイティブ英語話者のつもりでこちらが話してしまうと、
行き詰まることもあります。
(「英語が母語でない教師と生徒」という話題で、
こちらに書かせていただきました)


なので、英語を媒介にした間接法にも要注意エリアが大きく、
伝わっているつもりで進めていってはいけない、という部分があります。


さて今日の話題は、教えていると、
「母語に引っ張られて間違える」
です。


一つの例でお話ししますね。

【日本語の 「みる」(あえてひらがなで)】

「みる」というと、日本語では目を使って見ることですが、
英語では “look” “watch” が目を使う方、
“see” には 「会う」の意味もありますね。

ですから、初心者のうちは母語に引っ張られて、

「明日友だちに見ます」

と言う人はとても多いです。

また、英語で
I see(なるほど)、 let’s see (そうだねぇ)
などと言いますが、日本語の「みる」には、
了解、理解した、というような意味はありません。

どうしてもそこは混乱しますから、対応表を作ることがあります。

日本語で「みる」と言えば、聞こえる音は同じですが、
上級者で漢字の好きな人には、もう少し教えるときがあります。

・「見る」
普通に、見ようという意思があって見ること。
意思がないと、「目に入る」「目にする」「見える」がありますよね。

・「観る」
パフォーマンスなどを観ることで、
自分にとって意味のあるものを、見ようとすること。
お芝居やスポーツなど。
ですから、「観光」と言う言葉もできました。
観察とか、静観する、観戦・・

・「診る」
お医者さんが患者を診察するときに使います。
英語でよく、「お医者さんに 会う(see)」と言いますが、
日本語でそう言うと、「会う」という意味にしかなりません。
「診察」「診断」「診療」・・医学の言葉ですね。

と、こんなことを言うと、皆さん頭を抱えます。

でも、私はいつも逃げ道(escaping laddar 避難梯子と言います)
を用意してあります。

「・・ということは、あるのですが、
あなたが話している時に、別に漫画の吹き出しが、
あなたの頭の上に出てくるわけではないので、
そうなんだなとだけ、思っていてください」

こう言うと皆さん、「ほっとしました」と言います。

それに続けて、こんな話をすることもあります。

「私は学校の授業で、
『watch は 動いているものを見ること』
と教わりました」

「そうですね」

「だから、ゲーム・オブ・スローンの
やたら寒いところを警護してる人たちが、Nights watchなの?」

「そうですね〜」

「なんか、Black Watchという言葉を聞いたことがあるんだけど」

「実際にアイルランドだったかどこかで、そういう警備団がありました」

「そうなのね? ありがとう」

「いえいえ」

丸暗記じゃなくてこういう会話があって覚えると、
年取ってる私の脳も、そうそう忘れないです。

得していますね〜!

もう少し続きますね。

サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。