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日本語教師日記40.法則がわかれば怖くない② 「は」と「が」


日本語教師なら誰でも一度は耳にしたことがある書。

「象は鼻が長い」

なぜ、「象の鼻・は・長い」じゃなくて、
「象は」で、「鼻が」で、「長い」なの?

という、未だ解決されていない助詞の問題です。

「タラバガニ問題」と並び、新米教師を悩ませるものです。
(たらば蟹、と言いますが、【「たら」と「ば」どう違うの問題】のことです)


さて、助詞の「は」と「が」です。

初心者から教科書に沿って学んでいく学習者なら、
そのときどきに合った、呑み込みやすい「は」と「が」が紹介されます。

例えば、

好き・嫌い・上手・下手・得意・苦手・わかる など、
「が」と共に使うと自然である動詞があります。
(例外的な用法はまだ教えない)

とか、

可能の形では、「は」ではなくて「が」を使いましょう。
 ❌彼は日本語・を・できる。
 ⭕️私は日本語・が・できる。

とか、

自動詞には「が」、他動詞には「を」を使いましょう。

私は  ドア・を・開けた。
風で・ ドア・が・開いた。

まだまだありますが、とりあえずこんな感じです。

でも、これで済むはずは〜・・・・😭😭😭、当然ながら、ないのでした。


初心者でなくなったころから、

彼・は・明日行きます。

と、
彼・が・明日行きます。

は、どう違いますか?

というような簡単な質問から始まって、
すごく答えにくい「どう違いますか」ラッシュが必ず訪れます。

日本語教師に逃げ場はありません。


私は、異論はいろいろございましょうが、
このように教えることにしています。

下のぞんざいな絵は、最近私が
日本語生徒業界の輝けるスター、在外日本企業に勤める生徒Sさんに向けて、
Apple Pencilを振るって書いたガイドラインです。


一つ目はまず、主語のあとに「は」が来る、初心者のときから習い続けた文から。

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慌てて書いたためか、ちょっと間違っていて恥ずかしいですが、
左側、「は」の前は、とにかく主語は一つ。
右側、「は」の後は、主語についてのことをいろいろ言うんですよ、

ということを言おうとして書いた物です。

つまり、「は」で始まる文、これは、【最初の主部「についての」文】です。

誰々「は」、何々「は」 と、「は」で 始めたら、
それがなんであるか、どうであるか、
それはなんでもいいんですが、そのことついて、いろいろ言う文なのです。

彼は、といえば、そのあとは彼に関係したことの、何を言っても良いです。

彼は日本人です。
  でも日本語が話せません。
  日系ブラジル人ですから。

二番目と三番目の文は、日本語の宿命というか、癖によって、
「彼は」を省かれていますが、やっぱり、「彼は」なになにである、と言っています。

全て、彼についての述部となっていますね。

「は」の前は一人の人、一つのこと、一つの物であり、
「は」の後は、何が来てもよろしい。


つまり、「は」の文は、「は」以下が「熊手」の形です。


当然、

私「は」今行きますが、あなた「は」? です。

今行きますが、あなた? と言う人はいません。

この

彼は日本人です。

と言う文には、それに呼応した質問文もたくさん隠れています。

彼は何歳ですか?
彼はなに人(なにじん)ですか?
彼は先生ですか?

「は」の前にある主部については、何を言っても、訊いてもいいのです。

ここで、
  彼が 何歳ですか?
  彼が なにじんですか?
  彼が 先生ですか?

と、いきなり聞く人はいません。

「彼が先生ですか?」文は 十分あり得ますが、それは、
「誰・が」先生なんですか、彼が? 彼女が? 
と、誰?を 知りたい、言いたいときに 使われます。

ここまで説明したら、次の絵が出せます。


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今度は、「が」が主部の後に来る場合です。

こちらでは、「が」の前野言葉が変更可能で、左が「熊手型」になります。
「が」助詞が最初に来る文は、

誰が ・ 何が を 問うている・答えている文と言えましょう。

先生:明日、ボラで草むしりいくぞ! 誰が先生と一緒に来る?
A:僕がいきます。
先生:いいぞ、A。ほかには? ほかには誰が行けそうかな?

すでにたくさん日本語を話している生徒は、

誰は と言う言葉のないことは経験上わかっています。

他に 主語・が の文はどんなものがあるでしょう。

先生:明日のキャンプに、何がいると思う?
生徒A:キャンプのしおり・が・いります。
先生:そうだな。他には何がいる?
生徒B:おやつがいります。
先生:よし。だけど、もっと大事なものがいるだろう? C?
生徒C:水と地図がいります。

ここで、【ハイライトの「は」】という、非常によく聞く・話す「は」がありますが、詰め込み過ぎでもわからなくなるので、この辺にしておきます。

前述のスターSくんは、1時間のレッスンのあとテストをしましたら、
見事に、大多数正解です。

こっそりお見せしますね。青字がS君、ぶっとい⭕️と❌は私が情け無用で書き込んでいます。

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ちなみに、勘と耳のいいSさんは、例の難題、「〜んです」を見事に使いこなしています。

頑張る生徒は、応援しないわけにいきません。

サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。