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エッセイ239.おうちでロスト・イン・トランスレーション(17)グルメ番組

我が家ではご飯を食べるときに、食べ物についてのテレビ番組を見るのがいつものことです。Netflixの食べ物の番組には、字幕がついているものが結構あるということもありますし、好き勝手なことを喋りながら気楽に見るのが好きだからです。


「腹ペコフィルのグルメ旅」というのがあり、これはやたら機嫌のいい、誰とでも友達になれるフィルという痩せたおじさんが、世界中を駆け回って食べまくるものです。痩せの大食いで、見ているだけでおなかがいっぱいになります。私はこのフィルさんの性格が好きで、「こんなにいい性格だったら、生きていくのが楽しいだろうなぁ」と思いながら見ています。

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あとはそうだな、全米バーベキュー大会みたいなものとか、アメリカの名物のBBQ屋さんについての番組、好きです。

どう見ても本物に見えるように、靴とか生野菜とか魚とかを、ケーキで作って、それを審査員が見破るものとか。いろいろとまあ、くだら・・じゃなくて、面白いものが次々に出てきます。

日本のもので言うと、好きなのは「孤独のグルメ」。気持ちのいい食べっぷりですね。

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「昨日何食べた?」は、昔の地元の新小岩ルミエール商店街が出てくるので大ファンです。特に、主人公のシロさんの独り言が面白くて大笑いしながら見ています。原作のコミックも、出ているのはみんな読みました。

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また、「絶メシroad」。これも面白いです。奥さんと子供さんが週末に推し活動で家を留守にするその間だけ、夜遅く出かけて泊まりは自家用車で。その翌朝から近間の美味しそうなお店(実在)で食べて、その日のうちに帰宅するという髭のサラリーマンのドラマです。近いのがいいし、最後にその店の、本人の皆さんも出てきて、「ああ、いつまでもこの店が続いてほしい」と、祈る気になります。
「しかし、週末を奥様や子供さんと過ごさなくていいのだろうか」と、外人である夫は、そこが気になってしまうようです。

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似たコンセプトで、どちらが先に製作されたかはわかりませんが、「居酒屋新幹線」も面白いです。「仕事が全国を日帰りで監査して回るという人が、仕事を終えると地元の店と酒屋に行って美味しいものを仕入れて、帰りの新幹線でゆっくり食べる」というもの。でも、この方は、通路側に座って、マイ・食器セットを出して、マイ・居酒屋を広げて召し上がります。平日なのだから空いているだろうに、なぜネット予約で、窓際を取らないのか。もし、窓際で、しかもドアを入ってすぐの、2席しかないところに取れたなら、ゆっくり食べられます。通路側だと、奥の人が用があって通路に出ようとすると、テーブルに思いっきり広げてしまった食べ物と飲み物はどうすればいいのか。気になります。それと、おつまみ類が「すごくしょっぱそうに見える」ことが多いのが、辛い。紫蘇の葉でお味噌を包む、みたいな物は、たとえ画面越しでもしょっぱそうすぎて、私たちには辛いのでした。でも見ています。

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「ゲキカラドウ」は、見ていると汗が出てきますし、必ず辛いものを食べたくなるので困りました。辛くて美味しいものは、世の中に本当にいろいろあることを学びました。

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食べ物についてのドラマは、「ゲキカラドウ」や「深夜食堂」「シェフは名探偵」のように、群像劇のタイプのものと、一人で食べ続けるものとに分かれると思います。
一人で行動する人は、いろいろなことを独り言で言います。私もたいてい日中は一人で、頭の中の独り言もいつものことなので、ドラマ中埜独り言が面白いのは大歓迎です。「孤独のグルメ」の井の頭さんと、「昨日何食べた?」のシロさんの独り言のファンです。

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この前、「珈琲はいかがでしょうか」のエピソード1を見ていて、夫婦で理解が違って長いディベートになりました。何回も、問題シーンを繰り返して見て、自説の正しさを主張して、もう本当にくだらなかったです。

主人公の女子会社員が、曲げわっぱのお弁当箱に自分で詰めたお弁当を持って会社を出て、ビル外のベンチで食べています。(私はロケ地は、新宿のサザンテラスの裏側だと思うのですが、確信はないです)

このシーン。まだお弁当を食べ始めたばかりで、卵焼きを一口食べたぐらいのときに、コーヒーの匂いがしてきます。彼女は「いい匂い・・」と呟いて、すぐに立ち上がってコーヒーの屋台・・屋台とは言わないのか、コーヒーを売っている移動的、車? のところまで歩いて行きます。

私はそこで、

「あ〜、私だったら蓋開けたままのお弁当箱をベンチに置いて行かないなぁ」

と言ったのですが、夫は、

「いや、彼女はバッグにお弁当箱を入れて行ったのです」

と言います。

「うそだねー、今のところ、もう一回見せて」

見てみますと、そのときは彼女の顔しか写っていませんが、「いい匂い〜」と言ってすぐ、ちらっと左下を見る、そしてすぐに立ち上がって歩き出します。

「ほらほら! いい匂い〜、のあとでカメラが切り替わったなら、私も何も思わないけど、夫も見たでしょ? 
ちらっと左下を見てすぐ立ち上がって歩き出したよね?
お弁当置きっぱで行っちゃったじゃない?」

「いやいや君は観察眼がない。よく見てごらんなさい、下を向いた時に、彼女は蓋を閉めたのです。そして、すばやくバッグにお弁当箱を入れたのです」

「それは違うと思うよ。だって、いい匂い〜、から、チラっと左下見る、次の瞬間には立ち上がったでしょう?  しかもほらあのバッグは、布の中型のトートバッグ。おそらくお弁当用のバッグでほら、見て見て!  バッグはベンチにくたっと置いてある。ね? あれにだよ、いくら彼女の行動が早くても、蓋をする、お箸をお箸箱に入れる、トートバッグの取っ手を掴んで開いてお弁当箱を入れる、までのアクションは、あの1秒ではできないと思う」

「いやいや貴君、もう一度見てごらんなさい、ほれこの音!
ね? かちゃ、というこのかすかな音はお弁当箱の蓋を閉めた音です」

え・・どらどら・・あ、ほんとだ、かちゃ、と音がする。

「でもね夫よ、曲げわっぱのお弁当箱はフードマンと違うのだから、ただ蓋をしただけでバッグに入れたら、中身が早晩、バッグの中に出ないかしら」

「あ、そうか。でも僕はむしろ、彼女の膝にあったお弁当風呂敷が、彼女が包まずに立ち上がった際に、膝から落ちただろうことが、気になります」

「いえいえでも、左手に持ったお弁当箱を、まず左側のベンチの上に置く、蓋をピックアップする、左手で蓋をする、さらにくたっと置いてある布バッグを広げて、中身がこぼれる決定の曲げわっぱのお弁当を中に入れて、そのバッグを持って立ち上がる、そんな暇はないではないの。しかもお箸はどうしましたお箸は」

「ちょっと待った君。彼女が左手に持っていたのはお箸ですよ!」

「えっ、うそ、巻き戻して。あ〜、本当だ! 左利きだったのね? 卑怯な!」

もう、何が何だかわかりません。

ご飯を食べるのを中断して、リモコンに飛びついて、何回も見直し、白熱のディベートへ。
こういうのが、日常茶飯事です。
そして英語というのは、白熱すればするほど、なぜかどんどん理屈っぽくなる言語のように思うのですが、そんなことはないのでしょうか。

テーブルに置いていたお箸をそれぞれピックアップし、自分達のくだらない議論に呆れて、笑いながら食事を再開したのでした。

くだらなくてすみません!

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